「良くも悪くも密着感の強いドキュメンタリー」えんとこの歌 寝たきり歌人・遠藤滋 Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)
良くも悪くも密着感の強いドキュメンタリー
介助する側にとって苦しいのは、仕事そのもののキツさもさることながら、コミュニケーションが取れない時ではないだろうか。
その点、遠藤さんは35年間寝たきりで、かつ、毎朝痛みで目が覚める生活でありながら、70歳にして頭脳ははっきりしており、しかも、しっかりと周囲の状況をふまえている優しい人である。
現代の正岡子規であろうか。スゴい人だ。
ベタな言い方だが、勇気をもらえる作品だった。
ただ、ドキュメンタリーの中身としては、ダラダラと同じことの繰り返しの印象が強い。
遠藤さんの短歌や文章を作る光景が映されるとともに、若い人が多い介助スタッフの姿や介助の状況が描かれる。
出せる情報に制約があるのだろうが、介助の詳細やスタッフの人物像の描写は中途半端だ。
かんじんの遠藤さんの生涯や短歌やエッセイの紹介も系統立っておらず、消化不良である。
クラシック音楽が好きなのか、ポスターがたくさん貼ってあるが、そのあたりのことも何も情報はなかった。
人間くさくて、ライブ感に溢れているものの、それが長所でもあり、短所でもある作品だと思う。
時には、一歩引いたところから描いて、客観的なメリハリを付けて欲しかった。
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