ダゲール街の人々のレビュー・感想・評価
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現実の美しさ
50年前のパリの街
ダゲレオ、というタイトルに弾かれて観たのだが、とても良かった
登場人物は役者ではない、その表情は本物
特定のストーリーが流れるわけではないが、パリの街で暮らす人々のリアルが、フィクションを軽く超えてくる
山積みの商品、手書きのシンプルなポップ、小さなお店に、何もしない人々、急がない店主と客の会話
音楽もほぼなし、現実って本当に美しいなぁ、と思える映画
リアルの凄さ
街を紹介するドキュメントというとテレビの「出没!アド街ック天国」や地井さん、加山さん、高田さんと続く「散歩シリーズ」が思い浮かぶが本作は監督アニエス・バルダさんの興味の対象の選び方と編集のセンスが見どころでしょう。
アニエス・ヴァルダさんはベルギー生まれ第二次大戦を逃れてフランスに渡り後に映画監督になりヌーベルバーグの祖母ともよばれる才人です。個人的にも好きな監督さんで「幸福(1965)」の衝撃と映像美、遺作となった「顔たち、ところどころ(2017)」など印象深く思い出されます。
原題のDaguerreotypesは街の名にもなったルイ・ダゲールさん考案の銀板写真のこと、アニエス・バルダさんも元は写真家だったから興味を持ったのでしょう人々の撮り方もどこかポートレート風に撮っていました。
出てくる人はパン屋さん、仕立て屋、肉屋さん、香水屋さん等のご夫婦、楽器店の店員、運転教官などご近所さんらしい。いつどこから来たの、なれ初めは?とか皆に同じ問いかけ、お堅いドキュメントでは退屈と思ったのか街を訪れたマジシャンのショーを織り交ぜ、マジシャンの動作にリンクした街の人々の日常動作を繋ぐ古典的な編集も愉快でした。
登場人物で気になったのは香水屋さんの奥さん、他の人が快活に仕事や私生活を語るのに何故か言葉少なで憂いが漂っていましたね。何も説明はなかったですが監督も惹かれたのでしょう、撮影分量が多かったように思えます、普通のご婦人の表情が大女優の演技を越えるリアルの凄さを感じます。
戦前のユダヤ系フランス人がいなくなったダゲール通りの話。
パリ『ダゲール通り』に店を構えて生活する人々の様を描いた話。
途中、経歴をインタビューする場面があるが、だいたい、戦中から戦前の人々と分かる。淡々と人生を語るが、一人も戦争の事を語る者がいなかった。
パリは空爆も市街戦も無かったから、当然の事かもしれないが、パリに定住していたユダヤ系の人々は、ヴェル・ディヴ(冬季競輪場)事件に遭遇している。つまり、15000人近いユダヤ人が検挙されて、強制収容所へ送られると言う事件だ。この事件をパリの人々は見ている。いや、見て見ぬふりをした。
この映画はそう言ったテーマの映画ではないが、自分たちの人生経験にも戦争の事は語っていない。それどころか、肉屋の主人は兵役の話までしている。フランスでの兵役とは、ナチスに加担した側の兵役になるので、ヴェル・ディヴ(冬季競輪場)事件を起こした側の軍隊となる。この映画はそう言った主旨の映画ではないが、この人達の人生経験や人生観を聞いても、あまり心は動かされない。
今、この通りは日本料理、タイ料理、ベトナム料理と言った異国の料理店が立ち並ぶ通りの様だ。多分、肉屋も床屋も楽器店も存続していないと思う。香水屋もね。おばあちゃん認知症だったんだね。
ダゲール通りからヴェル・ディヴはセーヌ川を隔てた対岸の位置になる。距離は6km位で、直線上の中間部にユダヤ人街のマレ地区が存在する。
【”ダゲール通りの小売り店に流れる時間を切り取る・・。”このドキュメンタリー作品にはダゲール通りに住む人々の確かな生活と幸せと、少しの悩みが詰まっている。不思議な風合の素敵な作品である。】
■アニエス・ヴァルダが50年以上居を構えていたパリ14区・モンパルナスの一角にあるダゲール通り。
“銀板写真”を発明した19世紀の発明家の名を冠した通りには、さまざまな商店が立ち並ぶ。
そして、アニエス・ヴァルダは自らが愛する下町にある小売店を営む人々(夫婦二人が多い。)の仕事をする姿を、愛おし気な視点で切り取って行く。-
◆感想
・パン屋、美容室、時計屋、肉屋、仕立て屋、小さな食料品店、化粧品を扱う店が、次々に撮影されていく。お客さんとの遣り取りも様々な仕事の音も収録されている。
・アニエス・ヴァルダはそれぞれの店の人々、ご夫婦に馴れ初めを聞いたりしている。その問いに、少し照れ臭そうに答える人々。
これは、彼らとダゲール通りに住んでいた、アニエス・ヴァルダとの間に信頼関係があるからだろう。
・作中、効果的に描かれるマジックショー。街の人達は、楽しそうにそのショーを見ている。
<この作品の中で描かれる、ダゲール通りに住む人々の表情は豊かだ。
そして、この作品からは確かな生活をしている人々の、細やかな幸せが視る側に伝わって来る。
不思議な風合の、素敵なドキュメンタリー作品である。>
■「顔たち、ところどころ」を劇場で観た際には、アニエス・ヴァルダ監督の事を良く知らなかったが、人々の生活と表情を写し取る事に拘りを持った監督である事を再認識した。
バリ・ダゲール街の半径を活写した逸品
パリのモンパルナスにあるダゲール通りの記録。初見で遅刻して冒頭の1分ぐらいを見逃したので後日に再見しました。
アニエス・ヴァルダが、子育てをしながら、自分の住んでいる半径の商店街の人々に興味を持ち、店先にカメラを持ち込んで活写されている。
登場する商店も色々でパン屋、肉屋、化粧品店、床屋兼美容院、食品雑貨や自動車教習所?まで多種多様なところや、生粋のパリっ子と思った商店街の人々が1900年以降に、パリに移住して来たと証言されるところなども意外。
初見で、マジシャンと商店街の人々のショーを観る下りのカットバックが、陳腐な印象を受けたが、再見するとすんなりと腑に落ちるのは不思議。
老夫婦の香水店で、奥さんの不許和音な行動やパン屋の夫婦の微妙なズレなどのヴァルダ作品の怪作「幸福」にも通底する怖い不可解さを感じる。
とにかく40年前の76年のフランスの街角の商店の記録を程よい雰囲気と距離感で見せてくれる逸品の映画。
リアルとフィクションの境目を行くというのはアート的で、ではドキュメ...
リアルとフィクションの境目を行くというのはアート的で、ではドキュメンタリー映画はアートではないのかと言えば間違いなくアートで、これは彼女固有の世界観なのかな。良かった。
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