劇場公開日 2020年8月21日

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「小松菜奈の演技の素晴らしさ、優れた脚本にお洒落な演出、そして眩しい2人の姿」糸 Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5小松菜奈の演技の素晴らしさ、優れた脚本にお洒落な演出、そして眩しい2人の姿

2021年12月30日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

64-ロクヨン-等で知られる瀬々敬久監督による2020年8月公開の日本映画。中島みゆきの「糸」に着想を得てTBSテレビ理事の平野隆が原案及び企画プロジュース。脚本は2015年に日本アカデミー賞優秀脚本賞受賞の林民夫、音楽は東京事変のベーシスト亀田誠治。撮影は64-ロクヨン-で毎日映画コンクール撮影賞受賞の斉藤幸一。配給は東宝。

主演は菅田将暉、小松菜奈。他、馬場ふみか、成田凌、主役の子供時代を南出凌嘉と植原星空、榮倉奈々、高杉真宙、山本美月、二階堂ふみ、斎藤工、倍賞美津子、松重豊、永島敏行、中野翠咲と稲垣来泉(菅田の娘役)らが出演。

何といっても、小松菜奈の演技に心打たれた。とても難しいシチュエーションとも思うのだが、友人に裏切られた彼女がシンガポールの日本食店で、カツ丼を食べながら悔しさと悲しさから涙を流すシーンの表現は特に素晴らしかった。背景に流れる糸の歌詞も効果的。

菅田の妻役榮倉奈々は、一人娘に泣いている人がいたら抱き締めてあげなさいと教える。榮倉が癌で亡くなった後、娘が抱き締めたのは祖父にあたる永島敏行。そして、その次に抱きしめたのが昔お世話になった倍賞美津子が作ってくれた食事を食べてその美味しさから昔の辛さ思い出しむせび泣く小松菜奈。このことがきっかけで、主役二人は再会へ動き出す。故郷と子役を生かしての上手い脚本と、大きく感心させられた。

あと、亀田によるピアノ音中心のオリジナル音楽は、とても良かった。まあ、中島みゆきファンとしてはファイトと時代以外の音楽も流して欲しかった気持ちも少しあるが。

最後の、なかなか会えないすれ違いを見せながらの、小松による菅田の手を握るストップモーションと、そこに二人の出会いの言葉“大丈夫?”をかぶせる演出は、とてもお洒落で流石と思わされた。そして、エンドロールで流れる二人の結婚式映像が、今の時点では現実とも交錯し眩しい限り。

Kazu Ann