燃ゆる女の肖像のレビュー・感想・評価
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画と音の圧倒的な美
燃ゆる女の肖像-今年ベスト級の映画に出会ってしまった。全てのシーンが絵画のように美しい圧倒的な画の力…(冒頭の暖炉の前で煙草をふかすシーンから一瞬で虜にさせられる)そこに与えられる甘美な音の表現がまた凄い。キャンバスをはしる筆の音、暖炉で薪が燃える音、家具や床の軋み、蝋燭や煙草を灯す音、パンとワインを食する音、刺繍の針と糸が布を通る音、風や波の畝り、息遣い、瞬きの音すら聞こえてきそう…そんな静けさの中に響く無数の音に誘われ没入していく。それらの音が音楽へと変わる限られた場面では彼女達の感情の隠微が現れ、二人の心が燃え上がる瞬間に流れ出す歌はそれまでの静寂を打ち破る、緩急という言葉ではおよそ片付けられない鮮烈な、鳥肌が立つシーンだった。そして彼女らの眼差しとスクリーン越しに目が合う瞬間、じわりと身体の奥底が熱くなるのを感じた。息をのむエンディングはcall me by your nameのそれと並び称したい。大げさじゃなく全人類に見て欲しい傑作。
2020年ベストムービー!⭐️⭐️⭐️⭐️✨
村の祭り?(村の集会?)のシーン、エロイーズの服に一瞬火が燃え移り、美しく燃え上がります…とても官能的な場面でした。そして、まるでホラー映画みたいなコーラスから(笑)、美しい歌声へと変わっていくシーンは、ちょっと鳥肌ものでした(オリジナル音楽だそうです)。
監督の細かい演出…息遣いや表情の変化など、心理描写が上手く、なかなかドキドキさせられました。
とても印象深い作品でした…オススメです!
画は綺麗で尤もらしいが。
中盤で物語が動き出すと急に緩む。不穏で哀しげな序盤は楽しんだが。描き描かれ撮り撮られる不気味ならダゲレオタイプの女に、同性の愛の熱と虚脱なら櫻の園に軍配。臨時家庭教師の性の手ほどきの書式で深い愛を語るのは土台無理。画は綺麗で尤もらしいが。
日常の音を再認識した
うわーーーっというエロシーンはありませんでした。(安心) 波の音、人の息、軋む床、BGMがなく生活と自然の中にある音にとても敏感になる作品でした。 映像も素朴感の中に際立つ美しさが切り取られた瞬間が多かった。素晴らしかった。 登場する女性の生き方が、時代に逆らわない(逆らえない)部分がリアルで良かったです。 作品の終わり方が色々と考えさせられるので、余韻が残りました。 決断!!!の表情が素晴らしい。 静寂のシーンが多いので、ポップコーンを食べ切るのに苦労しました。(汗) あと突然の映像にビクッとして、むせ返った時は大変でした。マスクの中にポップコーンが。。。 美術鑑賞みたいな作品。 世界観を堪能しました。
一瞬一秒、息も出来ぬ圧倒的な美しさ
「ため息も出る美しさ」という表現があるが、この作品はため息すら許さない美しさ。 ・2人の気まずい沈黙の空気から手の届かない官能的な空気感。 ・登場人物を観察するかのような長回しカメラワーク。 ・島の風景とその空間の撮り方。 ・波の音、民族音楽、オーケストラ(ヴィヴァルディ)など映画館の音響を引き出すサラウンド。 その全てが研磨かれた圧倒的な美しさ。 この映画はとても淡々な展開し、とてもあっさりと幕を閉じる。 観客側としてはこの映画が創り出す「手の届かぬ儚さ」という美しさにもっと浸っていたかったのだが、とてもあっさりと終わってしまうのだ。 展開だってそう。 全てはこのシーンの為に!という普通ならベタ演出で観客を泣かせるような大切なシーンもなんの飾っけもなく淡々としている。泣かせる気もない。 しかし、そこにこの作品ならではの「美しさ」がある。 暗闇の劇場の大スクリーンで映画を観るという行為に付きまとう虚しげな感情。 ーすぐそこにあるのに手が届かない この悶絶にも似た感情を観客に爆発させる美しさと官能。 そして、追い討ちをかけるのがこの「あっさりと終わる」だ。 『バードマン 或いは…(略)』でも表現されていたあくまでも日常の延長線上にあるストーリーで現実味が増すし、感情移入もしやすい。 この映画鑑賞の副産物とも言える感情を引き出すように創られた繊細で綿密な脚本でした。 カンヌ国際映画祭脚本賞も納得。 最初は「燃ゆる女の肖像の美しさに萌えた!」みたいな感想を書こうとしたけど、正直な感覚とは違ったのでやめた。 萌えなかったし。でもこの映画を生み出した監督の才能に対する嫉妬心は燃え上がりました。 ああ… この映画はこれからもっと観ていきたい。(見事、作品の罠にハマってる)
取り残されました。
なんというか、全く感情移入出来なかったんですよね。すべてが“嘘”に見えるというか…。 共感出来なかったから、ですかね? (もう途中からお遊戯にさえ見えてきて、「勝手にしてくれ…」という気持ちにまでなってしまったのは、私が悪いですかね…) あと、ここまで音楽が無いのも珍しい。 劇中曲の大切さを思い知る。 もちろん、波の音とか、小鳥のさえずりとか、暖炉の音とか、息遣いとか、美しいとは思うんだけどそれじゃないというか…。 いつか観た「ロニートとエスティ」という映画のことを思い出してしまって、また観たいなあと考えちゃってました。 年内にもう一回見ようっと…。
〇〇新聞の映画評であまり出ない星5つだったので、とても期待して観に...
〇〇新聞の映画評であまり出ない星5つだったので、とても期待して観に行ったけど‥自分にそっち系の要素がない上に、女性2人が好みのタイプじゃ無かったので(ちょっと逞しい感じが…自分ツッコミ、オヤジか⁉︎)なんか入り込めなかった。ラストは良かったな。
恋愛映画に惹かれたことはなかったが
繊細な表現にこころふるえる。 打ち寄せる波、木の床をコツコツと近づく靴、走るスケッチの鉛筆。そして突然響く音楽。祭りの女たちの唄、ヴィヴァルディ。 見ることと見られること。追憶を表現するものと、現在を生きていくものの別れ。
映画史に残るクライマックス
今年のベストワン。さまざまな暗喩に満ちた神話の世界。表層的には肖像画家が貴族令嬢の結婚用肖像画を描く仕事を通じて恋愛に発展、絵の完成とともに別れが来るという時限的な残酷な愛の悲しみ、という本筋。しかしその裏側に監督が仕掛けた裏テーマをどう読み取っていくか。ハリウッド映画ではまず不可能な、鑑賞後に仲間と解釈の意見を戦わせることができる久しぶりの「討論用の映画」でもある(「ミッドサマー」以来かな)。
ともあれ、物語の舞台をどう解釈するかから始まる。一枚の絵の登場で回想に入って、本筋が始まる。メインの物語はすべて過去を回想しているもの、という前提を忘れてはいけない。
画材とともに海を小舟でわたり、絶海の孤島にある貴族の館へ向かう画家。途中、海に落としたキャンパスを冷たい海に飛び込んで拾い上げる彼女のエピソードは何を暗喩しているのだろう。途中語られるオルフェの物語、小間使いの堕胎、村の女性たちの祭での歌声、姉の死の真相、ヒロインの母へのルーティン行動、唯一ラスト間際に食堂で男が食事をしている描写、すべてに意味をもたせているような描き方。現世にいる画家、海を渡ることによって彼岸へ行き、肖像画を描き、そのモデルを愛し、しかし完成とともに再び海を渡って現世へ戻る。そんな解釈をさせる象徴的なシーンが館を去る時にヒロインが画家を呼び止め振り向かせるくだり。あたかもオルフェのクライマックスのように。
スクリーンに映されるのは、静かな平坦このうえないドラマが粛々と進んでいくように見える作品だが、そこには膨大な情報=意味が詰め込まれて、観客を圧倒していく。
その後の出会い、一回目の再会の静かな感動に観客は溜息をもらすだろう。そして二回目にして最後の再会は映画史に残るクライマックスだと断言できる。そこではヒロインのアップが数分間長回しされる。その圧倒的な演技に、ここまで見続けた観客の心を締め付け、息を止めさせ、うちのめす。
終始、美しさに息をのむ。
劇中に演奏・歌唱シーンが少しだけあるもののBGM をいっさい挿入しない演出が素晴らしい。その静けさと映像の美しさに終始息をのんでしまいます。 圧巻は作品の余韻が残る無音のエンドロール。たしかにこの素晴らしい作品にヘタに音楽を流してしまっては台無しになってしまいますもんね。 主演のふたりの、表情で心情を語る演技も秀逸でした。 ベースは恋愛映画ですが、その芸術的なアプローチは観るものの感性を刺激しまくる傑作だと思います。 (この映画を観る時の注意点) とにかくずっと静かな映画ですので、ポップコーンは控えたほうが良いかと思います。
絵画を映像にした芸術映画
映画館にあるチラシを見てこの映画を見ました。 娯楽映画というより芸術映画でした。なので面白いかどうかというより、百合や女性の裸を美しく魅せている。 個人的に印象に残っているシーンは最初に主人公の女性が暖炉の前で裸で体育すわりをしながらパイプを吸うシーンが印象的でした。 女性画家と貴族の娘の報われない恋を官能的で切なく、最後には情熱を通り越して怒りを表しているようにも見えた。
女たちのものがたり
登場する、それぞれの女たちが抱えているこの時代ならではの葛藤。 それを共感しあい、助け合い、励ましあいながら生き抜く姿が、視線に集約されているようだ。 どの女性が、どんな視線を保ちながら生きているのか。 最後まで見なければ、わからないかもしれない。 こんなにエンドロールが短い映画も、珍しい。 見るのか、見ないのか。 見ずしてどう、伝えるのか。 うまい演出です。 さて、見ます?
オルフェが振り返らなかった先に光はあったか
過去の思い出とどう付き合っていくか。 2人の選択は、繊細かつ清々しい強さに満ちていたと思う。 観終わったあとの余韻が長く心地良い。 悲しい話と言えばそうかもしれないけど、個人的にはむしろポジティブな生命力を感じる幸せな映画だった。 あとたぶんこの映画でポップコーンを食べるのは至難の業です。
音で感動させられました。
映像は綺麗ですが中盤まで展開がほとんどなく飽きてきましたが、後半にかけてドキドキさせられました
音で心揺さぶられました。
焚き火で歌うところはミッドサマーを思い出したw
ところどころホラーっぽい演出(そこまで怖くないけど)
白いドレス?を着た女性はもしかして死んだ姉かな?
双子とは言ってなかったから微妙だけど
コロナの2020年にこんないい作品に出会えるとは
最初この映画を知ったのは予告編だった。鬼滅だったか、何の映画かは忘れたが、どこか強い磁力をこの作品に感じた。何がと言われても具体的にこれっ!というわけではない。正直言って現代でない、時代。それもフランス。これまでだったら見ることはなかったが、見事に心臓を鷲掴みされた。 映画音楽はなく、彼女たちの感情の起伏をその場に居合わせて吸い取ったような感じというか。火が燃えるパチパチという音、ドレスが擦れる音。とにかく目撃者として、この映画を体感した、そんな印象だ。コロナ禍の2020年。あと何本か見るつもりだが、この映画に巡り会えたことに感謝したい。
尊くて美しい
ゆっくりとした独特の会話の間と静寂。思っていたよりも相当に繊細で控えめな表現だった。 横顔、デコルテ、視線、その寄せ付けない様な美しさと微かな心の触れ合いは、最後の抱擁の為に用意されていた。 内側に秘める熱を抑えた抱擁。このシーンに凝縮された想いは尊くて大切に思える。 静寂の中にフワーッと流れ出す民族音楽的なコーラス曲もたまらない気持ちなる。そっと深いところに入り込んで、気持ちを掻き乱すのだ。 どこかで繋がっているという想いは、美しくて永遠だった。
激情をこれでもかと見せるラストに涙が溢れた
舞台は18世紀のフランス。男尊女卑の時代ゆえか同じ画家である父の名前で絵を描き、女性のみに絵を教える女性画家・マリアンヌ。彼女の回想というかたちで物語がスタートした。 孤島の屋敷で暮らす貴族の娘・エロイーズの肖像画を依頼されたマリアンヌ。当時の富裕層にとって肖像画は見合い写真のようなものだったのですね。 見知らぬ相手との結婚に不安を抱くエロイーズには肖像画を描かれることに抵抗があったのだろうが、マリアンヌに心を許しモデルとなった。 美しい島で二人が過ごす濃密な時間。邪魔するものは何もなかった。苦手なジャンルだと危惧していたが心配は無用だった。二人の恋が十分腑に落ちた。強い説得力があった。 それにしてもこのラストシーンはいったい。 マリアンヌが知ることのないエロイーズの激情を我々にこれでもかと見せるアップの長回し。激しく感動した。涙が噴き出した。語られなかった別れてからの時間が頭の中を駆け巡った。
『情感』を堪能。
自己を大きく制限された女性たち。 使われる言葉は最小限に抑えられ、交わされる視線や息遣い、表情で描かれる切ないラブストーリー。 主人公にあれだけ瞳が印象的な女優さんを選んだのは、その視線・視点の変化が雄弁に語ることの象徴の意味もあったのだろう。 人物に限らず、あらゆるカットに様々な想いが込められているのが分かる。 もちろんその意味や意図やメッセージのすべてを私が受け取れている訳ではないのだろうが、その『情感』をたっぷりと味わった。 フランス映画は苦手だったが、ここで描かれた物語の歴史的背景や文化などを知らなくても十分堪能できる。
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