アヴリルと奇妙な世界のレビュー・感想・評価
全4件を表示
シュールな漫画
ジュールヴェルヌやHGウェルズの古典SFの世界観、この種のSFジャンルをスチームパンクと言うらしい。この壮大な架空の世界を実写・VFXで作ったら途方もない手間と予算がかかったろう、まさにアニメでしか描けない壮大な映画です。キャラクターはシンプルな2Dアニメで漫画チック、背景や建造物の緻密さと好対照、味のある描写です。
ストーリーは離散した科学者一家の逃亡劇、最後は力を合わせ地球を救うという壮大なアドベンチャ―。
不死身の戦士を作る秘薬の研究をはじめナポレオン政府は軍事目的での科学者狩りに必死、アヴリル一家は代々秘薬の開発を続けてきた科学者一家。科学者狩りは政府だけかと思いきやエイリアンのようなトカゲ人間も同様のことをやっていたと言う設定。たぶんナチス第3帝国の暗喩でしょう。
子供向けなので喋れる猫、アヴリルの愛猫ダーウィンが大活躍。蒸気機関全盛かと思いきやハイテクのオスプレイもどきや光線銃、潜水艦ならぬ潜水館、挙句は宇宙ロケットまで出てくるから興味津々。アニメ映画は日本のお家芸かと思いきや世界には凄い作家がいるのですね・・。
猫サムライとスノードーム
アニメそのものの印象はどことなく日本の昔のコミックを思い出させる風貌だったり、細かな手描き感溢れる温かさには懐かしさが漂ってくる。背景画にしても、中心地以外はモノトーンで暗く、エッフェル塔ですら煤だらけの煙突みたいに感じてしまう。キャラは太い輪郭で、母アネットも娘アヴリルも可愛くない・・・ただ、恋をしてからは違和感もなくなる。
そんな絵的なものよりも独創性豊かなストーリーが面白い。普仏戦争がなくなったことにより大きく歴史が変わり、トカゲ軍団によってアインシュタインやパスツールをはじめとする優秀な科学者が失踪し、世の中は産業革命も起こらず蒸気機関に頼っているのだ。電気すら発明されていなかったが、トカゲ帝国には科学者が集められていたので電気はあった。平和的利用じゃなかったけど・・・
メインとなるのは不死身になる秘薬の研究で、アヴリルの曽祖父ギュスタープから始まっていた。ナポレオン三世が戦争のための最強兵士を作るために研究させていたのだが、あっけなく研究所が爆発し、歴史は変わった!という設定だ。その時逃げ出した2匹のトカゲが地下に帝国を作り上げていたのだ。
祖父ポップスことプロスベールと父ポール母アネットにより完成していた血清はスノードームに混入され、それが1941年にひょんなことから飼い猫ダーウィンを蘇らせ(たと思われた)、祖父の代から追い続けていた警部(降格)や利用されていたジュリウスをも巻き込んで大騒動となってしまう。
個人的にはほぼダーウィンが主人公に思えた!結局、不死身の効果を得られたのは彼一匹だけ。壮大な科学者家族の喋れる飼い猫だったけど、彼が全てを見てきたのだ。奇想天外なストーリーと、宇宙を旅した猫。終わってみると、かなり寂しかったに違いない猫の気持ちも想像できるし、猫目線で描いても面白い作品になったに違いない。科学の発展の逆をいく面白さも彼の功績なのだろう・・・コティヤールが声優だったことを知っていればアヴリルも可愛く見えたのかもなぁ。
バンドデシネ+スチームパンク+クレヨンしんちゃん?
カリコレ2019
フランス発のヌーベルSFファンタジーアニメという触込みだが、流石ジャパニーズアニメに共感性を頂いている国だけに、両国の良い所が混ざり合ったような感じを受ける。それは、タンタンのような画風や、歩くときの粘着的な動き、しかし丁寧且つ綺麗な背景画、しかしきちんとコミカライズされたキャラ達、伏線の回収の丁寧さ、歴史改編物等、それぞれの国のアニメ映画をきちんと理解している監督だと思える。それは、ハリウッドにはないアニメならではの表現方法をキチンと踏まえたオリジナリティと、小さい出来事をデフォルメさせてストーリーを膨らませるセオリー、そして何より、大人から子供まで安心して観ることが出来る展開などが、概視感となって落ち着いて観る事が出来るからである。
逃げ出した改造トカゲが、世界中の科学者を誘拐するというトンデモ話としても、それはそれで納得してみせてくれる力強さをひしひしと感じる。と同時に、実は10年前に作られた血清ではなく主人公が作った血清が完成品という、小粋なトリックを組み込むシークエンス、ロケット爆発によってスクリーン全部を真っ白にしての場面転換の演出の妙、ロープウェイや歩く歩道などのガジェットのデザインもさすがヨーロピアンといった洗練さだし、登場人物達のキャラ設定も分かり易い。何より、“夫婦喧嘩”という些細な家族内軋轢と世界紛争を結びつける“セカイ系”にも結びつけているところが興味深い。映画企画での上映よりも、きちんと配給が付いて正式に興行しても充分日本では受容れてくれるのではないだろうか。とりもなおさず子供は充分楽しめると思う。“ハウルの動く城“的なガジェットも、パクリではなく、あくまでもオマージュとして面白いし、その他いろいろなジャパンアニメ要素が、フランス式解釈として埋め込まれているので、飽きずに愉しめる、大変有意義な鑑賞時間であった。尚、フランスならではの熱いベーゼや、それに伴う涎液の交換等の大人のジョークも又、クスッとさせるウィットとしてオシャレなのである。
製作国: フランス・カナダ・ベルギー合作
この作品は、多くの映画評論家から支持を受けていて、たとえば、ピューリッツァー賞 ニュース速報報道部門にノミネートされたことのある日刊紙、Arizona Republicの話では、「この映画は視覚的喜びであり、小気味よく、興奮させらるほど素晴らしく一風変わったアニメーションでフランスのスチームパンク的冒険活劇である。」ここで取り上げられているスチームパンクの世界観は、例えば、日本のアニメーターである宮崎駿監督やアニメの実写化をした「キャシャーン」でもみられるスチームパンクで、また現実世界とは違う歴史観を想像した、いわゆるスペキュレイティブ・フィクションの世界を表現している。ただし、本作を見ているものが、すんなりと受け入れられるかによって、評価が変わってくると思われる。
シナリオ自体は、ここで登場する未来の世界を変えるアイテム“serum”の製造をめぐる攻防を描いているのだが、その設定に偉大な世界の科学者が姿を消し、文明がストップをし、石炭でしかエネルギーを使えない世界になるって、作者の方は、世界の科学者が、偉大な科学者だけで支えられていると思っているのかという疑問にぶち当たってしまう。あくまでも個人の意見として、多くの名もない科学者によって、文明は支えられていると思うけれども、この映画に対して、公言すると、なんてつまらないことを言うんだとか、話の腰を折るなと言われそうだが.......?
このサイト、映画,comの説明不足は多々見られるが、なぜフランスとカナダが共同生産国になっているか、重箱を突くようで申し訳ないが、世界規模で展開するには、やはり英語の吹き替えも必要になり、実際にこの映画では英語版では、多くのカナダ人俳優が、吹き替えを担当し、特に母親役のケベック州出身の女優さん、マーシャ・グレノンさんは一人、フランス語も担当されている。しかしながら、この方は、ここでは名前も挙げられていない。トホホ....ッ。
これって、宮崎監督の「ハウルの動く城(2004)」じゃないのという場面も........!? 野暮すぎるか?
全4件を表示