ラスト・ドアのレビュー・感想・評価
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『ウォーキング・デッド』を全エピソード見た移民ハラファン
抗議集会直後にゾンビパニックとなった。逃げ惑うエンリコは移民一時収容所の建物の扉を叩き、中に入れて貰えた。直前には倒れていた難民に暴行を加えていただけあって、アフリカ系難民ばかりがいた施設の中、抗議集会には参加してたんじゃなく反対の立場で来ていたと嘘をつく。エンリコは相当な差別主義者だったからね。
ゾンビパニックのシーンよりも、移民問題の人間ドラマのパートが多いという異質のゾンビ映画でした。徐々に差別主義が融和していくのかと思えば、助けてもらったのに自分以外のものはドアから閉め出してしまうというエゴイスト。邦題については、そのドアについての描写が数度あったからだろう。
さすがにサラとアリの親子に親しみを感じて助けるかと思いきや、終盤には突き放すというわがままなエンリコ。落ち着いた頃にようやく外に出られると思ったら・・・といった展開だ。
2019年の作品にしてはゾンビはノロノロ動くだけという珍しさは評価したい。これはロメロゾンビの系譜に近いのです。ちょっと虚しさを感じる後味もいい。
ゾンビ映画が観たい人は回れ右
まずはゾンビ映画として、これは全くつまらないと言っていいと思う。
絶命しないとゾンビ化しないというのは、あまりゾンビ映画を観ない自分には斬新、というか、丁寧だなと思ったけれど、それは、ゾンビ化までの時間差の説明であって、特に意味はない。
ゾンビ映画としてつまらないんじゃ致命的だろと思われるかもしれないが、本作はそもそもゾンビ映画ではないのだ。ゾンビは出てくるけどね。
オープニングで、白人優位主義のシンボルに使われることもあるケルト十字を首に掛けた主人公エンリコは、移民反対のデモに参加している。
そこで突如としてゾンビ発生。街は戦場のように豹変する。
エンリコが危機一髪逃げ込んだ先は、移民が一時収容されている施設だった。
ここで白人優位主義者と移民の立場が逆転する。
つまり、移民だけが暮らしている施設に外の戦禍から逃げ込んできたエンリコはメタ的難民となったのだ。
施設から出られなくなったエンリコは、ケルト十字のネックレスを外し、移民たちと親しくしようとする。
エンリコを受け入れてくれる移民がいる一方で、冷たい態度をとるアフリカからの移民の大男(名前は忘れた)は、外の世界でのエンリコ、つまりメタ的エンリコとなる。
エンリコは少年アリとサッカーに興じ、多少はコミュニケーションをとれるようになり馴染んできた矢先、施設にゾンビが雪崩れ込み最大の危機を迎える。
エンリコに冷たかったアフリカの大男はこのピンチに、自分の身をていしてメタ的移民であるエンリコを信じ、同郷のアリを託す。
しかし更なる危機が訪れた時、エンリコはアリを生け贄として自分だけ助かろうとする。
移民を受け入れ、信じて親しくしても、ピンチになればイタリアを踏み台に自分だけ助かろうとするぞと、普通は移民や難民の問題を提起するもののどこかで融和のメッセージも残すものだが、ここまであからさまに反移民を掲げる作品はなかなかない。
融和の象徴のはずだったサッカーボールが、血みどろとなるエンディングはとても印象的だった。
ヨーロッパの移民問題の知識が少しないと、全く意味がわからないであろう、野心溢れるメタ的作品で、レビューが低評価ばかりになるのも仕方ない。
国を出なければよかったと嘆く移民や、ドイツ語を勉強する移民など、移民問題小ネタもあって面白いんだけどね。
あまりの低評価に憐れみを感じたので、ちょっと星をサービスする。
しかしゾンビっていうのは無限の可能性を秘めているんじゃないかと最近思う。
ポップとの融合は懐かしいレベルだが、古典文学やロマンス、ミュージカルなどと共演を果たし、ついには移民問題とも成し遂げた。
ゾンビの懐の深さには驚嘆する。
難民とイタリアの悲喜こもごも
冒頭から難民の受け入れを反対する団体の抗議集会が始まる。
どこの国も人道支援は口にするが、地域の個人レベルではあんなものだろう。
仕事を分け合えば、就職先は減るし、文化の違いでトラブルもある。貧富の差から犯罪も増える。
当たり前の事である。
そこを政治が調整するべきなのだが、大抵は出来てない。作品ではその事を説明したり台詞にしたりしないので「察しろ!」と言うつもりなのだろう。
しかし、作品のゾンビがどこから始まったか?説明がなく抗議集会の参加者が全くゾンビを警戒してないので、黒人少年アリくんが見た女の不審者がスタートだったのか?と思ったが、アリくんの母親は外に出ると「喰われる」と注意しているから、脱出してきた国では発生していたのかもしれない。
難民とイタリア人らしき人々が協力しあっていくのだが、建設的な意見や行動がなく立て籠っているだけの閉塞感が強く、登場人物は揃って重苦しい表情を出し、従来のゾンビ作品とはその部分に置いて一線を画しているように感じる。
故に従来のゾンビ映画の感覚で観ると「何か期待したのと違う…」と思う人もいると思う。
立て籠っている人々にゾンビに対する知識が少ない為、対応策は無くラストも想像より嫌な気分を残す終わり方だった。
タイトルも「Go home」のままで良かったと思う。
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