劇場公開日 2020年10月23日

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「蒔田彩珠さんの進化を見た。」朝が来る ちゃーるすとんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0蒔田彩珠さんの進化を見た。

2020年10月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

蒔田彩珠x河瀬直美監督というタッグに、蒔田さんの進化を見ました。

これまでは、暗いイメージが多かった蒔田さんの役は、
最近の映画では明るい役も出始めて印象が変わってきており、
この作品でその印象が非常に良い意味でぶち壊されました。

「役になりきる」という演技を作り出す河瀬組の映画の作り方は、蒔田さんの演技に深みを与え、
今まででも映画に締まりを生んでいた演技がさらに進化したように見えました。
あんな表情、あんな目、あんな声、どんな経験を積んだらできるんでしょうか。
本作の彼女の役はそういう一つ一つの経験が積み重なって成長ていく役なので、
その感情の運び方がすごすぎました。本当にすごかった。これは順撮りしたのかな、、、
蒔田さんの涙を見るたびにもらい泣きしていたので大変でした。。。笑
ラブシーンも美しいキスの映像や肌を触りあうシーンだけにとどめ、息遣いを中心に置く。
非常に女性らしい。

ストーリーには非常に重い軸がたくさん出て来る。メインは不妊治療だが、
そこから養子縁組の話を「子供が親を探すためのもの」と抽象し、
マイナスなイメージを持つ日本で入り込みやすい物語にしていること、
そもそも妊娠という女性の問題を女性監督が表現し、主要キャストも問題を抱えた女性が多い。
そこで生まれる絆を非常に良い距離間で表現していること。
それでもいろいろな不条理を抱えて生きていく人間たちの難しい生活を表現しているが、
それぞれのシーンをパズルのピースのようにちりばめ、
合間合間に美しい映像で時間経過で埋めていき、
全体的には非常に美しい物語にまとめられている。
女性らしい、「美しい映画」を見ているという感覚が襲ってくる。

カメラワークは非常にジンバルを使用したショットが多い。
完全にこれらは朝斗(息子)目線の映像なのだろうが、
そう思ってみているとちょっと?な部分があるのでもっと深い意味があったのかもしれない。
ただ、個人的には非常に全体の構図を意識した撮影方法と感じた。
ヨリの映像を三脚で撮ろうとすると、キャストさんにまずは一度テストしてもらい、演技を作る必要がある。これではリアリティにかけると感じたということか。
ジンバルを使用して、リアルタイムでキャストさんの表情、動きを追う、撮りたい構図にカメラマン(おそらく監督)が纏め上げる。ヨリの映像でジンバルが多いのは非常に効果的と感じた。
後半はFixの画が何となく多くなっている気がした。朝斗も大きくなって、周囲の状況を理解してきたということだったのかもしれない。

最も印象的なのは、第3者が問題を抱えた女の子たちにインタビューするシーン。
ここの色味やキャストさんたちの表情が一番イキイキと伝わってくる。嬉しさや悲しさも。
私たち観客に、こういった問題について真剣に考えるように。と投げかけているのだろうか。
もしもそうなら、完全に監督の思うつぼだ。
不妊治療、養子縁組、望まない妊娠、セックス、非常にいろいろと考えさせられる139分だった。

ちゃーるすとん