劇場公開日 2021年8月13日

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「命令(プログラム)通りにしか動けないやつは人間じゃない」フリー・ガイ 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5命令(プログラム)通りにしか動けないやつは人間じゃない

2021年9月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

人工生命は生まれるのか、AIは真の知性や人格を獲得できるのかという問いは、SFとしては古典的だ。本作のSF的な問いかけはまさにこれなのだが、現代人にとって比較的身近な娯楽であるオンラインゲーム上のNPC(モブキャラ)に、知性と人格が宿るという点が、本作のユニークさだ。基本的に、NPCは決められた一定のリアクションしか示さない。機械のキャラそのものである。主人公のガイは、ある日、ちょっと冒険してみようと思い立ち、愛する女性を見つけて、どんどん自我に目覚めていく。
これは、ある種の現代人揶揄でもある。決められた時間に決められた仕事をして、自分の頭で考えず流されてゆく人間は、ほとんどゲームのNPCと変わらないだろうというような。こういう問いかけもチャップリンの「モダンタイムス」から続いているものだが。人間は、自分の頭で考えてこそ人間でいられる。SF的な問いとは別にそういう問題意識もあると思われる。
人工生命の掘り下げについては、『ソードアート・オンライン アリシゼーション編』が同様のテーマを扱っている。あちらは、AIによって生まれた知性体に人権は認められるのかという点にまで切り込んでいる。本作も続編制作が決まったようだが、どのようにテーマを深化させるか楽しみにしている。

杉本穂高