「南米の西部劇」バクラウ 地図から消された村 ipxqiさんの映画レビュー(感想・評価)
南米の西部劇
「田舎に行ったらとんでもない村だった」系の映画かなー、くらいの認識でNetflixで鑑賞。
妙にクラシカルなタイトル。。なんだったんだろうという一抹の不穏さとともに本編へ。
一転のどかな村の生活、ジャンルを勘違いしてたかな? 物資の調達は大変そうだけど意外とテクノロジーは充実してるのねーからの突然のアダムスキー→「???」
やっぱりこれは普通の映画じゃないんだ! と大興奮。
そして埃っぽい村のメインストリートに馬がやってくる情景に妙な既視感を覚えて、もしやこれはウエスタン?と思い始めたところ、ほんとにそうだった。
これよこれ!こーいうのが見たかった!
いやーフリがちゃんと効いててムダがないし、めちゃくちゃ楽しい。
一見そうとは見えないけど、視点の切り替えの的確さ、情報の与え方とか、作り手は観客の興味を的確にコントロールしてくる。つまりジャンルの骨格が身についてるんだと確信した。
「◯年前」という字幕はよくあるけど、これは「数年後」。意味がわからなかったけど、後でちゃんとわかる。ナルホドそういうことね。
イチから十まで説明はしないけど、だいたい想像がつくようになってるし、後半に行くにつれ血湧き肉躍る場面の連続。
そして画面に映る村人たちの顔、顔、顔のインパクト。やってくるならず者たちの顔、その対比。
わざわざある場面では言葉を使って強調されるこの「顔」の差を描くこと自体がこの映画の目的のひとつなんだと思う。
かつての西部劇であれば白人たちが置かれていた位置にそうではない顔を並べる。差別的な構造が際立つようになっている。
つまり既存のジャンルの型を倒置することにより、当初「田舎のとんでもない村」を期待していた私自身も内なる差別を自覚させられました。
と同時に映画として一定の面白さをあらかじめ確保することにも成功しており、非常に明晰で、映画という娯楽に対する理解が深い作り手なんだと思います。
そして観賞後にNetflixからオススメされたのは「ゴールデンカムイ 」。。納得。