「宅配事業者の過酷な現実」家族を想うとき ミカエルさんの映画レビュー(感想・評価)
宅配事業者の過酷な現実
左翼を任じ、一貫して労働者階級や第3世界からの移民たちの日常生活をリアリズムに沿って描いている当時82歳のケン・ローチ監督の作品。原題の「Sorry We Missed You」とは「ご不在につき失礼」といった宅配事業者の不在届を意味している。
個人で会社として契約するのではなく、個人事業主として契約を結ぶ、社員に会社の車を運転させて配達させるのではなく、自分で車を持ってきた人と契約して、下請けのように仕事をさせる、この宅配事業者のシステムは搾取の構造をはらんでいるが、失業中の主人公のリッキーはその事実を見破ることができずにこの仕事で生活を立て直そうと考える。
食事も休憩もなしでトイレに行く暇がないほどの1日100個の配達ノルマ、日時指定されている荷物が配達できなかった場合や仕事を休んだ場合のペナルティー料金、車代、保険料、ガソリン代、駐車料は全部自分持ちなど実際に仕事に取り組んでみると厳しい労働条件が課される。結果的に罰金や弁償がどんどんかさみ、まじめに働けば働くほど負債が増えていくという悪夢のような循環に陥ってしまうリッキー。ケン・ローチ監督はそうした現実を見つめ、誠実で真面目な労働者階級の人々がじわじわと滅びゆく姿をリアルに描き出す。
実際は通販業者が負担しているにしろ、送料無料を当然として通販を利用していることに問題意識が芽生えた。せめて再配達はさせないように注意したい。
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