「【”世界が一つになった時、僕らには勇気が沸き上がり強くなれる” 孤独で哀しい思いを秘めた司書の先生と、二人の小学生との絆を描いた人間性肯定思想をベースにした、どんな時でも前を向く勇気を貰える作品。】」君がいる、いた、そんな時。 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”世界が一つになった時、僕らには勇気が沸き上がり強くなれる” 孤独で哀しい思いを秘めた司書の先生と、二人の小学生との絆を描いた人間性肯定思想をベースにした、どんな時でも前を向く勇気を貰える作品。】
ー日本人の父と、フィリピン人の母との間に生れたキシモト君は、学級委員長でもあり,図書委員でもある優等生。だが、ハーフである事を3人の男子から揶揄われる日々。けれど、彼は悲しい気持ちを抱えながらも相手にせず、司書のショーコ先生のいる図書室で先生と喋るのが唯一の楽しみだ。
一方、放送委員の”DJカヤマ”は、毎日昼休み独りで”ウルサイ”放送を校内に流す日々。けれど、彼の元にはリクエストは一通も来ない。彼も又”浮いている”のだ。
彼にはもう一つ、誰にも言えない悲しい秘密があった・・。
そして、ショーコ先生にも、”哀しき” 秘密があった・・。-
<Caution! 以下、一部ネタバレあります。未鑑賞の方は一端、ここまでで・・>
■印象的なシーン
・キシモト君がハーフである事を揶揄われながらも、反撃せずに堪える姿。
母親が友人がフィリピンに帰る事を祝って大きな声で唄う事も嫌いで、一人で食事をする姿。
が、後半彼が、母親が夜の勤め先のパブの店先で酔客から侮辱的なお金の渡され方をしても、明るく振舞う母親の姿をこっそり目撃してしまうシーン。
ー 辛くても、家族のために頑張る母親の姿。どのような言葉より、説得力があるよなあ・・。-
・DJカヤマがあちらこちらに秘密基地を持つ理由
- 家に入りたくても、中から聞こえる怒鳴り声でコンビニの袋を手に持ちながら集合住宅の家の扉の前で佇む姿。何が起きているかはすぐ分かるし、後半、彼が自ら上半身のあちこちの痣をキシモト君に見せるシーン。ー
・ショーコ先生が”可愛いのよ‥”と言いながら胸から下げている幼子の写真をキシモト君に見せない理由。そして、学校に居る時とは別人のように暗い顔でスーパーで幼子用の品々を購入する姿。
■事情を知ったキシモト君とDJカヤマが夜中、学校の放送室からショーコ先生にも聞こえるように放送を流すシーン。
そこで、キシモト君が歌った歌。
窓辺に顔を乗せ、幸せそうにその歌を聞くショーコ先生。
-キシモト君の”母親の歌を聞き、覚えたであろう”歌声が、心に響きます・・。ー
<校長先生(阪田マサノブ)の笑顔を浮かべた”粋なお裁き” そして、”3人は勇気を持ち、前を向き、一歩前進した・・。>
<2020年10月31日 刈谷日劇にて鑑賞>
■補足
鑑賞後、迫田監督のお話を聞いた。
コロナ禍により、念願の長編上映の前にしっかりと宣伝出来ず、苦労した事から今作への想いを、時に涙で声を詰まらせながら、お話をされていた。
2012年の短編映画が評判を取りながらもその後、紆余曲折を経ての今作での長編デビュー。
今作への想いが十分過ぎるほど、伝わって来た。
現在の映画業界で、オリジナル脚本で勝負出来る監督は少ない。けれども、迫田監督は長編映画を自らのオリジナル脚本により、大資本に頼らずに作り上げた。
立派である。
■蛇足
DJカヤマを演じた、坂本いろはさんが、女の子であったとは!