劇場公開日 2019年7月27日

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「顔のない人物画」パラダイス・ネクスト ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5顔のない人物画

2019年7月31日
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割と絵を観に美術館に足を運ぶ方だが、顔のない肖像画で思い出すのはルネ・マグリッドくらいだ。
調べると、心理学的考察として、顔のない人物画を描く子供は、孤独であることが多いようだ。
シャオエンの描いた顔のない肖像画の顔をイメージしようとしても、決して楽しそうな、幸せそうな表情にはならない。
この絵に強く惹かれた牧野も、この絵を破り捨てるシャオエンも、そして、貼り付けて表情を描き足した島も、それぞれ異なるものかもしれないが、孤独に追われ、孤独を抱え、孤独を住処のようにしていた。

楽園とは一体なんだろうか。
昔読んだ、楽園という小説は、楽園に辿り着くまでがストーリーで、楽園がどんな所だったのか描いてなかったように思う。
実は、楽園とは、そのような所かもしれない。
あるのか、無いのかは分からない。
だが、求めなければ決して辿り着けない。
そして、辿り着いたとしても、そこが楽園かどうかは確かめようもない場所。

この3人にとっての楽園は、孤独のない場所だったのだろうか。
あと一息なのに、近づくと、遠のいてしまう、そんな場所。
笑うことのなかった島が少し笑ったように見えた。
楽園はきっとあると伝えたかったのか、それとも楽園はないんだと自分に言い聞かせたかったのか。
様々な想いが交錯するストーリーだった。

音楽が素晴らしかった。
バイクと自転車の場面は、高揚感のようなひと時の幸福が音楽とともにランデブーするようだった。

最後に、顔のない人物画を描く子供が、必ずしも孤独に苛まれているわけではないとのこと。もっと多面的に分析が必要とされるとのこと。ご理解下さい。

ワンコ
いぱねまさんのコメント
2019年11月22日

コメントありがとうございます。
今作品は、大人の漫画のような感じがしました。一つ一つのカットが大変美しく、情緒もたっぷりで、且つメランコリックでノスタルジー。でも、女優のファッションは現代風の着こなし。乾いた空気感を表現したあの豪邸でののどかさとか短いセンテンスは私も気に入っております。
貴殿のレビュー、大変参考になりました。

いぱねま