劇場公開日 2020年2月21日

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名もなき生涯のレビュー・感想・評価

全50件中、1~20件目を表示

4.5試される人間、信仰のあり方と、マリックの映像世界の親和性

2020年2月27日
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鑑賞方法:試写会

泣ける

悲しい

知的

空中を漂うように緩く揺れながら移動するカメラワーク、自然光を活かした人物や草木の淡い描写、詩的なモノローグ、反復が強調されたクラシック調のBGMが特徴的なテレンス・マリックの映像世界。柔和で、優美で、どこか超越したような感覚は、神の眼差しを思わせる。今作では特に、美しい高原の村の背景にそびえる急峻な峰が、形而上的な存在や過酷な運命を象徴するかのように、たびたび映し出されては観客に独特の感興をもたらす。 主人公フランツの受難に加え、村八分のような仕打ちを受ける妻と娘たちも不憫でやるせない。日本でも戦時中、反戦主義者は非国民とののしられ、理不尽な目に遭った。半世紀以上が過ぎても、さまざまな相互不理解と分断があり、生きづらい世の中が続いていることを、神の視点からはどう見えるのだろうかと考えてしまう。

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高森 郁哉

3.5実話なので重い。でも共感するのは難しい

2024年1月3日
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鑑賞方法:VOD

難しい

オーストリアの山あいの美しい風景のカットがたくさん挿入される。ピュアな信念を描いた映画なので、きれいな風景が主人公の考えの底にあるということだろうか。普通の人にはできない判断を最後まで貫くのを丁寧に描いていて、なぜそういう判断をすることになったのかはほとんど説明しない。説明しようとしてもできないし、下手に説明しようとしないことがドキュメンタリー映画のようで、リアリティを感じた。 「フランツ・イェーガーシュテッター」という人の話がベースで、実際に信念を貫いた人がいたことが驚き。たぶん映画で描かれたように、ジタバタしたり迷ったりはしなかったのだろうと思う。 上映時間は175分で、ほぼ3時間。話の進み方が遅く、映像表現として冗長に感じるところはある。主人公が異例の判断をする話なので仕方ない面があるけど、主人公の気持ちがわからないままの3時間は長かった。妻フランチェスカや娘3人との仲の良い平和な時間を何度も描いているが、どれも平易な印象で今一つ心に残らない。なので、全体として心を揺さぶられるところまで至らず。 貫いた信念は、キリスト教の教えに基づいているのだろうと思う。殉教について子供の頃から聞かされているような文化の中なら、この映画に感動するのかもしれない。

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p.f.naga

4.5生きることの意味を問いかける作品

2023年3月16日
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鑑賞方法:VOD

第二次世界大戦中のナチスドイツに併合されたオーストリアの農村、ナチスに対して忠誠を拒んだフランツ、収監されて死刑の判決がくだされる、1人、農作業に勤しむ妻のフランチェスカ、畑を耕すロバ、牧羊の鈴の音 父親の帰りを待ち続けて、食べ物を残し ドアを閉めずに開けている幼き3人の娘たち 教会にいる敬虔な人たち フランツが生涯を閉じてから手紙を読むフランチェスカ、向こう側でまた会いましょう。 萌ゆる草原、風の囁やき 風に舞う1枚の木の葉、歴史に残らなくても 善の方向に今も向かっている、静かに祈りを捧げたい、テレンス・マリックの映像が 美しい作品でした。

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美紅

2.0長い上に暗すぎてしんどい

2022年8月23日
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出来ないことは出来ないで仕方ない生き方だと思うけど、家族もいるし自分だけの問題じゃない。でもこの旦那さんも奥さんも悪くない。ただ戦争は何も生まない。二度とこんな事やっちゃダメだ。以上!

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しをん

4.0タイトルなし

2021年10月1日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

1940年代 第二次世界大戦時のオーストリア 山と谷に囲まれた美しい村が舞台 のどかな村で家族と暮らす農夫 ヒトラーへの忠誠を拒み信念に殉じた フランツ•イェーガーシュテッター夫妻の やり取りした書簡を元に描かれた フランツの半生 実際のフランツ宅でも撮影をしたそう 美しい景色 当時の人々の暮らしぶり 絵画を見ているような しずかな詩的な作品

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lily

4.0信念を貫く苦しみを神に問うたひとりの農夫のこころの声を探求したテレンス・マリック監督の映像美

2021年5月2日
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鑑賞方法:DVD/BD

ナチス・ドイツのオーストリア併合に反対して良心的兵役拒否を貫き通した、実在の農夫フランツ・イェーガージュテッターの信念を探求した詩的映像美が鮮烈な鬼才テレンス・マリック監督の、歴史の片隅に刻まれたヒューマンドラマ。妻フランチェスカと交わした往復書簡のモノローグと、奥行きのあるカメラアングルに前後に滑らかなカメラワークを多用した独特な演出による映像作家の力作。美しくも厳しい自然に根差した過酷な労働から培われた敬虔な宗教心が共鳴を呼ぶ。戦争と平和、信仰と諦観、愛と苦悩といった相反する概念が、振り子のようにこころの中で彷徨い答えを求める。観る者を考えさせる静かな映画だった。 映像美に溶け込むような音楽も素晴らしい。地味な脇役も時代再現の映像世界に息づいているが、主演のアウグスト・ディールと妻役ヴァレリー・パフナーが更にいい。特にヴァレリーの感情を抑えた表現の深みのある演技が見事。

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Gustav

4.0タイトルの意味

2021年5月1日
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 「歴史に残らないような名もなき生涯を送った人々によって、歴史はさほど悪くならない」 エンドロールの言葉。オーストリアの山村で農業をして暮らす夫婦。夫が戦地への召集を拒み続ける。英雄でもない、名の知れた人物でもない1人の農夫の生涯。  ヒトラーを崇拝出来ず、戦うことに疑問を持ち、一度は召集に応じたものの2度目は拒み続ける。だんだん村八分にされ、家族も辛い目に遭っているけど信念を貫き通す。勾留されても決して曲げない。なんと強い信念だろう。奥さんも辛い思いをしているのに理解を示す。なんて強い愛なんだろう。  オーストリアの自然がとても美しく⛰、会話を控えてお互いの手紙でストーリーが進む。トーンがとても切ない。  観ている途中で、この雰囲気、観たことあるような、、、と感じた。モン・サン・ミシェル、、、「トゥ・ザ・ワンダー」会話を抑えた過去を振り返る文章で、切なく展開する物語。手法が何処となく似ている。同じ監督作品なんだ!なるほど納得。他の作品も観てみたい!

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アンディぴっと

3.0貴重な事実録。フランツの頑固さに共感は出来ませんでした。決して面白...

2021年4月18日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

貴重な事実録。フランツの頑固さに共感は出来ませんでした。決して面白くはありませんでした。 ファニの健気さには胸が打たれました。

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tuna

4.0戦争反対

2021年4月8日
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泣ける

悲しい

怖い

レビュー全部は読んでませんが、万が一、次に戦争が起きたら、ここのみんな、戦争参加しちゃいますね 今、平和な時代に戦争反対とか言ってても、いざ戦争になったら、フランツの様な確信も根性もないのがよくわかった、自分を含めてね 信仰とは別な気がする

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小さき僕

3.5"みんな、悪人を見抜けないのか?"

2021年4月2日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

主人公はオーストリアの山村の農家で生まれ、育ち、結婚して三人の娘がいる。 ナチスドイツにより、オーストリアは併合されるが、主人公はドイツに従わなかった。 招集されるがヒトラーに忠誠を示さなかったので投獄される。 執拗な拷問にも耐え、困った当局は忠誠の書面にサインすれば釈放するという条件を示す。 生か死かの判断に、人間としての尊厳は果たして・・・。 美しい映像はそのまま絵画のようだ。

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いやよセブン

4.5映像が素晴らしい。空と雲が美しい。実話のリアリティがある。一貫した...

2021年3月24日
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鑑賞方法:VOD

映像が素晴らしい。空と雲が美しい。実話のリアリティがある。一貫した生き方が、生活の細部や関係性などに表れている。 事大主義的感はあるが、マリックの好きな自然がうまく使われる映画。 独りよがり感はある。

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えみり

4.5モハメットアリを思いだした。

2021年1月2日
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鑑賞方法:DVD/BD

この監督は有名らしいが全く知らなかった。静かに進んでいくスタイルは好きだ。でも、果たして三時間もいるだろうか? カメラワークはこの映画を不思議なくらい過去のオーストリアに戻させてくれるが、映像に目が回ってしまった。そして、コメントできるぐらいの映像に対して知識がなく、美しさだけ堪能した。 でも、私は語学教師なので、このドイツ語と英語の共存に対してコメントを書きたい。監督はアメリカ人らしいが、ほとんどの役者は調べればわかるがドイツ語圏の役者だ。なぜ英語?監督がアメリカ人だから?こんなにドイツやオーストリアの俳優が起用されているのに? ドイツの私の好きな俳優フランツ ロゴスキーまで英語を話している。ナチス政権の台頭の中の苦悩で舞台はオーストリア🇦🇹、それに、ドイツのオーストリア併合の時代。それに、時代を考えてドイツ語で作品を作れなかったものか?映画ではドイツ語の部分だけ字幕が出てないが、この部分は感情的な部分なので何をいっているか、ドイツ語がわからなくてもおおよそ見当がつき、おおきな問題じゃない。字幕がない部分はそのままにして、あとの役者にドイツ語(オーストリア、ドイツのドイツ語)を話させた方が、緊迫して、より真のものとなるから、現実味が増す。 最近、映画を主に英語で作る監督が増えてきているような気がする。これに対するショックはわたしにとって、並大抵ではない。『オーセンティック』(英語のauthentic)日本語で 本物の、正真正銘の、真正の、真のとなっているが、こういう作品を期待している。なぜかというと、映画の世界をもっと現実に近づけて観たいから。それに、あくまでも個人的な見解だが、映画の題まで日本語でなく英語を使っていると、興醒めする。『オーセンティック』(英語のauthentic)のものの中に感じるものを大切にしたいから。 この映画は1939年、オーストリアのST.Radegundというドイツの国境近くにある村で、第二次世界大戦中、ナチス・ドイツに併合された、良心的兵役拒否の実在の農夫フランツ・イェーガーシュテッターの生涯を描く。 ナチスの軍門におちいった教会の指示に同意せず、自分の信念と信仰に生きる。妻や娘への愛情は並大抵ではなく、拷問にも耐え、決して揺るがない。妻たちも村八分に耐え、お互いに神を信じて生きていく姿は素晴らしいが、妻がベルリンの刑務所から戻ってきて、大地を手でむしりとりなから泣き叫ぶシーンは酷いね。夫の揺るがない心情を理解していても、自分が訪問することにより、夫の気持ちが変わるかもしれないなんてちょっとでも思わなかったろうか? 現在では、イェーガーシュテッターは、カトリック教会の殉教者であり、英雄で彼の銅像が建っているかもしれない? しかし、当時は兵役拒否なんて許されなかったんだからねえ。日韓併合の時は朝鮮人に対する兵役はボランティアだったのか?強制だったのか?調べてみればわかるが? 良心的兵役拒否ではモハメットアリ(カシアスクレイ)が有名だ。彼は英雄として扱われている。アリがボクシングのキャリアを犠牲にしてまで貫いた信念で、私のように彼の支持者になった人はおおい。かれはボクサーとしても権利を剥奪されて投獄された。彼は知能指数が低いとされていたが、彼の言葉『ベトコンにうらみはない』は全くその通りだ。なぜ、自分はベトコンと戦わなきゃいけないんだ?この意味はなんなのだ?国の都合主義じゃないのか?それも、黒人の多くが戦場にいくし、金のある(当時白人)若者は兵役を逃れることができる。なんと、不平等な!

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Socialjustice

5.0新しい戦争の描き方

Jさん
2020年11月29日
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セリフが少なくても 苦しさがヒシヒシと伝わってくる なにを信仰するか 命を掛けて自分の正義を貫けるか 悪に洗脳されてしまった人達 善を貫こうとする人達 人間の悪が結集した時の恐ろしさ 善人がさも悪人にされてしまう不条理さ 映像が芸術的に美しくて 長尺だか飽きない

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J

4.0マリックが何故今、この作品を撮ったのか?

2020年10月18日
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鑑賞方法:映画館

私の好きなテレンス・マリックが帰ってきた!!まずはそのことを歓迎したい。寡作な映画作家と知られる大巨匠であるが、比較的コンスタントに作品を発表した過去10年間の作品を振り返ると、いずれも物語の焦点をあえて絞らないようにしたように思えるものばかりである。 『天国の日々』でこの監督の虜になった私から見れば、どこか浮世離れした主人公が見据えるある焦点に向かって、語られるこの監督独特のストーリーテリングが好きなのだ。それを思うと、本作は従来のテレンス・マリック作品の物語構成にバッチリとはまり、物語が描く過酷な現実とあまりにも美しい映像とのコントラストにため息をつくばかりだ。 しかし、マリックが何故今、この作品を撮ったのか?という疑問が始終頭の中を駆け巡る。しばし神の存在を肯定し、あるいは否定し、マリックは有神論者なのか、無神論者なのか、とファンの間でも物議を醸す彼の作風は今作でも健在であるし、見方によっては本作の主人公・フランツの行いはキリストの受難とも重なって映る。だが、本作の時代背景はナチスが統治する1943年のオーストリア。誰もがヒトラーに忠誠を誓い、命を捧げることが当然な世の中に対し、自分の意志を貫き続ける主人公の姿は、同調圧力が至る所に存在する現代社会にも通ずるテーマに見えてくる。 多様性を謳いながらも、人種差別、ヘイトスピーチ、マイノリティの排除、国による言論統制など矛盾を孕む現代には、本作の世界とも通ずる何かが生きている。言わずもがな、マリックは寡黙だ。フランツもその家族も皆、声を高らかに自分の主張を叫んだりしない。ただ、周囲の圧力に屈しないように、自分の殻を守り、蓋をする。マリックはフランツに自身を投影したのだろか。少数派の声を大にして歴史に名を刻んだ偉人たちも多いが、マリックは誰も知らないような人にスポットを当てる。それは『名もなき生涯』というタイトルが示す以上でも以下でもない。しかし、そのような人物たちが確かに存在したということを描いたことこそが本作の最大の意義である。

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Ao-aO

5.03時間か〜

2020年8月23日
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鑑賞方法:映画館

しかし終わってみると必要な時間だったことがわかる。 彼の直感は、彼に地上の死をもたらすけれど、命よりも大切なことを時間や空間を超えて他の人々に与えている。 そしてわずかながらも味方がいる。 彼や彼女は一人ぼっちではない。 日本にもこんな人がいたことも思い出す。 そんなハチドリの一雫の抵抗が、人を変え世界を変えていく。そんな希望が見える映画だった。

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Momoko

3.5長い、、。画面はとてもとてもきれい。

2020年4月11日
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泣ける

悲しい

妻、とても可愛そう。 妻を考えていると、主人公さんに共感できなくなった。 私にはとてもできない。 そして 命をかけるにしても、みなの役に立つような生き方をしたい。

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昔から映画好き

5.0寡作だった作家の豊かな語り口。

2020年4月5日
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鑑賞方法:映画館

かつては寡作で知られていたテレンス・マリック監督ですが、ここ最近はかなり制作ペースが上がっています。何か心境の変化があったのでしょうか?マリック監督は最初期の作品から近作まで、比較的作風が一貫していて、それは例えば、信仰と人間の業、自然に包摂される人為といった二項対立を、人工光に頼らず描き出す、といった形で示されます。主題は時に内省的な傾向を強めるため、時には『ツリー・オブ・ライフ』の宇宙創生の描写のように、観客はおろか演じている俳優にも理解しきれない領域に達してしまいます。  翻って本作の主題は(こう言っては失礼かも知れませんが)、表面的にはマリック監督作品として異例なほど明確です。圧倒的な権力を握るナチスを前にして、配偶者にも理解しかねるほどに自らの信念を貫き通す無名の農夫フランツ、そして彼やその家族の存在を疎ましく思い、助けるどころか排除しようとする住民達、そうした不穏な状況下にあっても天使のように愛らしい娘達。信念に基づいた選択がどのような状況をもたらすか、誰の目にも明らかな状況でなお、フランツは引き返そうとはしません。 全てを犠牲にしてまでも信念を貫き通すフランツの真意は何か、実は主人公フランツの内面こそが本作最大の謎なのですが、その鍵を監督は、最序盤と幕切れでそれとなく示唆しています。その表現手腕に脱帽しました。本作を鑑賞後、マーティン・スコセッシ監督の『沈黙ーサイレンスー』(2016)を見直したくなりました。 偶然とは思いますが、コロナ禍で感染者や特定の地域の人々が攻撃されたり排斥される状況、そして米国における人種差別に対する抗議運動という現状を鑑みると、本作のフランツやその一家と同じ境遇にある人々が世界各地で生じているのでは、と思わずにはいられませんでした。

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yui

4.0第二次大戦を別視点から

2020年4月5日
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鑑賞方法:映画館

知的

機械的なことを言えば、超ワイドレンズで俯瞰しながらの撮影は今でこその技術。緻密な構図が美しい背景をよりひきたたせている。地をはうような農民の生活もリアルだ。 鑑賞しながらまさにサウンドオブミュージックと重なった。妻から山に逃げましょうと言われるが、そらは現実的に不可能なこと。 それにしても何度となく許されて釈放(と言ってもドイツのもと労働は強いられるが)のチャンスはあれど頑なに拒否。自分に置き換えるとそもそも拒否すらせず心は従わないなんて嘘をついても生き残るんだろう。最後のチャンスにも夫の決心を見て取った妻すら引き止めない。 名も無き英雄はその功績すら残っていないが、きっとこうして映画で取り上げることで残っていく事を信じたい。

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せん

3.5良心的兵役拒否

2020年4月3日
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鑑賞方法:映画館

がテーマだったんですね。良心的兵役拒否は刑事事件取り調べに対する黙秘権より、更に更に更に細い個人主義。「良心的兵役拒否権を宣言します!」なんて言っても、屁の突っ張りにもなりませんし、実際ならなかった。 名もなきレジスタンス達のおかげで世界は、それほど悪くなっていないかも知れない。い?ですか? なんかなぁ。 やっぱり、屁の突っ張りにもなってへんのじゃないかと。少なくとも徴兵制のある国々においては。最後の、メッセージは、もっと力強いもんが欲しかったです。 画、音楽、台詞無しの演出は好き。で、なんと言ってもアルプスの山間の風景が最高でした。 と。 あの時代にナチス相手に相当な譲歩を引き出した弁護士さんがいたとしたら。凄いとしか言いようがありません。これが最大の驚きでした。 ---------- 暇に任せて追記(4/9) 映画"ハクソーリッジ"の主人公である、デズモンド・ドスも良心的兵役拒否者とされています。彼はセブンスデー・アドベンチスト教会の敬虔な信者であり、宗教上の信条に基づき、銃を手に取る事を拒否し、衛生兵として陸軍に志願。太平洋戦争の最中、沖縄戦に参加しています。 イスラエルは女性にも徴兵制が適用される国です。自国のパレスチナ占領政策への反発から、男女ともに兵役を拒否する者が後を絶ちません。罰則として懲役が科されますが、10日間の禁固刑等、その罰則は軽微なものです。イスラエルの場合は政策への反発であり、宗教上の信条と言うよりも政治的な思想、イデオロギー色が強い様です。 この映画の中で、兵役拒否の理由を問われたフランツは、最終的に「直感だ」と答えます。直感で、ナチスが行っていることは正しくない事だ。正しくない事には参加できない。 第二次世界大戦で、オーストリアはナチス側に付きました。それが連合国側であったとしても、フランツは拒否していただろうか? もしも身近に、レジスタンスが居たとしたら、フランツは参加したのだろうか? 病院勤務は人の命を助ける場所だが、ナチス側だから拒否したのだろうか? フランツは死後、殉教者としてカトリック教会から列福されましたが、彼はそれを望んだであろうか? 何か、直感だけど、全部 "NO"(拒否した)だと思うんですよね。Hidden Life とは、政治的なイデオロギーからでも無く、宗教上の信条からでも無く、直感的に自己の正義に反すると感じた軍隊と戦争に対するレジスタンスを貫き通した男の、命の掛け方の物語。 俺は武闘レジスタンス派ですけどね。命を懸けるなら、ナチス将校狙いのテロリストじゃね。いや、テロリストをかくまう宿屋のオヤジってとこか、逃走を手伝う山岳ガイドとか、偽造パスポート屋、手りゅう弾を作る武器工房のオヤジでも良いし、って。何で、ここで妄想はじまんの、俺?

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bloodtrail

4.0ジョージ・エリオットの言葉に泣けてくる

2020年4月1日
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鑑賞方法:映画館

 ずっと広角レンズなのだろうか、3D効果もあるように感じて目も疲れてくるのですが、中盤以降は慣れてくる。広大な自然の描写は心地よいのですが、家の中までこれだから目が人を追い続けると3時間弱の長尺はかなりつらい。  まずは退役軍人のための募金を頑固に断るフランツ。ここから村人たちの冷たい視線、やがて村八分のような扱いになる家族。だけど幼い3人の娘はいじけることなく、無邪気のままなのだ。「召集令状きちゃったよ」などと会話する村人たちの苦渋の表情も痛々しい。何しろ、祖国オーストリアのためじゃなく、ナチスドイツのために戦場に駆り出されるのだ。  道を歩けば石を投げられる、水をかけられるという嫌がらせを受けるフランツと妻ファニ。戦争が終わるまで耐えればいいんだという思いも儚く、フランツにも召集令状が届く。村の神父なんかも「国のために」などという言葉を使うが、あくまでもナチスに屈服することを拒むフランツ。そしてドイツへと赴くも、手を挙げなかっただけで投獄。そこから夫婦の書簡のやりとりが続くといったストーリー。  手紙を検閲されないだけでも日本よりも自由が感じられるのですが、愛情と信念の狭間で苦悩する心も伝わってきて、重厚さが増してきました。何度も弁護士から告訴取消しのサインを催促されたり、「誓いの言葉は形式だけだから」と説得されても、信念を曲げなくなったフランツ。ほんと、見てるだけで折れそうになるほど懐柔策が取られるのですよ。3時間の長尺のため、頭がくらくらしそうにもなりつつ耐えました!  終わってホッとする中、ジョージ・エリオットの言葉が最後に流され、こうした名もなき人のおかげで今の平和な世界がある云々といった内容に感動してしまいました。敢えて人を殺さない道を選ぶことが、当時の状況としては異例なこと。何も宗教的な面だけじゃなくてもいいんだけどな。

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kossy