東京干潟のレビュー・感想・評価
全7件を表示
シジミから見える「人間の一生って何?」
『東京干潟』は、同じ干潟でシジミを取って日銭を稼ぐホームレスの爺さんのお話です。彼は、玉川土手にブルーシートなどで小屋を作ってそこで多くのネコ達と暮らしています(当然、非合法でしょう)。彼もまた、淡々とした日常を送り、干潟に入っては這い蹲って素手でシジミを取ります。それが築地に出て料亭などに卸されていると云うのですから驚きです。東京にそんな漁場があったんですね。
現在80歳を超えるこのお爺さんが語る人生が戦後の日本史をそのまま反映しています。炭鉱景気に沸く福岡で生まれ、やがて返還前の沖縄に渡り米軍基地で働き、続いて大阪に出て竹中組で働いたのち建築業社社長として独立しバブル景気を迎えます。しかし、作業中の事故で片目を失明したものの、労災申請すると大手からの受注を失うのでそのまま引退してしまったのでした。そして、今や多摩川土手で格差社会の底辺で生きておられるのです。でも、人生の浮沈を呑み込んだ末のその言葉には不思議な魅力があります。「人間の一生って何だろう」なんて事まで考えてしまいます。
狭い干潟に生きる、人間を含めた生態系を力まずに見つめるこの両作、監督の素直な視線がとても魅力的でした。
(2019/10/12 鑑賞)
なぜそこ
多摩川河口でシジミ採りをしながら、ネコさん達も飼っているホームレスのおじいさんのドキュメンタリー どうやら羽田の近くらしいモノレールや飛行機が 若い頃はバリバリ働いていたらしく、建設業で片目失明してから河川敷へ
シジミも乱獲で段々捕れる量が少なくなり、台風、工事で干潟の面積も減り、それでもネコには餌をやりキチンと飼い続けている 動物を飼うとはこういうことである 温暖化も影響?自分の生活も大変そうで、捨てていく人がいる一方でである ちゃんと労災か年金貰ってくれよとは思った ただまだご元気でもう91才になられるとのことです 御本人様は今が一番幸せとのことでしたが、こういう人物にこそ良い事がありますように!
干潟
多摩川河口のホームレス
多摩川の河口でしじみを取りながら、その日暮らしをしている80代の男性を追う。
捨て猫が可愛そうで飼っているが、しじみ代はエサ代に持っていかれる。
このホームレスの人生は日本の戦後とリンク、これからの日本への警鐘になっている。
「どんなものにも生きる権利がある」
同時公開されている「蟹の惑星」と、同じ時期、同じ干潟で活動する、80歳半ばの老人を描いたドキュメンタリー。
事故で失った片目を隠すことなく、河川敷に小屋を建てて、たくさんの捨て猫と一緒に住んでいる老人は、「あんた環境省の人?」と、向こうから監督に話しかけてきたという。その堂々としたオープンな姿を見て、監督は「これは映画に出来る」と直感したらしい。
一方、老人は「俺なんか映して映画になるの?」と思っていたようで、自分の特異性には無自覚であった。
監督は4年間にわたって通い詰めて撮影し、何度も繰り返しインタビューして、老人の生き様を浮彫りにする。
大きいシジミだけ採るのはなぜか、なぜ素手で採るのか。どのような気持ちで捨て猫と暮らしているのか、なぜ河川敷に居着いてしまったのか。そして、これまでの人生はどのようなものであったのか、なぜ片目を失ったのか。
80代とは思えないがっちりした体躯をもつ、この心優しき老人は、チューハイを片手に、「どんなものにも生きる権利がある」と何度も語るのだ。
漁師による乱獲と、工事による環境破壊で、シジミは激減しているそうだ。
また、バブル期を彷彿とさせるオリンピック特需の東京を眺め、その先に何があるのかと、老人は苦々しい。
しかし、それでもなお、台風の後、濁流で増水した危険な多摩川のほとりで、なぜか老人は元気なのである。
丁寧に描かれた最高のドキュメンタリー!
今年のベストドキュメンタリーの1本!
全7件を表示