キーパー ある兵士の奇跡のレビュー・感想・評価
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不幸な時代を生きた人々の人生を丹念に掘り起こした1作
元ナチスの兵士がイギリスで捕虜となり、収容所でサッカーに興じていたところをスカウトされ、プレミアリーグでスタープレイヤーになる。このまるで、ありそうでなさそうな実話を映画化した本作は、ナチスに対するイギリス国民の憎悪と偏見を好プレーによって跳ね返した主人公の、苦難の道程を詳かにすることで、人は与えられた運命に決して抗うことはできないことを描いている。同時に、戦争で犯した罪の重さは、長い時を経てもなお、振り払うことが困難であることも伝えている。それは、サッカー選手のドラマチックで感動的な半生に寄り添いながら、この物語に自戒の意味を込めたドイツ映画の懐の深さを思い知る瞬間だ。そして、これが戦争とスポーツを題材にした1級のエンターテインメントに仕上がっているところが凄いと思う。戦争を絶対に美化せず、不幸な時代を生きた人々の人生を丹念に繰り返し掘り起こすこと。それが映画に与えられた使命だと改めて痛感させられる作品である。
大衆の心を動かすスポーツの力を示した実話
劇映画でサッカーを描く際、キーパーは案外良いポジションであることを本作が証明した。現実の試合ではストライカーや攻撃を組み立てるミッドフィルダーが注目されるが、俳優が流れの中で妙技を再現するのは難しい。その点キーパー役ならある程度の特訓で、際どいシュートをジャンプして弾いたり、ドリブルや浮き球に体を張ったりと、断片的な好プレーをカット編集でテンポよく見せやすいからだ。
元ナチス兵が英プレミアリーグで活躍し国民的英雄になり、敵同士だった英独の平和の懸け橋に…という展開は感動的だが、大衆の心を動かすスポーツの力を如実に示した例でもある。古代ローマの闘技会以来、人間同士が闘う見世物は憂さ晴らしや現実逃避になる娯楽だった。観戦は闘争心に響き高揚をもたらすが、一種の代償行動として暴力衝動や憎悪の解消に役立つ。ただしそうしたスポーツの力は、権力者に悪用されもし、諸刃の剣であることを忘れるべきではない。
彼の人となりが受け入れられた
終戦直後のイギリスにおいて、最初はナチスドイツの兵士という「属性」でしか見られていなかった主人公バート。しかしサッカーチームにおける活躍やその人となりが認められて、イギリス人と変わらない仲間として受け入れられていく。サッカーチームの勝利を祝う会で、チームメイトがバートへの餞別を送る姿はそれを象徴していた。ナチスドイツの元兵士だとか、外国人だとかそのような属性を全て無視して、バート本人を仲間として扱う姿に感動した。同じ目標を共有し、一丸となって何かの達成に向けて邁進する行為は、互いの人間性を知る上でとても有効なのが分かる。
イギリスの有力なサッカーチームの選手となったバートが、元ナチスドイツの兵士だと分かると、世間からかなりの批判を受けることになる。第二次世界大戦を引き起こし、ユダヤ人の大量虐殺を行ったナチスドイツの兵士なのだから、かなりの批判を受けるのは分かる。しかし彼は一介の兵士であり、ただ命令されたことに忠実に動いていただけだろう。にもかかわらず彼を追い詰めるのはいかがなものかと思った。
ドイツの捕虜ゴールキーパーの実話。 サッカー観戦していると、ドイツ...
サッカーに捧げた人生、勲章より重き者
ナチス兵だったトラウトマンが、イギリスで
サッカー、キーパーの才能を見抜かれて
周りの批判、バッシングにも負けずに
大成していくストーリーでした。
トラウトマンが愛した女性、マーガレットは
敵である国の人だった!
マーガレットの父親は理解を示してくれたけれど、世間から冷たい目で見られながら
懸命に生きる人間ドラマでした。
籠の中の小鳥。
小さい子どもを可愛がる、優しい青年だった
トラウトマンと、情愛の深さがあった
マーガレット、惹かれ合う2人に
国や育った環境が違っても、相手を尊重する気持ち
が感じられました。
サッカーの試合中、起きた事故で首を損傷したときは、絶望的な気持ちになりました。
勝った試合の後に道路にボールが
転がっていくときに起きた事故。
海辺の砂浜で楽しく過ごした想い出が
よぎると溢れそうになる涙を堪える
マーガレットに、悲しみを乗り越えていく
勇気をもらいました。
墓場に眠る家族。
緑の自然の大地。
戦争で起きた罪は消えないけれど
過ちを許し、必死に生きる姿に深く
感銘したストーリーでした。
事実とは結構違う
マンチェスター・シティの伝説的GK、バート・トラウトマンの伝記的な作品ですが、事実と結構違っていて混乱しました。
・収容所でプレーしていたことはほぼカット。
・もともとGKではなかったのになあ・・・。
・お店で働くではなくて農場で働いていた。
・伝説のFA杯決勝での出来事から大怪我だと判明するまでの時間差
など。見ながら、「あれ?そうだっけ?」と引っかかるところが結構ありました。
とはいえ、フィクションと思えば悪くはないのですが、大怪我からの出来事から以降の作りに関してはグダグダ過ぎてつまらなくなりました。怪我からの復活~活躍をもっとやってくれても良かったんじゃないかと思いますけどね。
試合のシーンは出来が悪すぎて話になりませんので星は2つです。
期待が大きかった作品だけに余計に残念でなりません。
戦争中、戦後もイギリスで活躍したドイツ人ゴールキーパーの実話
2018年(イギリス/ドイツ)監督はドイツ人のマルクス・H・ローゼン
とても良作だと思います。
第二次世界大戦後のイギリスで活躍したドイツ人ゴールキーパーの実話です。
《スポーツに国境はない》
《スポーツはかつて敵国だっ人々も、絆で結ぶ》
そんなことを改めて感じる作品でした。
勝利の美味を味あったら、パート・トラウトマン(デビッド・クロス)が、イギリスの敵国ドイツの兵隊で、捕虜としてイギリスに来たことなんて、ちっぽけなこと!!
(いえいえちっぽけと思えない人も沢山居たのです)
スカウトされた一部リーグのマンチェスター・シティFCでは、大々的な反対運動が起こります。
「ナチスにゴールを任せるのか!!」とか
「ドイツ野郎、国へ帰れ!!」とか、10万人のデモが起こるほどでした。
しかしパートはゴールを死守する守護神として、反対派の心をほぐして行きます。
ユダヤ人のラビ協会からも、彼を認める声明が出されます。
後に妻となったマーガレット(ブライア・メイバー)も勇敢でした。
結婚することじたいが多くの障害があった筈です。
けれどマーガレットの父親はバートを一番に見出した地元サッカーチームの監督だったのです。
マーガレットとバートは惹かれあい愛し合うことに。
パートを演じたデビッド・クロスは2009年作の「愛を読む人」の主役の少年でした。
30歳になった今、昔の面影そのままに残す彼は素敵です。
戦時中のトラウマに悩むバート。
そして突然襲う不幸。
しかし、ゴールを守り続けたバートは国民的英雄となり大英帝国勲章を授与されます。
イギリスとドイツの架け橋となったサッカー選手の彼は、
イギリスとドイツのサッカー殿堂入りの選手にもなりました。
チームメイトは彼を「真の紳士だった」と称えています。
古くは ゼップ・マイヤー、近くは オリバー・カーン、ノイアーと ド...
おもしろかった、
戦争の遺恨
スポーツに国境はない
まあ実はに多少の脚色を入れているようですが。
何より興味深かったのは、その舞台背景。
降伏したドイツの捕虜兵が、収容先のイギリスで「キーパー」でスカウトされること。
ここまで「降伏したドイツ」を強調しているのは、私初めてかも。
抜群の腕を持っているけど、戦争で家族を失った地元民は応援したくない。
そこをどう引き付けるかっていうのが前半1時間。
後半はマンチェスターに引き上げられた主人公が。
またもや「元ドイツ兵だから」と非難轟々。
乗り越えてガッツポーズかと思ったら、その後主人公の家族の悲劇や心の闇。
その辺が戦争が終わっても、いつまでも引きずっている。
切ないという言葉では足りない気持ちが、残りました。
エンドロールで主人公はその後どうなったのかが書かれていて。
そんなすごい功績を残したのかと、心打たれました。
⭐️今日のマーカーワード⭐️
「一致団結、それが力だ」
真摯に生きる姿は、時代や民族を乗り越えるのだ‼️❓
2本立て2本目。ドイツ人捕虜が敵国イギリスで英雄に。 主人公の恋人...
憎しみを取り払おう
戦争は終わっても。
マンチェスター・シティの熱狂的ファンと言えば、オアシスのギャラガー兄弟。特にノエル・ギャラガーの熱狂ぶりは有名です。よって劇中歌はノエル・ギャラガーw
英国のみならず、欧州各国の対独感情は、今も好ましくありません。ドイツ側も、対仏・英・露となるとキレてますもん。これサッカーの話です、主に。ゆえに、欧州選手権の盛り上がりは、ワールドカップの比じゃなかったりします。仕事仲間でも、EUROの間は口ききませんからねw
WWⅡの直後。チームにドイツ人を迎え入れたオーナーの非常識、と言うか先見性、と言うか博愛主義、というか打算。戦争は憎めども、人は憎まず、と言いたいところだけど、いや、分かっちゃいるけど、許せずに割り切れない想いを抱える人々。妻子を空襲で失ったスマイス軍曹。「俺に権限があれば...」。分かります、その気持ち。
サッカーを橋渡しにして恩讐を乗り越えて行く人々の物語なんですが、不思議とフツーで、それほど感動もせず、泣けず。マーガレット役のフレイア・メイヴァーの美しさばかりが印象に残る、ほんとにフツーの映画でした。
乗り越えて行くために必要なのは赦し。他人を赦し、自分を赦し。
こんな逞しさや寛容性は、今の日本には無いよねぇ。
って思いながら見てました。
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