「良いシーンが多かった。時系列も素敵。2020年こそ観るべき作品。」糸 tackさんの映画レビュー(感想・評価)
良いシーンが多かった。時系列も素敵。2020年こそ観るべき作品。
完全ネタバレしてるので、これから観る方はお気を付けください。
本日、先行上映に行ってきました。
天邪鬼な僕にとって、こう言った大型配給で大手TV局の商業的映画を見るときは、
まあ割とベタな設定で最後はお涙頂戴で終わるのだろうと思っていた。
確かに、ラストシーンは商業かなと思った。
きれいに終わったな、という印象。
個人的には、最後は『殺人の追憶』のソン・ガンホばりの菅田君の顔アップで終わったら、
文句なしの五つ星だったかな。
まあ仕方ない。
しかし、映画の作り方が丁寧だし、入りやすい。
この映画は30年と言う月日に色々な人生が織り込まれており、
その描き方はすごくわかりやすくキレイだった。
時々、時系列バラバラで過去か現在かもわからない自己満映画があるので。。。
そして、小松菜奈さん演じる葵は、ドロッとしたヒューマンドラマの主人公のような人生を歩んでいて、そこもなかなか良かった。
主演2人が歩んだ30年以外にも、
その周辺の人たちにもそれぞれの30年を歩んできたんだなと思わせる作品だった。
9.11テロ、リーマンショック、東日本震災、また家族の病気など予期せぬ事で人生が変わるのは当たり前。
そして、どこか他人ごとに今まで思ってきたかもしれないが、
今年のコロナ危機で皆さんがどこかこの映画に感じる事が多いのではないかと思う。
さて、ここからは個人的に好きなシーン3選。
①漣(菅田将暉)が先輩の桐野香(榮倉奈々)が失恋話をしながら泣いている姿を見て、
自分の姿を重ね、大声で怒るシーン。こういう演技は菅田君にしかできない。
②漣が幼馴染の竹原(成田凌)とその妻・利子(二階堂ふみ)と呑んでいるシーン。
利子が被災してから変わってしまったと話していて、
竹原が『普通に生きたかった』と言った。
そして竹原が中島みゆきさんの『ファイト』を熱唱するシーンは
この映画で唯一涙が止まらなかっった。
役者陣がそれぞれの人生を背負っている感じがした。
③葵がビジネスパートナーの玲子(山本美月)に裏切られ、銀行にお金を返して、
疲れ切ってカツ丼を食べるシーン。
あの食べ方とか食べながら泣く小松菜奈さんが愛おしくてしょうがなかった。
こんなレビューを書いていたらもう一回見たくなった。
PS.ここまで書いて思ったが、中島みゆきさんの『糸』の最後の“仕合わせ”という言葉は、
“幸せ”とは違った良い意味悪い意味どちらにでも用いた言葉らしいので、
やはりラストシーン、僕が監督なら菅田君がフェリーを見つめるアップで終わらすか、
チーズ工場の人たちとパーティー中に車を出すのを一瞬止めるシーンで
終わらせるかな。そしたら、完璧日本アカデミー賞最優秀作品賞だった。