Winnyのレビュー・感想・評価
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社会における匿名性、表現の自由について論じた映画
著作権をめぐる法廷劇と、それとは別の軸で進行する警察の汚職事件の告発、とを絡めた大変緊張感のある作品である。
Winnyの開発によって匿名での告発が可能となり暴かれた闇。そして裏では名前も顔も社会に晒されながら闘う人たちがいることもきちんと描かれている。
権力者に立ち向かう術を教えてくれる、社会派映画でもあった。
そして俳優たちの演技が素晴らしい。
そこに山があった。だから登った。
知らなかったことが恥ずかしい
東出すごいな
ただただ悔しい
天才
著作権を放棄したクリエイターは何故起訴されたのか?
「殺人事件で凶器として使われた包丁を作った人間を裁けるのか」違法ダウンロードによる著作権侵害を助長した罪に問われた伝説のプログラマー金子勇(東出昌大)を主人公にした法廷ドラマである。この金子勇が開発したWinnyとは、p2p技術を使ったファイル共有ソフトだそうなのだが、金子を起訴した警察や裁判官同様、IT素人の私がその何が画期的なことなのか、東出昌大扮する金子の話を聞いてもちんぷんかんぷん。フィンテックの基本技術であるブロックチェーンも、金子の作ったこのWinnyを元にしていると聞いて、初めてその凄さが実感できたのである。
ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズがこのソフトを手にしていたのならば、すぐさま特許申請してガッポリ著作権料を稼いでいたと思われるのだが、技術力はあっても金儲けには疎い他の日本人技術者同様、短時間で開発した画期的なWinnyをこの金子、よりによって魑魅魍魎が跋扈する“2ちゃんねる”にアップロードしてしまうのである。予想どおりこのWinnyが公開されるやいなや、若者の間で違法ダウンロードが急増、ソフト業界も大ダメージを受けたとか。おいおいITオタクの分際で余計なことしてくれやがって、というのが金子を起訴した警察の本音だったのではないのだろうか。
映画自体は、その金子勇と弁護士(三浦貴大)の友情を軸に敗訴になるまでを(実話ベースで)描いているのだが、オチに警察の横領事件との関連を匂わせている程度で、金子自身の発言「著作権の概念に風穴を開ける」という点についてはまったくの説明不足、ほとんど触れられていないといってもよいだろう。この裁判実は、著作権侵害による被害者が(ソフト業界以外)誰もいないというところがミソなのである。ことWinnyに関していえば、2ちゃんにアップロードした段階で金子自身の著作権は放棄されているわけで、その著作権利者の存在しないソフトを使って誰かが法を犯したとしても、その開発者の罪を問うことはできないのではないか。映画はむしろそこに切り込むべきだったのである。
ところが金子勇の人畜無害な性格にばかり焦点を当てすぎたあまり、ナイーブなITオタク養護のための(一般人の共感が呼べない)作品になり下がってしまったのである。ジム・ジャームッシュは『オンリー・ラバーズ・レフト・アライブ』の中で、映画監督と観客とのダイレクトな流通システム構築を夢想していたが、このWinnyの技術をもってすれば、一対多のシームレスな配信システムの構築ももはや夢ではない気がする。そこは、ネトフリやアマプラなどのポータルも不要となる、究極の中抜きシステムといってもよいだろう。金子の言う“風穴”とは警察などの公権力ではなく、著作権保護という名目でクリエイターを雁字搦めにするマーケットに対して開けられるべきものだったのではないだろうか。
“47がんばれ”のコメントとともに、2ちゃんねるユーザーから善意のカンパが多数振り込まれたように、才能あるクリエイターは、政府の援助金や配給会社の出資金に頼らずとも、クラウドファンディング等によって映画などのソフト作りを自由に行うようにならなければ、いずれ日本いな世界の文化は(商業用途やプロパガンダ作品ばかりとなって)すべからく滅び去ってしまうだろう(既に滅びかけている気がしないでもないが)。「プログラムは私の表現方法なんです!」金子のこの言葉は、プログラマーのみならずすべてのクリエイターの心境を代弁した、悲痛な叫びだったはずなのだ。
Winny‼️
そこに山があるから登っただけ
映画化するなら描かなければならない背景が、まったく描かれていなかった。
本作のネタ元になった事件は大々的に報道もされましたし、映画自体としての本作も世評が低いものではないと承知はしているのですけれども。
(実際、評論子が入っている映画サークルの中でも2023年公開作品の年間ベストテンに挙げている会員は少なくない。)
しかし、評論子には、残念ながら大いに不満な一本になってしまいました。
それは、本作には、この事件の本当の「意味づけ」というのか、「構図」というのか、「背景」というのか、そういうものがまったくの描かれていなかったことで、個の事件の、いわば「上っ面」を簡単になぞっただけに終始していることによります。
つまり、本作のネタ元になった事件が事件化された背景には、「功を焦る警察」+「検察」とは言いつつも、ちっとも警察の捜査を「検じよう」としない検察当局+はんかくさい(北海道弁。馬鹿とか、思慮が足りない、とかいうくらいの意味)裁判官=本件の事件」という構図があります。
本作ではこの事件の、いわば上っ面をなぞっただけで、本来描かれるべきこと、描かなければいけなかったであろうことが、まったく描かれていなかったと思います。
本作の事件は、その実相において「法制度が技術の進化に追いついていない」とかいう単純な話ではないと、評論子は思うので。
その意味では「観終わって、がっかりした作品」というほか、なかったと思います。評論子には。
(追記1)
=京都府警の「勇み足」=
警察の仕事は、いま「曲がり角」にあります。
近年は年を追うごとに犯罪(刑法犯)の認知件数が減り、死亡交通事故も減っています。過激派も、暴力団も暴走族も、活動が鈍くなっています。
代わって、警察の仕事として新たに登場してきたのが、DVやストーカーといった生活安全の事件です
しかし、それは、従来型の警察には、もっとも苦手とするタイプの犯罪―。
それらは、被害者・加害者の生活関係に深く入りこまなければ解決は覚束ないタイプの犯罪で、これまで「警察公共の原則」、そしてそれ故に「警察は民事不介入」と教え込まれてきた現場の警察官には、もっとも不得手な犯罪ということになります。
そういう不得手な犯罪ということで、どうしても対応が後手に回っているうちに、警察は、桶川では手痛い失敗をして「大やけど」を負ってしまった。
その失地挽回とばかりに、どこの警察本部でもリキを入れているのが、コンピュータ化時代を背景として「サイバー警察」ということになっています。本件の京都府警を含めて、どこの警察本部でも。
とくにwinnyの開発者が住んでいた、つまり事件について管轄権を有する京都府警は、ここぞとばかりに勇み立ったことは、想像に難くありません。
(ここで大きな事件を摘発して名を挙げれば、京都府警は警察業界でも大きな顔ができるようになる。)
その「勇み足」が、winnyの無理な摘発だったことは、疑う余地がなかったことと思います。
(追記2)
=「検察」とは言いつつも、ちっとも警察の捜査を「検じよう」としない検察当局=
このことについては、今更、言い足すこともないので、詳細は割愛します。
(追記3)
=第一審のはんかくさい裁判官=
作品中で、いみじくも壇弁護士が指摘しているとおり、ナイフは飽くまでも肉を食べるための道具なのであり、それ以上のものでも、それ以下のものでもない―。
結果としては、それに尽きるのですけれども。
しかし、第一審の裁判官は、合議事件として三人も関与しながら、雁首揃えて起訴状(検察官の作文)どおりに考え、結果として自分たちの「はんかくささ」には思いが至らなかった(合議事件ですから、まっとうな裁判官が一人はいたかも知れませんが、結果が有罪だったということは、残り二人の裁判官は、はんかくさかったということ)。
ちなみに、この事件について最終的に無罪を言い渡した最高裁の決定文(平成23年12月19日)は、誰でも最高裁のウェブページで読めるようになっています。
それを読むと、いかに第一審の裁判官が「はんかくさかったか」ということは、一目瞭然だと思います。
それ以上は、何も付け加える必要はないと思います。評論子は。
日本でもクルマにはねられて亡くなる方が跡を絶たなくても、クルマの開発者が逮捕されたという話は、ついぞ聞きません。
また、包丁で刺され殺される人も、これまで枚挙に暇(いとま)なかったことと思いますが、さりとて、包丁職人が立件されたということもありません。
(追記)
「検察」とは言いつつも、ちっとも警察の捜査を「検じよう」としない検察はさて置くとしても、もちろん、警察は、社会の中で必要欠くべからざる大切な仕事をしていることは、万人に異論のないところだと思います。
そして、その大切な警察の活動(捜査)が適正なものでなければならないことにも、異論の余地はないことだろうと思います。
それ故、その大切な警察が、いたずらに功を焦ることなく、地道な活動をしてほしい(公器としての組織なのですから、相手の認識不足を「もっけの幸い」として自分たちに都合の良い書面を書かせたりしない)と思っているのも、独り評論子だけではないことと思います。
法廷劇としても白眉の出来
本作を見終わった後に金子勇氏のWikiの批判を見ると思う所はある。
作品自体は当時子供の頃だったので曖昧にしか知らなかったことを知れた気がして面白かった。
作中で何度か「ナイフで人を殺した場合、ナイフを製造した者が罰せられるか?」という例が出てくる。作品を見ている最中は確かにそうだと思った。
しかし、批判を見ると考えが覆った。
金子氏が行ったことは、自身が製造したナイフをナイフ協会やナイフコミュニティに披露して技術研鑽するのではなく、闇市で「俺の作ったナイフはあのナイフより優れてるから使ってみてくれ」と提供したようなものと考えることが出来る。これだと話が変わってくる。
P2PのソフトウェアであるNapsterの運営会社が2001年にアメリカ連邦裁判所で著作物に関して違法判決を受けているという情報をP2Pの勉強をしている者が知らなかったのかという疑問が残る。知っていた場合、未必の故意なのではないか。
金子氏は性善説の上、Winnyを提供したのかもしれない。もしそうならば、人間が余りにも愚かであるということを考えなかったのだろう。
自身が積極的に参加しているコミュニティ(2ちゃんねる)で自身の実力を見せつけたいという今で言う承認欲求があった可能性も否めない。2ちゃんねるの技術部長などのように祭り上げられることに快感を得ていた可能性も今となっては知る由もない。憶測の域を出ないが良くも悪くも想像というものは膨らんでいく。
意図的に織り込まえている無能な年長者たちの描画が気になった。
冒頭でP2Pの説明をしている時に話を聞いていないおじさん弁護士、裏金の主犯格のおじさん警察官、ITが全く分からないおじさん裁判官。
愛媛県警の裏金問題はWinnyによって暴かれたがどうも関連性が薄く感じてしまう。
「無能なおっさんが未来ある若者を潰す」というメッセージをねじ込んだのではないかと個人的には感じた。
当て書のような役者東出昌大
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