「選択肢の多い不自由と選択肢の少ない自由。」北の果ての小さな村で マツマルさんの映画レビュー(感想・評価)
選択肢の多い不自由と選択肢の少ない自由。
劇場で予告編を観てから、興味が湧いて観賞しました。
で、感想はと言うと、素朴な感じで割りと好きです♪
ダラダラと鬱陶しくも暑い夏に一服の清涼剤と言うか、かき氷の様な涼しさ求めて鑑賞しましたが、夏には良いですねw
教師志望のアンダースがあえて人口80名の村に赴任を希望し、教師生活を始めるが文化や価値観の違いに四苦八苦しながらも打ち解けていくと言うお話。
ドキュメンタリーチックな作りでドラマらしいドラマは特に無いけど、グリーンランドの雄大な風景が迫力あって美しい。
チニツキラークでの生活に慣れ親しんでいくアンダースを通しての物語は静かに語りかけてくる様な染々とした良さがありますね。
それでも都会の文化が殆ど無くて、独特の習慣がある村での生活は見ていても大変さが分かる。
子供達は言う事聞かないし、大人達は腫れ物に触る様に接してくる。
日本でもある様な田舎に移住あるあるをもっと濃くした感じ。
正直、こう書くと住みたくない感じマックスだけど、住めば都と言うか、慣れればなんとかなったりするもんで、アンダースが生徒達と仲良くなっていって、村の住人たちとも親交を深めていく。
ただ、観ていく中で何故、アンダースはもう少し環境の良い所への赴任先もあったのにここを選んだのか?とか、打ち解けない生徒達はもちろん、チニツキラークの人々にも疎外感を感じていたのに、何故打ち解けてられたのか?と言う件が割りと曖昧で、いつの間にかそうなってた的な流れは、ちょっとご都合主義的な感じですっ飛ばした感はあるけど、そういった事も“まぁ いっか~”と思わせる厳しくも美しい風景や自然環境はなんとなく有無を言わさぬ迫力があります。
アザラシの解体やナイフを使った食事。美しいオーロラの風景。犬ぞり。白熊の親子。周辺の氷山の山山々。
日本には無い物ばかり。新鮮ではあるけど、生々しい現実の厳しさ。
そんな中でアンダースとなかなか打ち解けなかった生徒のアサーとの邂逅がなんか良いなぁ。
先生と生徒と言うよりも仲間な感じ♪
日本では溢れかえっている物が殆どなく、トイレ一つとっても不便この上ない。
これだけ何も無いと“本当に何も無いんだなぁ”と思いきや、自家発電での電気設備があるみたいなのでテレビはあるし、家の中も暖かそうで綺麗。
ちょっとビックリしたのは学校の教室の中に使われてはいなかったが、パソコンが三代も置かれてたのはビックリ。多分ネットで動画等は見る事が出来ないくらいの通信速度かと思うけど、パソコンがある事のギャップになんか笑ってしまった。
村の中での仕事の選択肢は15個ぐらいしかなく、殆どの子供が猟師を選ぶぐらいで、他の仕事を選ぶなら街に出るしかなく、だからと言って15~16歳で猟師を選ぶには遅すぎるので、子供達は10歳もいかない年齢で自分の職業を必然的に選ばなければならないと言う厳しい環境。
この子達もパソコンを触る事はあると思うし、ネットの先にある世界をどう捉えているのかがなんか気になります。
ただ、この作品を観ていて思うのは、沢山選択肢がある事が必ずしも幸せとは限らないと言う事。
物が溢れかえった環境では1つ1つの物事に無関心の無感動になりがちの中で、少ない選択肢で厳しい環境のチニツキラークの生活にちょっと羨ましくなる何かを感じました。
天気が良い事。空が綺麗な事。気温が過ごしやすい事。普段自分達が気にも止めない事に彼らの環境は気がついて嬉しくなったり、なんか考えたり。
普段の自分達でも考えられる事がもっともっと身近に感じられる環境の有り難さ。
文化も違うし、考え方も違う。何かが故障をしたなら、何日間も治す事の出来ない環境下。
住みたいなぁとは思わないけど、アンダースが今でもチニツキラークに住んでると言うのはそういう事なんだろうけど、自分も今の全てを捨てたなら、チニツキラークの環境に行けるのかな?と考えたりします。
それになんとなく気付かせてくれる暖かさと優しさがあって、ゴテゴテッとした作品を見続けると、一服の清涼剤の様な爽やかさがある作品です。
視野と見聞を広めてくれるなかなかな作品かと思います。