「傑作過ぎやしませんか?(興奮)」見えない目撃者 まつこさんの映画レビュー(感想・評価)
傑作過ぎやしませんか?(興奮)
久しぶりの森淳一監督作品!
あまりの傑作過ぎて言葉を失った。
「Laundry」「重力ピエロ」「リトル・フォレスト 夏・秋」「リトル・フォレスト 冬・春」を撮った監督と言えば日本映画がそこそこ好きな人なら、そりゃあ期待大となってしまうそんな監督。結構常軌を逸する作品を生み出す人。
「見えない目撃者」も始まって数秒でもう傑作だと分かってしまった。結果的に、まぁこれも面白いの一言を言って良いのかわからん作品だけど、めちゃくちゃ面白い作品でした。ストーリーもキャラクターも展開・状況・社会性の取り入れ方とかエンターテイメント性とか人間ドラマとかとかとか…。
まず良い映画が全てこの条件に当てはまると思うけど、一人一人の登場人物が、「主人公」「たまたま出会った青年」「刑事1」「刑事2」…という感覚で見てしまうのではなく、「浜中なつめ」「国崎春馬」「木村友一」…と、それぞれの人生を送ってきて今この職業や生活をおくる人達、と、みんな1人の人間たちとして見れるようにところ。この条件が満たされてて魅力的な映画としての土台が完璧。
そして私は刑事ものがさほど好きではないのですがその理由のひとつに、というかあまり好きではない刑事もの作品のひとつに、どこかで見たようなありきたりな展開やキャラクターやセリフをごちゃまぜにして「事件ものが好きな人達はこんなんが見たいんでしょう」と押し付けてくる作品があるけど、そういうの見たくない。そしてこの作品はそれに当てはまらない。完全な刑事ものではなく、主人公の経験値や過去、レベルや状況などを把握した上で展開されていくのでただ観客を恐怖に陥れるだけのサスペンススリラーではなく人間ドラマの上で成り立っている刑事ものだから好きなのかもしれない。展開もひとつひとつゾクゾクするし、これは同監督作品の「重力ピエロ」も少しベクトルが似てる、あとは李相日監督の「怒り」などにも似てるかも。
主人公が遭遇した事件の後に次々と知り合って行くキャラクター達も、「この主人公がこの人達と知り合っていくとその後はどんな話の展開になっていくんだろう?」とわくわくしていくような人間味のある人達が多い。しかしその分展開によっては悲しみが倍深くなる。それもある種、「ただ"人が死ぬ"という展開に対しての涙」ではなく「"この人物が死んでしまう"という涙」に繋がるから、前者のような展開を売りにしているお涙頂戴系の失敗作版のような映画にもなってないから凄い。(私はお涙頂戴系の映画が嫌いではなく、それを上手く描けていない失敗作が嫌いなだけです。"人の死"という人生で1番重たい題材に対して失敗してしまうのなら、一生明るい映画だけ撮ってればいいのにと思ってしまうから)。そう言った意味で森監督は上手いと思ってしまった。
ちょこちょこ入れてくる笑える部分も、内容が重たいだけあって劇場内の観客達からの笑い声はほぼ聞こえなかったけど、森監督らしさが出てて良かった。キャラクター達の可愛げのある部分が愛おしさも感じられた。魅力の1つだと思った。
キャストの人達も皆んな良かった。このキャスティングで本当に良かった。
なんか本当、素晴らしい映画だった。久しぶりに映画観てこんなに終始しぬほど泣いた。周りの人に迷惑かからないように試行錯誤して号泣した。
大好きな作品がひとつ増えました。