「目が見えぬとも、目に見えぬとも」犬王 サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)
目が見えぬとも、目に見えぬとも
犬王?室町時代?能楽?琵琶法師?森山未來?
謎が多すぎる作品だが、この謎は深入りしないでおこう。という訳で、ほぼ前情報なしの興味本位で鑑賞。蓋を開けても不思議でいっぱいの映画で、同時にめちゃくちゃスゴい映画だった。これは...スゴい!
なんだこれは!?!?何を見せられてるんだ!?という驚きと謎いっぱいに包まれた冒頭。その未だかつて無い感覚がとても心地よく、不思議と世界に引き込まれていった。映画と言うよりも、アートと言った方が近いだろうか。踊り・森山未來、ということで実写でして欲しかったなという気もしたが、アニメならではを最大限活かしており、にしか出来ないことを思う存分発揮している。特に、目の見えない描写はまさにアートであり、アニメだから表現できるものだと思う。
照明、カメラワーク、演出がかなり狂気的であり、どのシーンも超が付くほど美しい。ここまで室町時代頃の作品で綺麗、美しいと感じたことは初めてだ。この時代的に照明の色とか点灯の仕方とかには少し違和感を感じたものの、ライブのような臨場感をこの時代で体感できるのは衝撃的。単純に映画館で放映する作品としての質が高すぎる。これは映画館で見ないとダメです。必ずです。
そしてなんたって、音楽。
あまりのカッコ良さと迫力に、誇張表現では無く本当に開いた口が塞がらなかった。何故ここまで魅力的なのか。令和時代の今聴いてもそう思うのだ。当時の人達はどう感じたのだろうか。ショック死ならぬ衝撃死をした人もいるのではなかろうか。兎にも角にも、音響・ハーモニー・メロディ・楽器が文句なしのパーフェクトであり、IMAX上映されていないことが悔やまれるほど良かった。心がこの音楽を求めていた。身震いと鳥肌が止まらない。とんでもないぜ、全く。
ダンスもまた恐ろしく最高だし、声優陣も天才的。音楽全面的な映画であるにも関わらず、それ以外の要素も丁寧に作り上げられており、約100分間余すことなく「体験」することが出来ました。室町時代について、音楽について、なにより犬王について何も知らなくともハマる人は大ハマりするであろう作品。か・な・り人を選ぶ、中毒性の高い映画だと思う。少なくとも私はかなりハマってしまいました。
音楽は世を変え、人を変える。計り知れない力を秘めているのが音楽である。そして、人は見かけで判断できない。誰にだって欠陥はある。だが、その欠陥があることで見えてくるものがあるかもしれない。こんなにも深いテーマなのだ。ね、すごいでしょ。
本当に最高の映画体験をありがとう。
世界に誇れる日本の文化。もっと評価され、外国でも多くの人に見ていただきたい。もちろん、日本人も。言葉を失う衝撃的で狂気的な凄まじい作品。結構私の人生に多大なる影響を与えるであろう作品でもあった。頭から離れない...。ぜひ、劇場で。