「愛すべき人物設定と、問題提起と、回答提示」家族を想うとき wutangさんの映画レビュー(感想・評価)
愛すべき人物設定と、問題提起と、回答提示
ラストシーンで、こじらせていた長男の本心がはっきりと分かり、家族に必死で歩み寄ろうと努力をしてきた主人公にもその想いが届かないところが、作品を通じた本質のひとつ。(このテーマをそのまま表しているのが原題「Sorry We Missed You」なので、これは邦題に改めない方が良かったのでは。。)
家庭を持つ男にとって仕事というのは、ほとんど家庭のためにやってるつもりのものであるが、実際のところそれに打ち込めば打ち込むほど家族と距離が離れていくというのは、現実によくある姿。長男の心境はラストまで推しはかることができず、男と仕事と家庭の距離感については一定のメッセージ性があったと思う。
もうひとつ大きなテーマとして、貧困がある。
必死で働いていても大した保証もされず、個人事業主の特性を都合よく丸め込まれ、都合よく切り離される様は、現代社会に対する強烈な風刺になっていて、ダニエルブレイクに続いてこのテーマを過剰な演出なく、適切でリアルに描き出しているところに好感を持った。
貧困であっても幸福になることは可能だと思わせてくれる愛すべき人物設定がされており、そんな彼らでもギリギリ幸福になりきれない社会事情が描かれており、じゃあそれを訴えている作り手は何が正解だと思っているのかという回答が明示されている。
ケン・ローチの映画にはこの辺が揃ってる場合が多いのが、彼の最大の特徴というか、評価される所以なのかなと感じた。
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