劇場公開日 2020年8月14日

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「爽やかで瑞々しい4人の青春をまとめた演出と脚本が素晴らしい。おススメな良作です」思い、思われ、ふり、ふられ ミラーズさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0爽やかで瑞々しい4人の青春をまとめた演出と脚本が素晴らしい。おススメな良作です

2020年8月15日
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鑑賞方法:映画館

同じマンションに住む女子高生、夢見がちでおとなしい 由奈と明るく積極的な山本朱理は、ある出会いを切っ掛けに友人となる。

二人にはそれぞれ、映画好きな幼馴染の乾とクールで血縁のない弟の山本理央が間近にいる。

由奈は理央に一目惚れして彼を好きなる事で前向きなに変わってゆく。

朱理は、乾に惹かれるが、何処か素直なれない。

一年に渡る4人の恋の行方を、に明るく爽やかに、オーソドックスで説明的にならずにまとめた、演出と脚本が素晴らしい。

コミックが12巻ある原作を124分にまとめている為、4人の心境を、モノローグで説明しているところもあるが、大半は演出・演技で示されて淀みなく進み、極端に劇的な展開とか大声で泣き叫ぶ場面ないのは、好感が持てる。
たまに原作にないドロドロ展開や解釈を追加してしまう作品もあるので。

前半は、春の雨を背景に語られる戸惑いと告白、すれ違いの夏祭りと文化祭が、きっかけでのお互いの気持ちに気付く辺りの自然さがとてもよい。

主役男子二人が、『マッドマックス 怒りのデスロード』で意気投合する場面は、ボンクラ感も含めての好感が持てるのと、二人の異性への意識を垣間見る事が出来る。
『マッドマックス 怒りのデスロード』の持つシンプルでオーソドックスでパワフルな映画構造と今の女性へのメッセージと共鳴を、監督が示したかったのだろうと推測する。

何故なら『マッドマックス 怒りのデスロード』は女性キャラクターの造形にあたって現代フェミニズムの作家イブ・エンスラーをアドバイザーにしている。
女性を物扱いする権力者に、立ち向かう女性達と過去に女性を救えなかった贖罪を抱えるマックスの物語なので、今女性を描くなら考慮しなければいけない作品。

主役男女4人ともに、キャラクターを掴み演出意図にも的確な演技で応えて、オーソドックスな物語に輝きと力強さを与えている。
特に朱理が、初めて乾に会うところの視線の演技演出は、上手いと思う。ここで無意識のうちに惹かれていると思えるから。

中盤のクライマックスになる文化祭の雰囲気がエキストラ達の扱いやチョットした美術と小道具も含めてとても良く出来ている。

気になるところは、文化祭の時に現れる朱理の元彼が、後に影響を与える台詞を放ちそのまま消える便利キャラで唐突感が強い。

進行上仕方ないのかもしれないが、偶然目撃しちゃったパターンが割とあるのと、親が殆ど背景なのは、不自然な印象。

些細な事だが、部屋で勉強してる時や図書館の場面は、照明が雰囲気ライティングで、普通に考えると手元が暗くて勉強し難いと思える。

撮影全体は、とても良くて、高台の街並みも魅力的。
撮影の柳田裕男は「ちはやふる」シリーズ知ったが、被写界深度の浅いボケ味の強い絵を多用して個人的には、やり過ぎな印象だったが、今回は、適度な距離を保ている。

繰り返しになるかとですが、爽やかで瑞々しい4人の青春をまとめた三木孝浩演出と脚本が素晴らしいので、おススメな良作です。

ミラーズ