「傑作!!!」燃ゆる女の肖像 Raspberryさんの映画レビュー(感想・評価)
傑作!!!
生者と死者は結ばれない。
詩人オルフェは、死者の妻を生き返らせるよりも、永遠に残る劇的なる場面(芸術)を望んでいる。無自覚に。一方運命を悟った死者ウリディスは、オルフェの望みを叶えるために彼が振り返ることを望む。
画家であるマリアンヌは逞しき生者であり、見る側(オルフェ)だ。エロイーズは冥府に囚われた死者であり、見られる側(ウリディス)。
ただ一度、祭りの夜に燃えるドレス(情熱)を解放したエロイーズは力強くこちらを見ていた。その圧巻の美しさは確かに生者だった。
しかし時代は女が自由に生きることを許さない。
純白のドレスを着たエロイーズの幻影は、冥府に連れ戻され永遠に閉じ込められた死者の姿だった。
別れ際にエロイーズはマリアンヌに言う。「振り返って」と。私には「生きて!」と聞こえた。
だからラストの、決してマリアンヌと目を合わせまいとするエロイーズの覚悟に泣けた。
あなたは生者として生きる。あなたは「見る側」だから。私は冥府に囚われた「見られる側」。だから決してあなたを見ない。それが愛する人と運命を分かつということ。
…それにしても、3人の暖炉の前の食事や食器、暮らしぶりの「音」が魅力的だった。木炭のデッサンの音にも興奮した。女たちの合唱しかり。ビバルディしかり。
生者の世界が視覚であることに対して、目に見えない永遠の世界は聴覚でできているようだ。
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