「丁寧に描かれた前半からの終盤の畳み掛けが見事」燃ゆる女の肖像 といぼ:レビューが長い人さんの映画レビュー(感想・評価)
丁寧に描かれた前半からの終盤の畳み掛けが見事
映画ファンの人からかなり高い評価を受けている本作。観たいと思ってたんですけど公開当時は地元の映画館で上映していなかったため観ることができず、最近立ち寄ったTSUTAYAのレンタルの棚で見掛けたので鑑賞いたしました。
敢えて情報を入れないようにしていたので、予告編やあらすじも知らない状態での鑑賞です。
結論ですが、いやー、面白かった。
日頃から「何でもかんでも登場人物に台詞で状況説明させるな」って思っていたんですけど、本作は非常に台詞が少なく、演技や演出で状況説明する映画でした。こんなに台詞も少なく、カットの切り替わりも少なく、役者の演技を堪能できる映画は久々に見た気がします。しかしそれ故に映画を観て登場人物の心情などを理解するのに集中力が必要で、観終わった後はドッと疲れが出てきました。体力に余裕がある時に観る映画です。
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画家であるマリアンヌ(ノエミ・メルラン)は、ある貴婦人から娘のエロイーズ(アデル・エネル)のお見合いのために肖像画を描いてほしいと依頼を受け、孤島の豪邸に招かれる。結婚を嫌がるエロイーズは肖像画を描かれるのを嫌っていたため、マリアンヌは自分が画家であることを隠して彼女に近づいていく。次第に親しくなっていった二人の間には特別な感情が芽生えていき……。
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最初は画家としての身分を隠し、外出する際の付き添いとしてエロイーズと共に行動するマリアンヌ。エロイーズの顔の造形を記憶し、それを基にして肖像画を描いていく。
とにかく前半は大きな盛り上がりもなく、静かに淡々と物語が進んでいく印象。登場人物が非常に少なく、また台詞も最小限しかない印象です。それ故に正直分かりにくいところも多くて、私は鑑賞し終わった今でも本作を理解できたとは思えません。
後半にかけて物語が盛り上がっていき、終盤は前半の静かな雰囲気から一変していきます。前半と後半との対比が素晴らしかった。終盤の畳みかけは、多分前半の淡々とした雰囲気に付いてこれなかった人でも息を飲むような素晴らしい展開でした。
特にラストシーンの、マリアンヌの回想シーン。絵画展覧会でエロイーズの絵を見掛けた時の描写と、演奏会(?)の観劇に行った際にエロイーズを見掛けた時の描写。あそこは本当に素晴らしかった。「エロイーズはこちらを見なかった(気付かなかった)」とマリアンヌは回想していましたが、実はエロイーズはマリアンヌの存在に気が付いていて、でもマリアンヌの方を見なかった。ヴィヴァルディの『夏』が鳴り響く中、どんどんとアップになっていくエロイーズのシーンは鳥肌ものですね。