「若き天才は堕ちない」マティアス&マキシム JYARIさんの映画レビュー(感想・評価)
若き天才は堕ちない
グザビエ・ドラン監督作の中で最も好きな作品となった。
初の英語作品である「ジョン・F・ドノヴァンの死と生」から
次の監督作が本作。そして本人が主演を努める。
前回の大作映画から一変、インディーズのような雰囲気を醸し出す本作は
私の心を最も射止める一作となった。
わたしが同性愛映画に求めるものは、
「もはや同性愛者がこの世に存在することに意味など無くなること
(言い換えれば、その存在に誰も疑問を持たなくなること)」だが、
この作品はまさにそんな映画になっている。
印象的だったシーンをいくつか書き出したい。
①マキシムの母の表裏
これはマキシムがオーストラリアに向かう前に母親の家に寄ったシーンで、
料理名は忘れたが、マキシムが好きだった何かを作ろうかと母親が問う。
母の優しさを感じるいいシーンかと思いきや、最後に母親の態度は様変わりする。
息子に金を乞うのだ。
この行為でもし前半のやり取りが純粋な思いからだったとしても、
白が灰色になるように、100%の優しさではなくなってしまう。
でもこういう裏切り方をしてくるのが家族だよな、とこちらまで
胸が痛くなるシーン。
②マティアスがエレベーターに乗っているシーン
会社のエレベーターに乗り合わせた男性社員と思われる2人が
女性のほうをちらちら見てコソコソと話す場面。
女性のほうも気づいているようで、ほんの少し顔を傾ける。
しかしこれに男性社員のほうは気づかず、気づいているのはマティアスだけ。
そのときの悲しげな顔と言ったら・・・
(たぶんこのシーンで泣いた。)
今でも書いていて泣きそうなんだけど、たぶんこれは自分にも経験があるから。
マティアスはこういう環境でずっと過ごしてきたんだなと思うと、
その心の内の孤独に耐え難い寂しさを感じる。
③マティアスが窓越しに、マキシムが途中まで吸ったタバコの火を消してポケットに入れるのをみて笑顔になるシーン。
このシーンは本当に今年いちばんいいシーンだった。
こんなシーン撮れたら、本当に監督冥利に尽きるよなあ…。
たぶんなんとも思っていない人が、同じ行動をしてもそれこそなんとも思わないというか、
むしろマイナスな感情になるはずなんだけど、そこで笑ってしまうのが
本当に"愛"というか、可愛くて仕方ないんだな~って感じで。
何歳になったってキュンとするシーンだよ。
マティアスって他にあんな笑顔みせるシーンなんてないよね。
他にも書きたいシーンが山ほどあるけど、
・若手弁護士とカフェにいくシーンとか(こんときのマティアスの表情も絶妙で、演技がお上手なのだなきっと)
・弟の留守電がくだらないシーンとか
・怪我したマキシムを世話してくれる同僚がなんか無駄に可愛いしエロいとか(関係ない)
もちろん雨の中、窓越しのキスシーンも最高でしたな。
(最初の映画撮影でのキスシーンは見せないで、この後半やっと見れた!
ってなる感じも上手!)
本人は「君の名前で、僕を呼んで」を意識したと言ってたけど、
それ以上に美しかった!!!まず手にキスするのも最高だった!!!
出演者も本当の友人たちのようだけど、その空気感も良かった。
ドランは最初自分が出演する気は無かったらしいが、ドランだったから
こんなにも美しい作品になったんじゃないかな。
(というか本人が出たがってなかったのが結構意外だった。)
この作品で、今までのドランのイメージが覆された部分があって、
もっとふわふわした軽い付き合いをする人だと思ってたんだけど、
全くそんなことないんだね。
マティアスもマキシムたぶんドランなんだろうし、
そしてわたしなんだなあ・・・(どことなく気持ち悪い文章)
そのくらい共感しきってしまった・・・。
パンフレットも買ってしまったし、
あ~2回目観に行こうかな~~・・・