劇場公開日 2020年7月17日

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「幸せになる花粉×和風雅楽=気持ち悪い後味に」リトル・ジョー わたろーさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0幸せになる花粉×和風雅楽=気持ち悪い後味に

2020年7月23日
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植物は人間の心に癒しをくれます。視覚的にもそうですが、花粉による嗅覚的にも落ち着くことがあると思います。その一方自分も含めて花粉症に悩まされてる人もいると思います。この映画は珍しい植物ホラーでした。

まず、この植物の得体の知れなさが気持ち悪い。葉が生えず、花もとけとげしく、開花するときの何とも言えない気持ち悪さ。この造形だけでホラーとしての魅力は高いです。

その花粉は人をハッピーにする効果があるということで、ベロベロバー的な怖がらせ方をするホラーではありません。見る態度によっては肩透かしを食らうかもしれないし、何なら冗長で盛り上がりがないと捉えられるかもしれないです。

ただ、個人的にはこの"ハッピーにする効果"によってとっていく行動の少しの変化によって、それが人間的な成長に繋がっていたり、女性の社会通念を打ち破る1つの選択肢を提示しているところが面白いと思いました。また、"そもそもハッピーにする効果なんてないのでは?"というしてんで思い返してみても面白いなと思いました。言葉を選ばないといけませんが、悪徳な宗教と化していると見ることもできました。ミストの宗教おばさんに究極の状況では頼ってしまうように、ハッピーになるんだと信じ込んでいるようで。

そして何より、目ではっきりと見えないものに振り回されている人間の様が、コロナウイルス禍の今見ることで考えさせられる作りになっていました。

雅楽のような音楽が不気味に鳴り響いているのも面白かったし、色彩が明るいのも題材に合っていると思いました。

普通に2回目を観て考察を深めてみたいくらいには面白かったんですが、一番ドキドキしたのは初めてこの映画の予告編を見たときだったので、既視感を突き抜けてくる強烈な何かがあれば…とは思ってしまいました。

わたろー