「内に秘めたる暴力性」復讐の十字架 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
内に秘めたる暴力性
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途中まではかなりつまらない展開。それというのもマルキーが12歳のときにに受けた性的虐待を告白しないでいたからだ。親友とは罪を被ったという過去もあり、彼からは信頼されていたマルキー。恋人エマともトラウマが暴力性を呼び起こすために何度も別れ話を持ち出したりして、自虐性、自傷癖も表面化してしまうほど荒れてくる。
何度も登場するパウロという人物は7歳の時に父親から性的虐待を受け、頭を切り落として殺してしまったことを話すのだが、会話だけなので残虐さも感じない。そもそもこのパウロはマルキーが作り出したイメージじゃないのか?とも感じるのです。
ついに母親が孤独死を遂げ、そこにあった聖書の一遍を読んだマルキー。パウロの書簡「ローマ人への手紙:12章20節」だ。それは「敵が飢えていたら食べ物を与えよ」などと、悪には善で対処する内容であり、復讐をするという生きがいにも似た25年間の苦悩をどうするかというラストの告解で爆発させるのだ。
見どころはこのラストのシークエンスのみなので、そこまで集中して鑑賞できれば楽しめる作品。怒りは暴力に訴えるどころか、「赦す」という言葉を投げつけることによって復讐を為すマルキー。焼身自殺を図るシーンは予想できるが、それを目撃した少女の驚きの表情が何とも言えない余韻を残した。
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