名もなき生涯のレビュー・感想・評価
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叙情的映像の連なり
見事なロケーションと、絵画のような映像が、叙情的に連なっていたという印象。
質の高い映像と音楽の絡み合いは素晴らしいとは思ったけれど、どうしても退屈感が拭い去れず…しかも長い。
静かに抵抗し続けた者の思いを描こうとしている志は理解できるけれど、抵抗の根底にあるものがあまりに弱すぎる─そう思ってしまうのは信仰というものを持たない自分が原因なのか…
倫理的な反戦なら理解できる。けれど、この作品はそれとは違うと思わざるを得ない。
英語とドイツ語が混在しているのは、雰囲気とか分かりやすさを重視しているというふうに捉えたけれど、見方を変えると、連合国側の逆プロパガンダとも取られかねないような…まぁ飛躍しすぎですけど。
この映画を見ようとしたきっかけは、予告でグレツキの悲歌のシンフォニーに乗せて流れる映像が素晴らしかったから。実際に作品を見ても、その音楽と映像の親和性は素晴らしかったけれど、いかんせん、その部分が短い─というより、短いカットで繋いだところでやっぱ全体的に長すぎます。
相当疲弊させられた映画でした。
神の沈黙、人の信仰
第二次世界大戦中、ナチスドイツ併合下のオーストリア。ヒトラーの思想に賛同できず、軍召集を拒み、罪に問われた農夫の姿を追う。
戦争もの、伝記ものというよりは、非常に内面的、哲学的な側面を感じた。
中盤までは、農夫と家族の山村での日常生活と、それが戦争によってじわじわと侵食されていく様、農夫が勾留されてからは、農夫と妻の手紙のやり取りという形式で、刑務所の様子と、村人に差別や嫌がらせを受けて孤立しながら必死に生活を送る家族の姿が、代わる代わる写されていく。
戦闘描写も殆どなく、物資不足などの生活への影響は勿論あるのだろうが、目立った形では描かれない。
ただ、情勢に抗えず、人々の意識や思想が、民族排他、国家奉仕、集団統制、自己保身へと、じわじわと押し込まれていく、心の不自由に焦点を当てている。
神を信じる者として、罪のない弱者を食いものにする戦争に加担する事はできないと、自らの信条を貫き通す農夫。何も変わらない無駄骨だと嘲られ、口先だけでもヒトラーに忠誠を誓えば放免されると諭され、神は救ってくれないと絶望を囁かれ、温かい思い出と暴力の現実を行きつ戻りつ煩悶しながら、それらを頑固に拒んで信条に殉ずる姿には、明らかにキリストの受難が重ねられている。正しい者を神は救って下さると信じ、けれど叶わず、苦しみ嘆いた末に、ただ実直に土を耕し果樹を育て続ける家族の姿もまた同じく、生きる事と信仰の本質を描いているのだろう。
山村の自然の中を、刑務所の中庭を、狭い個室を、ぐるぐると歩き廻り、頭を抱え、呻く農夫の向こうには、もっと根本的な命題、人であるという事は、尊厳とは、善性とは、良心とは…と自問しながら、内へ内へと潜っていく、作り手自身の姿が透けて見える気もする。
時に容易に人を踏みにじり、時に身を擲って情を与え、時に死を以てしても意志を貫く、人間とはいかなる存在であるのか。
一介の農夫のちっぽけな抵抗は世界を変える事はない。たぶん変えようとした訳でもない。ただ彼が彼である事の矜持を守り通して生き、死んだだけだ。その自我の強さが、人が人たり得る所以のひとつであるようにも思う。
風や水や木々の匂いまでも感じさせる大自然、建物内部の光と影など、映像がとても美しいが、主人公主観、人物に近接するアングルなど、多様な視点が入り交じる。
物語として筋立てて語るというよりは、詩か散文のように言葉や台詞が投げ掛けられる。
メインの台詞は英語で字幕も入るが、敢えてだろうが、ドイツ語のまま、字幕も表示されずに、雰囲気や語調や展開で内容を推し量るしかない場面もある。
癖のある表現、淡々とした内容、3時間という長尺。好みがくっきり分れるのは致し方ない所だろう。
長かったけどとても良かった!
オーストリアは1938年、アドルフ・ヒトラーを率いるナチス軍に併合された。その段階でオーストリアは消滅した。
そんな時代に妻フランチスカと3人の娘と暮らしていたフランツは、ドイツ兵として戦争へと狩り出されるが、ヒトラーへの忠誠を拒んで収監される。獄中のフランツを妻のフランチスカは手紙で励ますが、彼女もまた裏切り者の妻として村人たちから村八分的な仕打ちを受ける。前半は山と谷に囲まれた素晴らしく美しい村での家族の幸せな日々を描きます。もうこの景色だけでも見られて良かったと思うくらい美しい景色です。後半は獄中のフランツと村に残ったブランチスカが戦時中にありがちな理不尽な目に遭う展開が続きます。フランツには弁護士や裁判長から救済の手が差し伸べられますが、命と引き換えてもヒトラーへの忠誠を誓う事は出来ない。言葉と心の中は違っていても良いんだと言われても、これにサインすれば自由の身だと言われても自分の信念を曲げられないフランツ。個人的にはこの人、頑固だなあとか、家族のためにサインしろよーとか思って見てました。結局、ナチス・ドイツ軍は敗戦し、オーストリアも敗戦国となった。オーストリアは戦後、ナチス軍の戦争犯罪の最初の犠牲国と主張。しかし世界ユダヤ協会から「オーストリアはナチス軍の戦争犯罪の共犯」と反論されたんですよね。
挿入シーンが多すぎて
長い。長すぎ。
自らの信仰から生まれる正義にそぐわないヒトラーに、忠誠を誓えないがゆえに、従軍命令に対し良心的兵役拒否の立場を貫いた農夫を描いているのですが。
オーストリアの山々と、妻や子の思い出がことあるごとに挿入され。
その挿入シーンが、生き残るか信仰を貫くかの葛藤なのか、むしろ愛ゆえに心を強くするためのものなのか……
扱いに困ったりして。
あまりに多すぎて、時系列の混乱まで招いていたような。
173分を130分くらいにしたら、良い作品だったと思いましたよ。
『サウンド・オブ・ミュージック』のパラレルワールド
一般的な日本人には(少なくとも私には)実感的な理解が及ばないほど信仰心が厚いピュアな夫婦の精神世界の物語(作中、夫は肉体的には亡くなるけれど、メインテーマはそこではないという意味です)。
名前からしてフランツ、たぶん中世イタリアの聖人、アッシジのフランチェスコのドイツ語読みなのではないでしょうか。イタリア旅行を計画したことのある人ならば、サンマリノ共和国の南に位置するアッシジといえば、ああそういえば、と思い出す人もいると思います。といっても〝清貧〟というイメージしか知らないので、何をもって聖人に列せられたのか私はよく知りません😅
アメリカのサンフランシスコという地名もここに由来していると思うので、キリスト教世界の聖人番付(不謹慎な言い回しで怪しからん‼️と怒られそうですが)でもトップクラスの方であることは間違いないと思います。
そういう聖人にも擬せられるほど気高い、名もなき人、という前提でもないと私のような世俗的な人間にはラスト近くのあの場面で、妻が『正義を貫いて!』などと言うのが理解できないのです。もし、私があの場面で妻の立場にいたら、絶対こう言います。
子供たちのために、兵役拒否を撤回して生きていて‼️(その後の戦争でどうなるのかは別問題)
神様だって許してくれるわ、これだけ頑張ってきたのだもの。
正直、〝殉教〟という概念は、私にとっては、『サイレンス 沈黙』のようなドラマの中での話であって、現実的に存在するということがうまく受け止めることができません。
市井の〝名もなき人たちが世の中を支えている〟ことについては、クリント・イーストウッド監督がこれまで何度も鮮やかに描いているので、その点もつい比べてしまいました。
ところで、時代背景的には、ほぼ同じ時期に『サウンド・オブ・ミュージック』のトラップ大佐とマリアとその一家は、ナチの傀儡となったオーストリアの官憲達からアルプスを超えて逃げることに成功していたことになりますよね。
アルプスの稜線、爽やかな風が吹き抜ける草原、その風に乗って届く鐘の音。自然はいつもと同じように季節を巡らせる、というフレーズがとても印象的でした。
…is half owing to the number who lived faithfully a hidden life, and rest in unvisited tombs.…
何度も挿入される雄大なオーストリアアルプスとその麓の風景が素晴らしい。そして、しつこいくらい繰り返し撮される毎年同じ農作業の光景。饒舌な映画ではない。主人公がなぜああも頑なに自分の意思を通すのか、主人公の口から説明らしきものが発せられるのは一回だけ。あとは静かに聳え佇む山が、滔々と流れる河が、何処までも広がる草原が代弁しているようだ。嘘をつかない自然を相手にする農夫だから、ヒトラーやナチの嘘を直感的にわかり、そこに繋がることを頑なに拒んだのであろうか。よく泣くし感情を爆発させることもあるが、村人の白い目や非難の言葉にも耐えて、黙々と農作業を続ける妻の強さと夫への変わらぬ愛情。A hidden life ではあったが名もなき生涯ではなかった(本人には歴史に名が残ろうが残ら無かろうがどうでも良かったでしょうけど)一農夫とその妻の、歴史に名を残すことになった数年間の日々を描いたepic movie。
鐘の音は人々の心に届くか
ラスト2分で全てが救われる映画。
'For the growing good of the world is partly dependent on unhistoric acts; and that things are not so ill with you and me as they might have been, is half owing to the number who lived faithfully a hidden life, and rest in unvisited tombs.'
ジョージエリオット著 ミドルマーチより
目を見張る美しい風景のカットが、あまりに短くて、おまけに手持ちカットも多いのが、少し見辛さがある。
なんならこの風景の中農作業するだけのドキュメンタリー映画1時間バージョンみてみたい。
美しい筈なのに
罪のない人を攻撃し殺める戦争に、主導するヒトラーに、疑問を感じ自身の思想や信念を貫いた農夫と嫁の話。
一度は徴兵に応えるも、帰宅後再度の徴兵が始まる中で疑問を感じ、寄付に出征にと拒み村人と対立したり疎外される中で収監されて行くストーリーで、メイン以外の会話には字幕が付かず、一部メインにすら字幕も付かないけれど感情は伝わってくる。
とはいえ、それで良いのかという風にも感じるのは自分だけ?感じられるから良いのであれば尺も半分で充分に感じるし。
内容的には心が揺さぶられる程に響くことはなかったけど、のどかで美しい風景と空気感を引っかきまわす様な、悲しさや強さと人間らしさとやるせなさ等々、引っ掛かるものがあって面白かった。
ところで、あらすじには後に列福されたとわざわざ書かれているけれど、これは祭り上げられたってことですかね?
主人公が特別何かした様にも世間に影響を与えた様にも感じなかったけど…オーストリアでは有名人?
ドイツ語の字幕は?
長い!!
長すぎる!!!
物語が淡々と進んでいくので、正直、長さがつらかった
もうちょいテンポよくするか、カットしてほしかった、個人的意見だけど
あと、ドイツ語の字幕!
アメリカとドイツの合作なのに、なんでつけないのか理解に苦しむ
なに言ってるか分からないシチュエーションにする必要性を全く感じなかった
と、それはさておき、内容としては
忠誠を拒むことは死を意味する
それでも貫き通す信念
愛する家族を巻き込むその選択
言葉だけだ、と言われても、屈することのない頑ななその生き方
否定も肯定も出来なかった
自分に嘘をついて、分かったって言えばすむだけなのに
戦場に行って、人を殺めずにすむ選択肢も用意されるのに
貫いたことは愚かだろうか
誰かを正したいわけではなく、ただ、自分に嘘をつくことを拒むその生き方
それは愚かなことだろうか
私にはそうは思えなかった
でも、一方で同じくらい、遺される人たちを考えれば
その信念ゆえに死ぬことが正しいとも思えなかった
どこまでも切なく悲しい生き方と信念だった
曖昧な正義と客観性
この映画を観て、僕達の正義とか、客観性が如何に曖昧で、ご都合主義なのかを考えてしまった。
信念や勇気に心を揺さぶられた他に、何かしっくり来ない感想もあるように思う(低評価ではなく)。
第一世界大戦後、当時の米大統領ウッドロー・ウイルソンが主導して、「民族自決」がヴェルサイユ条約の原則となり、欧州を中心に多くの国が独立し、オーストリア=ハプスブルク帝国は解体され、東欧にも小国が複数誕生した。
そして、この「民族自決」を盾に、ナチス・ヒトラーは、それぞれの地域の「ドイツ系」住民の保護を掲げチェコスロバキア、ポーランド、オーストリアに侵攻。
第一次世界大戦時に中心的同盟国だったオーストリア(旧オーストリア=ハプスブルグ帝国)を、ヒトラーは当初、併合する予定はなかったとされるが、オーストリア市民が、彼を熱狂的に迎え、支持してしまったことで、同国の併合の意思を固めたとされている。
この物語は、そんな第二次世界大戦さ中の物語だ。
ナチス・ドイツの支配をなかなか受け入れようとしないフランツに、村長が演説して聞かせようとする内容を耳にすると、当時のオーストリアが、オーストリア=ハプスブルク帝国の解体で如何に心理的にも参っていたのかが伺える。
ナチス・ドイツを拠り所にしたかったのだ。
ナチスに寄付ぐらいすれば良いじゃないか。
言葉だけ忠誠を誓うのなんて簡単だろう。
しかし、村人の嫌がらせや村八分、ナチスの苛烈な圧力には怒りを感じる。
これが僕達の曖昧で、ご都合主義の客観性だ。
これは、決して中立な思考ではないはずだ。
責任の所在を隠してるだけだ。
思想や政治の話はしませんも似たもののように思う。
しかし、なんとかしっかり意見を持ちたいという人だって、このフランツやファニの置かれた状況で、もしナチスが負けたということを知らないとしたら、僕達は彼らに対してどんな解決策を提示することができるだろうか。
所詮、僕達の正義や、客観性なんて、そんな程度なのだ。
だから、戦争はダメとか、人を殺してはならないといった最低限の普遍的な価値観は必要なのだ。
そう、迷わないように。
今、オーストリアでは極右政党が台頭している。
どこと争うとかではなく、移民や難民などに対する嫌悪がそうさせているのだ。
それは他の国でも同様だ。
ナショナリズムが静かに、そして、確実に侵食してる気がするのだ。
移民や難民・移民の出所は、先進国が蔑ろにしてきた国だったりする。
欧州連合の中にあっても貧富の差など埋まらず、中核国に対して、周辺国の扱いは変わらず、半ば搾取のような状態は続いていたのだ。
中東紛争国には、特定の国が武器を売りつけ、紛争を煽り、多くの難民を生み出してしまった。
どうして豊かな先進・武器輸出国は難民の受け入れを拒否できるのか。
これは、ローマ教皇の主張でもある。
しかし、そんな根本的な問題に対応しないまま、ナショナリズムが台頭してしまう現状。
温暖化問題も似たようなものだ。
映画では、フランツの神との対話の場面が多く綴られ、遠藤周作さんの沈黙も思い出すが、こちらはやはり宗教とは、また違う普遍的な価値観を、僕達に問うているように思う。
人間は強くない。
だから、コスモポリタンとして守るべき価値観は共有しなくてはならないと思う。
説教臭くて申し訳ない。
教養として観る映画
試写会にて鑑賞。
第二次世界大戦中のオーストリアを舞台に、ヒトラーに忠誠することを拒み、反逆罪で刑務所に入れられても、その信念を貫いた1人の農夫とその家族の実話に基づく話。
約3時間に及ぶ作品で、終始重く、途中で観るのが辛くなってしまったけど、これが人類が歩んだ歴史の一部って思うと、目を背けてはいけないとおもった。
教養として観るべき作品。
しかし、なんて残酷なんだろうか。。
ナチスとか戦争が、教科書や本に文字で書かれると、1つの歴史の出来事にしか過ぎない重みのない言葉になってしまうし、私たちが知ってるとしたら、そこで活躍した偉人の名前と主な出来事。
それが映画になったり本になったりするが、この戦争が続いた6年間という期間の中で、その他にもその時代を生きて耐えた無数の人たちがいて、そこには壮絶な人生があって、でも語られることなく、知られることなく、死んでいった人たちや、生き抜いた人たちがいたことを考えるとどうしようもなく胸が痛んだ。
この映画はタイトルの通り、この暗黒時代に名もなき人生を生きた人たちにスポットライトを当てている。
あと、主人公の農夫の信念を貫く意志と、それを信じる妻。私なら、絶対にできないと思う。嘘の誓いを立てて、命を選ぶだろうし、私の夫だったら、死ぬ気で止めようとするだろうなぁ。私の想像に及ばないわ。
この夫婦愛が素晴らしかったな。
撮影場所の山の風景もとても美しくて、映像がとにかく美しかった!
正直、3時間近く重い感じが続くのと淡々と続いていく比較的セリフも少ないので、好き嫌いは別れると思います!
でも私は観て本当によかったと思う。
ヒトラーが嫌いな男の話
さて「名もなき生涯」です。久々のテレンス・マリック監督です。待てよ?おい!今年はオリンピックイヤーだ、と言うことは・・・
こち亀の日暮か❗️
違いますね。すみません。もっと間が空いていますね。
7年に一度くらいですか?
長野の御柱祭りか❗️
それも違うわ!分かりづらいわ!
この映画は2月21日公開ですので皆様がこの文章を目にするのは、かなり先でしょう。でも安心して下さい。ネタバレはいたしません。何故この映画を観たかと言うと、試写会の券を頂いたからです。その方はちゃんと仕事をして海外旅行も行ってるのに年に300本以上劇場で映画を観ています。
まじリスペクトっす!(EXIT風)
いや無理だろ!なんでも休みの日は1日4本はしごをするらしい。映画を観るのも体力だ。私は去年は1日2本観たのが一回のみ。(悪の華と見えない目撃者) 虚弱体質か!
実はこの試写会の前に「ジョジョ・ラビット」を観ようかなと・・・思ったんですけど、この映画上映時間が約3時間!諦めました。とほほだよ。体力ないもん。
試写会の場所はニッショーホールです。虎ノ門に有ります。
吊り橋にひと晩ぶら下げられたりするのかなあ
?
虎の穴じゃねえよ❗️
さて毎度ですが枕が終わりました。今回は短めにしました。すいません。この先は読まないでもいいですよ。
舞台は第一次大戦に負けてナチス・ドイツに併合されたオーストリアです。
カンガルーやコアラがいるのかなあ?
いねえよ❗️オースト【ラ】リアじゃねえ、オーストリアだよ!
ただね・・・ナチスに占領された悲しさや以前は欧州の五大列強国と言われたオーストリアの没落。そんな悲しさは感じました。
三時間近い上映時間を危惧しましたが、飽きずにまた眠くならず、興味深く鑑賞しました。
簡単に物語を説明します。オーストリアの山村で暮らす農夫と妻の話です。第二次世界大戦が勃発して夫に招集令状が届きます。罪の無い人を殺したくない!愛する妻と別れたくない!そもそもヒトラーなんて大嫌いだ!
近所の人、司祭、村長、説得されますが忌避しようとします。が、とうとう兵役に・・・
そして・・・
物語は夫婦の書簡によるモノローグで淡々と進みます。そしてそこにインサートされるアルプスの景色の美しさ。この世の【楽園】です。但し妻も村人から嫌われて辛い目に合います。
基本は全編英語です。(オーストリアの公用語はドイツ語)時々ドイツ語も入ります。
英語字幕も日本語字幕もついていないので何を言っているのか分かりません。でも伝わっちゃうんですね。
罵詈雑言、誹謗中傷、悪罵、面罵、
ドイツ語は破裂音が多く、きつい言語のイメージそのものです。
ますますヒトラーが嫌いになりました。あと個人的に思う事はテレンス・マリック監督はアーチストと言うよりアルチザン(職人)です。それも生粋の。スタンリー・キューブリック監督と同じカテゴリーです。あくまで私見ですが。
さて話しは少し変わります。私が中学生の時に
読んだ本。映画評論家の佐藤忠男氏の「映画をどう見るか」と言う本です。
内容を簡単に要約すると、映画は娯楽ではあるものの時代を写すものであり、プロパガンダであり、民俗にとっての自惚れ鏡である。この考え方は14歳の私に多大な影響を与えました。
この映画で言うと観た人は必ず農夫とその妻の視点になりナチスを憎むようになる。
ユダヤ人のルサンチマン。(恨み)
20世紀初頭に設立された五大メジャー(パラマウントやワーナー、ユニバーサル、MGM、FOX)創設したのは全てユダヤ系の人達です。
今でもスティーブン・スピルバーグを筆頭に沢山います。
ナチス、ヒトラーは絶対悪。娯楽映画でもあってもそれは金科玉条。ユダヤ系映画人にとってのエネミー。
だが映画でこの方法を最初に行ったのはナチスです。民族の祭典などです。ゲッペルスも狡猾です。
そして娯楽に見せかけたプロパガンダ。これって今も有りませんか?いや、具体的には言いませんが・・・この映画にはそこまでプロバガンダは感じませんが・・・
本当にユダヤ人の怨念は凄まじい。
倍返しどころじゃない!
またチラシには全キリスト教関係者必見‼︎と書いてありますが、そこまで宗教的な印象は受けませんでした。彼は自分の信念を貫き通す事が
一番大切だったのでしょう。
戦争で悲しい思いをするのは市井の人々。「この世界の片隅に」の制作者の考え方に近いです。
少しでも戦争につながる可能性を少なくする。
それが今を生きる私達に出来る事ではないでしょうか。
たまには真面目な事を言ってみました。
読んで頂きありがとうございました。
信念の強さが恐ろしい
ヒットラーへの忠誠を拒否したことで反逆罪で逮捕され 最後までその信念を貫いた農夫とその奥さんの実話。『ツリー・オブ・ライフ』と同じ監督の作品で、ツリーが全然理解できなかっただけに今回も大丈夫か?と思いながら鑑賞。照明を一切使わず自然光だけで撮影された映像は陰影もあり、アルプスの風景も美しかったが、3時間の上映時間は長く、獄中と外との夫婦の往復書簡も淡々、愛する奥さんや家族が不幸になっても、自分の信念を貫き通す農夫にイライラ。2007年にローマ・カトリックから殉教者として認められたそうで、信仰者としては立派なのだろうけど、無神論者の自分としては、彼の強さに宗教心の恐ろしさを感じてしまった。
彼らには敬意と感謝
ニッショーホールにて試写会鑑賞。
実話ベースということもあり、またエンドロールでもあったように彼らの様な世間に知られることなく、正義を貫き命を落とした者の存在があるからこそ、今は当たり前にある正義や平和といったものが存在しているんだと改めて実感させられた。その実感と同時にやはり彼らには敬意を表する気持ちになる。本当にありがとう。
映画作品としてはマリック監督らしい会話が少なく、詩的な言葉や背景描写が多く時折退屈に感じてしまった。
特に今作は会話がかなり少なく感じた。3時間はやはり長さを感じてしまうのは否めない。
今の時代を生きる自分と考えや価値観を比較するのは難しい。上にも書いた様に彼らの様な存在がいたからこそ、今ある平和や正義の価値観を下に彼らの姿を見てしまうからだ。その視線で見ると理解はできても共感はできないところがやはり出てしまう。
例えば、命あっての信念だとどうしても考えてしまう。罪なき人を殺す事を拒否し、徴兵を拒否するまでは理解できても、その先の口だけでも国(ヒトラー)に忠誠を誓うことすら拒否して命を断つ事を選ぶ信念にはやはり共感することはできなかった。
彼の場合妻や娘といった家族もあり、中々言葉で自分の気持ちをあれこれ表現することもないため強い信念はもちろん感じたが、今を生きる自分にとってはやはり共感する事は最後まで出来なかった。
もちろん作品自体は素晴らしいものであり、とても貴重な時間を過ごすことができた。
ただ作品の長さや詩的な表現が今作は多かったことから個人的には疲れてしまったというのも同時な感想である。
詩的な・・・
伝説の監督、テレンスマリック監督作品。詩的な映像の中で浮かび上がる人間の信念と邪悪さ。画面を彩る光と自然がとても印象的。
悪魔の囁きに身を委ねれば人間は楽に生きられる。正しいと思うことを貫き通す意味は、貫き通した人にしか分からないのかもしれない。
正しいことを貫いた名もなき生涯の積み重ねで、人の世の善悪の区別がついていること。僕たちはこの映画を観てそのことを実感すると思うのだ。
マリックを信じるか。
ともあれ、3時間は長い。2年かけて作り上げたという作品。マリックのワイドレンズを駆使した構図がオーストリーの農村を美しく描き上げる。モノローグとともにモンタージュされる風景情景の編集は、まさにマリックチームの芸風。おだやかに映像でも心象を語っていく。実話をもとにしたという珍しい題材。しかし、ここまで無抵抗に個人の正義を貫くことで、愛する家族を残して逝く決断をするというエモーションに日本の観客は共感できるのだろうか。殉教者的なのだが、宗教ではなく「主人公の信じる正義」へ殉じるのだ。「ハクソー・リッジ」(2016年 メル・ギブソン監督)では、信仰のために殺人をせず、ただ負傷者を救うだけの軍医となる人物が描かれた。そちらの方が<理解>しやすい。
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