劇場公開日 2020年2月21日

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「試される人間、信仰のあり方と、マリックの映像世界の親和性」名もなき生涯 AuVisさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5試される人間、信仰のあり方と、マリックの映像世界の親和性

2020年2月27日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

泣ける

悲しい

知的

空中を漂うように緩く揺れながら移動するカメラワーク、自然光を活かした人物や草木の淡い描写、詩的なモノローグ、反復が強調されたクラシック調のBGMが特徴的なテレンス・マリックの映像世界。柔和で、優美で、どこか超越したような感覚は、神の眼差しを思わせる。今作では特に、美しい高原の村の背景にそびえる急峻な峰が、形而上的な存在や過酷な運命を象徴するかのように、たびたび映し出されては観客に独特の感興をもたらす。

主人公フランツの受難に加え、村八分のような仕打ちを受ける妻と娘たちも不憫でやるせない。日本でも戦時中、反戦主義者は非国民とののしられ、理不尽な目に遭った。半世紀以上が過ぎても、さまざまな相互不理解と分断があり、生きづらい世の中が続いていることを、神の視点からはどう見えるのだろうかと考えてしまう。

高森 郁哉