燃ゆる女の肖像のレビュー・感想・評価
全167件中、21~40件目を表示
劇中でオルフェウスの物語の一説を朗読し始めた時、正直そこまでこれが...
色彩構成の緻密な作品
色の構成がどのシーンも美しい。
美しいだけでなく、作品に込められた意図を感じる配色で、絵画的な見どころのある作品だった。
屋敷主の母が本土へ発ち、屋敷に残された3人の女性たちの生活シーンが好きだった。
深刻な事態を抱えながらも和気あいあいと過ごす彼女たちの暮らしに、リアルな女性たちの空気感が漂っていた。
構成の緻密さを感じる反面、前半の画家であることを隠すシーンに無理を感じて、個人的には完成度がアンバランスに思えた。
描いていた肖像画は油絵具だが、油絵具の匂いはかなり強い。
そのため、あの部屋は匂いで充満するし、手や服にも匂いが付く。
カーテンでは防ぎようのないきつい匂い、お嬢様が部屋に入った時点で既に発覚するのではないかと。
画家と深刻そうに明かすシーンに「いやいや、あの状況なら既に気づかれてるでしょ」、信頼を失ったというような反応に「いやいや、匂いで絶対気づいてたやん!!」とツッコミを入れずにはいられなかった…。
細かな設定にツッコミを入れすぎてしまったせいで深刻に見れず、あまり没入はできなかったが、全体的におもしろい作品だった。
映画ならではの独特な世界
いろいろな意味で「美しい」印象が強く残る映画だった。
冒頭すぐから引き込まれる。衣装の鮮やかさ、女優さんの、凛とした美しさ。火が効果的で、光と影の世界にひきこまれるうちに心理的に外界から遮断されていく。登場人物も極端に少ない。ここでは、マリアンヌとエロイーズの母親との会話などによる最低限のあらすじ情報が与えられるだけで、他の雑多なものが一切排除される。
閉鎖的で圧迫感はある一方で、2人の女性(厳密には小間使い含め+αで2.3人くらい?)の存在感が浮き彫りにされてくる。ちょっとした目の動きやからだの緊張感から伝わる存在感の強さ。
いつの間にか二人が惹かれ合うのは当然のことのように感じられ、言葉を介さずに、絵を描き描かれることで魂が触れ合い、ひかれあっていく様は、美しい、とさえ思わせてくれる。
。そもそも人と人が惹かれ合うということは、こういうようなものなのだろう、と考えらさせられる。
映画ならではの方法を駆使して独特な世界を感覚的に見せてくれたと思う。
いい映画だねー
絵画のような映画
説明的ではない
説明は多くないしゆったりしてるんですけど、凄い示唆的というか、まったく隙がない。
ラストの28pの書物のサインは切なかったですね。
ただ新しい、これは見たことがないな、という体験はここにはなかったような。キャロル、アデル、あるいはブロークバック〜にはないものを考えました。時代背景そのものではなく。
美しすぎる映像、音楽、女たち
画家のマリアンヌも、不幸な面持ちのエロイーズも、お屋敷で働くソフィも、伯爵夫人のお母様も、みな非の打ち所がない完璧な美しさ。それぞれに当時の慣習常識により女であることだけで不自由である。画家は自由に旅したりできるのかと思うが父親の名前で作者を発表する。エロイーズは母親が決めた結婚、自らの肖像画を送り相手が気に入れば誰かもわからない相手と結婚する、ソフィは事情はわからないが様々な方法で堕胎を試みざるを得ない。冥府からの妻の生き返りをかけた地上への道で約束を守れず妻を振り返るオルフェ。
絵が完成し別れの時、振り返らないマリアンヌ、振り返って!と叫ぶエロイーズ。マリアンヌが振り返ることでエロイーズは自らを奈落の底へ、この島で束の間の愛と生命、活力溢れる時をマリアンヌと過ごした自分をほうむったのだろうか。
今、それではどれほどの自由を女は手にしているだろうか。
村の祭りで手に入れた、飛べる草
村の祭りで、地が揺れるような女たちの歌声、があっとうてきにすごい。
さまざまな問題提起もあり、しかし完璧に単純に映画として素晴らしい
美しい 深い、
何度も浸りたい世界観
予想以上に良かった!一貫して淡々と流れる物語で、盛り上がりの部分さえゆったりとしていました。
18世紀後半が舞台ですが、宮殿や晩餐会など煌びやかな物は一切なく、衣装や建物がとても地味なのであまり時代物とは感じませんでした。でもこの地味でくすんだ色味がたまらなく良かった…。たまの差し色が映えてとても美しい。
内容で特に良かったのは令嬢エロイーズがどんどん美しく見えてくるところ!もったいつけた後に初めて顔が映った時、正直がっかりしました。カトリーヌドヌーブのような妖艶で華やかな人を期待していたので、ごつくて老けてるなぁと。上品だけれど全く笑わないしそっけないし何の魅力もない、と思っていたのですが、画家のマリアンヌ(エマ・ワトソンに激似)との交流を経てどんどん綺麗に見えてくる。多分、エロイーズに日に日に惹かれていくマリアンヌの目を通してそう映っていたのだと思います。ラストシーンの涙するエロイーズは最高に美しかった!
驚くこともあって、アデル ブルーは熱い色 の時もそうでしたがフランス映画って唐突なシーンが普通なのでしょうか?唐突にヌード、唐突に歌、唐突にモザイク、唐突にキス。エロイーズとマリアンヌが惹かれ合う過程が分からなかったので、突如キスシーンでびっくりしました。また、言葉少なにじーっと見つめるところは、フランス文化に慣れ親しめば理解できるのでしょうか…。ものすごく目で語るシーンが多かったように思います。
LGBT映画というよりヒューマンドラマに感じました。女性同士の恋愛です!ではなく2人の人間の一生忘れられない愛の話。
冒頭に書いた通り雰囲気が抜群に好きですし、ストーリーも良かったので間違いなくもう一度観たい映画。しばらく世界観に浸りたいので、演者さんたちの他の出演作は見れない!
傑作!!!
生者と死者は結ばれない。
詩人オルフェは、死者の妻を生き返らせるよりも、永遠に残る劇的なる場面(芸術)を望んでいる。無自覚に。一方運命を悟った死者ウリディスは、オルフェの望みを叶えるために彼が振り返ることを望む。
画家であるマリアンヌは逞しき生者であり、見る側(オルフェ)だ。エロイーズは冥府に囚われた死者であり、見られる側(ウリディス)。
ただ一度、祭りの夜に燃えるドレス(情熱)を解放したエロイーズは力強くこちらを見ていた。その圧巻の美しさは確かに生者だった。
しかし時代は女が自由に生きることを許さない。
純白のドレスを着たエロイーズの幻影は、冥府に連れ戻され永遠に閉じ込められた死者の姿だった。
別れ際にエロイーズはマリアンヌに言う。「振り返って」と。私には「生きて!」と聞こえた。
だからラストの、決してマリアンヌと目を合わせまいとするエロイーズの覚悟に泣けた。
あなたは生者として生きる。あなたは「見る側」だから。私は冥府に囚われた「見られる側」。だから決してあなたを見ない。それが愛する人と運命を分かつということ。
…それにしても、3人の暖炉の前の食事や食器、暮らしぶりの「音」が魅力的だった。木炭のデッサンの音にも興奮した。女たちの合唱しかり。ビバルディしかり。
生者の世界が視覚であることに対して、目に見えない永遠の世界は聴覚でできているようだ。
ブラヴォー!!!
18世紀ブルターニュ。
望まない結婚をさせられる貴族の娘と、その肖像画を描くよう依頼された女性画家。
被写体と画家、見つめ合う内に愛が芽生える。
ストーリーの大まかな骨組みとしては決して目新しくないけど、当時の画材や技巧で描かれる絵画一つとってもそこに専門家の目があることが分かる。
そうやって当時の生活を丁寧に描くことで、恋愛対象は男の私ですら深く入り込みラスト「振り向け」と強く願った。
オルペウスの物語が後半で母と子の肖像画で回収され、拙いピアノのヴィヴァルディが最後にオーケストラとなって感情の高鳴りとリンクする。など、しっかりとした骨組み。
なんという素晴らしい脚本!映像だけでなく、スートーリーも完璧に整っていて美しい。
会話でなんでも説明してしまう作品が多い中、
久々に観客を信じる「映画」に出会った。
嬉しい。
当時の女性が生計を立てる職業の一つが肖像画描き。
けど美術史には名前がほぼ登場しない(映画の中では父親の名で描いてる)。
必然的な恋と、余韻
18世紀ヨーロッパ。孤島のガールズラブ。
そこには自立した強く美しい肖像画家の女性と、孤島に幽閉される貴族の娘の、ひと夏の
ハーレクイン・ロマンスがあります。
真の芸術とは、こんな甘っちょろい映画を指さないと思うのが自論です。
2020年(フランス)監督・脚本:セリーヌ・シアマ
カンヌ国際映画祭で脚本賞とクィアパルム賞をW受賞。
(クィアパルム賞とはLGBTやクィアをテーマとした映画に贈られる賞)
18世紀のフランスのブルターニュにある小島。
貴族の娘エロイーズを嫁に出そうと、母親はミラノの見合い相手に肖像画を
渡す必要があった。
選ばれた女性画家のマリアンヌは、小さな手漕ぎの船に乗り孤島を訪れる。
望まぬ結婚を控えるエロイーズはナーバスで、以前男の肖像画家に、一度も顔を見せなかった過去がある。
素性を隠したマリアンヌは、エロイーズを観察して肖像画を完成させるが・・・
エロイーズに「この絵は嫌い、私ではない」と拒絶されてしまう。
激怒したマリアンヌは肖像の顔を黒く汚してしまう。
《肖像画の描き直し》
エロイーズの母親は自分の5日間の留守の間に、肖像画の描き直しを命じるのだった。
ここからはエロイーズとマリアンヌが急接近します。
音楽や文学に飢えているエロイーズに、マリアンヌは頼もしい自立した教師。
マリアンヌがチェンバロで奏でるヴィヴァルデイ協奏曲第2番ト短調「夏」
この一瞬のメロディが美しい!!
マリアンヌはエロイーズにとっては、パリの都から来た美術・音楽・文学の師!!
この時代の女の芸術への渇望が痛いようです。
母親の不在の開放感に、心も身体もひとつになるエロイーズとマリアンヌ。
この描写が百合(ガールズラブ)なんですねー。
「一夏のアバンチュール」
女性映画の王道です。
ブルターニュの孤島の貴族?
貧乏貴族?
よそ行きのドレスは緑が、たった一枚。
父親不在・・・(ここも、いかにもの、女性映画)
ほぼ4人の出演者の映画です。
ラストの方で、島民たちの焚き火のシーンがあるのと、
ラストのラストでミラノのオペラ座が写るシーン以外は、
エロイーズの母親、お手伝いのソフィ、そしてマリアンヌとエロイーズの4人の登場人物。
舞台劇みたいです。
撮影もブルターニュの孤島を使い、絵画のようなショットが散見されます。
肖像画も美しいのですが、マリアンヌの絵をレンブラントやフェルメールの肖像画と較べるのは酷というもの。
マリアンヌがチェンバロで奏でたヴィヴァルディの「夏」がフルオーケストラで盛り上げる
ラストは、ちょっとほだされます。
主役のマリアンヌのノエミ・メルランとエロイーズのアデル・エネルが、毅然としてとても美しい。
(アデル・エネルはセリーヌ監督の元パートナーだったとか)
美しい映画です。
しかし、大の大人が観るような本物の芸術作品とは到底思えません。
多感な若い女性には、結構愛される映画なのかもしれませんね。
是非
「ピアノレッスン」や
「ブロークバック・マウンテン」の火傷するようなラブストーリーを
ご覧ください。
絵画みたい
#33 ギリシャ神話か日本神話か
『パリ13区』メインキャストの1人が主演しているとのことで観に行った。
そしてやっぱりノエミ・メルラン氏が美しい。
家の主人であるお母さんがいなくなると、画家も娘もメイドも身分関係なく楽しく過ごす風景が新鮮だった。
身分を重んじるこの時代に本当にこんなことがあったのであろうか。
あと堕胎の仕方がなんだかフランス的。
それはさておき映画の中で出てきたオルフェの物語、どこかで聞いたことがあると思ったら日本神話の『イザナキとイザナミ』のお話じゃないですか〜。どっちが先なの?
肖像画
全167件中、21~40件目を表示