「伏線を読み解けば、教養方面の奥深さに触れられる」キーパー ある兵士の奇跡 ピラルクさんの映画レビュー(感想・評価)
伏線を読み解けば、教養方面の奥深さに触れられる
伏線のまとめかたがすばらしい。こんなに見事だなぁと感心させられたのは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を最初に観たときと同じぐらいか。そのとき脚本家は誰だ?と気になって憶えた名前がロバート・ゼメキス。以降、この名前に注目したが、すぐに注目しなくても目立つようになった。
本作では監督さん(マルクス・H・ローゼンミュラー)が脚本もこなされている。長くて憶えにくいが憶えておこう。
ネット上に監督さんへのインタビューがあった。いつまで視聴できるかわからないけどこちら。
TBSラジオ『荻上チキ・Session』10月23日(金)「Main Session」
特集【映画で考える戦争と和解】「元ドイツ兵がイギリスの国民的サッカー選手に!映画『キーパー ある兵士の奇跡』が描く戦争と和解とは?」
https://www.tbsradio.jp/530497
緻密で論理的な監督さんだと分かる。
上の番組では作品に対して学術的な視点で切り込んでいる。政治・社会学・歴史に哲学もからんで、難しい映画の印象をうけるけど、すんなり入っていける物語である。シーンはそれぞれ明瞭だし、ストーリーもシンプルである。ゴールキーパーという役目が分かりやすいことも幸いというか、一役買っている。物語的な娯楽度の高さと教養方面の奥深さ、両方備わっていることが作品の魅力を大いに高めている。
奥深いといえば、ひとつ。イエスとノーの言語のちがい。私には解けなかった伏線だ。これはラスト近く、海岸沿いだったか、夫婦が子供の喪失について語り合うシーンで重要な働きをした気がする。あそこには字幕では表せられないサスペンス的戦慄があったように思われる。ドイツ語と英語の両方に堪能になればわかるかもしれない。
と書いていて気付いた。伏線というのはただあるだけでなく、それを読み解けば、学術的なひろがりを感じ取れる誘導線にもなっている、ということが大切なんだと思う。