「John•athan」ジョナサン ふたつの顔の男 everglazeさんの映画レビュー(感想・評価)
John•athan
日中はJonathan、夜間はJohnと、午前午後共に7時で性格が切り替わる男性。別人格の記憶はないため、録画で半日の出来事を詳細に語り合い、不測の事態に備えるという生活。
真面目で健康志向、「ドイツの列車のように」時間に正確なJonathanは、建築設計事務所に勤めており、上司からの評価も高い。
明るく奔放で細かいことは気にしない、何でも積極的なJohnは法律事務所に勤めている。
睡眠時間を入れて12時間しかない毎日…。3〜4時間ずつの睡眠では疲れて当然だよなぁと思いました。
自分のベッドで眠りについても、目が覚めるのはもう1人のベッドの方。目覚めた時に必ず自宅のベッドかどうか分からないというJonathanの不安がよく伝わってきました。コントロール不能のもう1人の自分が暴走したら…。知らない所で自分がしないようなことをしていたら…。
極端に違う性格の彼らが、ひとつの体をシェアして共存するために設けたルールが幾つかあるのですが、「彼女を作らない」という決まりをJohnが破ったことから2人の生活が狂ってきます。
同じ女性に両方の性格を愛してもらえばと思いましたが、全くの別人格なので嫉妬してしまい、そう上手くはいかないようです。兄弟で1人の女性を取り合う感じです。
観客はほとんどJonathan目線で彼(ら)の日々を知るのですが、最後まで観ると、実はJohnがいずれは乗っ取るつもりだったのかも、と思えてきました。
フランス語を勉強していたのはJonathanの方ですが、部屋を調べれば、JohnもJonathanの嗜好を知れる訳です。何気に勉強していたとも考えられます。
自分を抹消することが可能な母親代わりの先生に気に入られ、味方に付けておく。Johnが消してくれ!と泣きつけば、Jonathanも先生もまずは共存を目指して慌てるだろうし、万一Jonathanが自らの生存本能により先生にJohnの抹消を求めてしまったとしても、先生が躊躇いもなく削除するはずがない…と踏んでいたのかなと。
探偵を雇ったのには流石に想定外でキレたのでしょうか。自分のものをいつも妬んで欲しがるJonathanの性格(元々はタイプの異なる女性に気があったハズ)にうんざりしていたのでしょうか。
明るくエネルギッシュ、まるで太陽のようでありながら、実は「夜そのもの」の性格 ー妖しく魅力的で、時に暗く危険な秘め事を楽しむような内面の持ち主ー であり、本気で死ぬ気はなかったというJohn。人生の様々なチャンスは日中活動した方が有利であるのは当然で、昼間に生きたかったという願いが、恋愛を邪魔され彼女を奪われたことで決意に変わったのかも知れません。以上、うがった見方ですが、最後はそのまま捉えてJohnが昼間も覚醒するようになったと思いました。本当に鬱なら薬を出してくれる先生の元から離れられないし、単独で新天地へ旅立つ元気もないはずです。先生からもJonathanからも自由になりたかったのでしょう。
タイトルはJonathan。
各名前の意味は…
Jonathan: God has given
John: Graced by God
Athan: eternal life, immortal
深読みするとJonathanの方が生き残れそうですが、最後の最後に「勝った」のなら、それまでの流れが不自然ですね。
ビーチで降りたJonathanは、太陽の見納めをしたのかなと。
現実的には、最初から人格を1人だけにするべきでしょうか。昼と夜を逆にしたらしっくり来たのかなぁ…その場合、Johnは間違いなく夜更かししそうですが。
登場人物が少ないのに、なかなか面白かったです。