「全ての要素がある時点に凝集する語り口がみごと。」燃ゆる女の肖像 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
全ての要素がある時点に凝集する語り口がみごと。
『僕の名前はズッキーニ』(2016)の脚本を担当するなど、脚本家と映画監督として活躍している女性作家、セリーヌ・シアマの最新作。
作中で言及される詩とその解釈、見つめる側と見つめられる側の関係性、当時の女性の立場などなど、作中でさりげなく提示された様々な要素がある時点でぎゅっと繋がっていくという物語の大きなうねり、それを映像でしか表現し得ない方法で提示したシアマ監督の演出は非常に素晴らしいです。シアマ監督と主演のアデル・エネルはかつてパートナーだったということで、そうした関係性が物語を豊かにしているのでしょう。
確かに物語としてはフランスの歴史ものであることは確かですが(さらに場所の設定や衣裳などに、イギリスの要素も多少取り入れているとのこと)、本作のテーマは非常に現代的な要素を多く含んでいるため、ジャンル映画として二の足を踏む人がいるとしたら、とてももったいない作品です。当時の衣裳に詳しい人であれば、当時は一般的ではなかったポケット付き衣裳をあえて採用するといった、映画ならではの現代的な味付けについても楽しめるのでは、と思います。
なお、シアマ監督は日本でも様々な媒体のインタビューに応じていて、それらはどれも非常に読み応えがあるのですが(「女性作家」と自ら名乗ることへの強い意志についての語りが、とりわけ印象に残りました)、結構結末に触れちゃっているので、作品を新鮮に楽しみたい方は鑑賞後に読みましょう!
コメントする