劇場公開日 2019年10月19日

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「翻訳という仕事の奥深さ」ドリーミング村上春樹 琥珀さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5翻訳という仕事の奥深さ

2019年10月20日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

文学も映画も自分の人生や経験から得たものを通して何かを感じ、何かを得る。それを吸収する過程が意識的であろうが、無意識的であろうが今現在の自分を成り立たせている。従って、自分の感性で理解できないことがあれば、今の自分では足らない何ものかがあるに違いないとの思いから、そのピースを埋めようと新たな分野の文化や芸術や文学も含めた書物を追い求めることになる。

翻訳という作業は、単純な置き換えだけではまったく不十分で、その人の母国語にはない語彙や文化をどう母国語に置き換えるか、という大変な労苦の積み重ねであることがよく分かった。

つまり、翻訳された作品はその対象となる国の文化や感性、そしてその作家の独自性までもその国や作家のことを何も知らない読者に届けてくれるわけです。
村上春樹さんが自作だけでなく翻訳にも精力的に取り組んでいることの理由のひとつには、そういったこともあるのかな、と思ったりもしました。そのような理解は的外れなのかもしれませんが、翻訳に携わっておられる方への感謝の気持ちが今まで以上に湧き上がってきました。

もしこの作品を観る方で、村上春樹さんの『かえるくん、東京を救う』未読の方は、短編なので読んでからの鑑賞をお勧めします。
新潮文庫『神の子どもたちはみな踊る』所収。

グレシャムの法則