「青年2人の戸惑いと葛藤と、2人を取り巻く友情の話し」マティアス&マキシム つばささんの映画レビュー(感想・評価)
青年2人の戸惑いと葛藤と、2人を取り巻く友情の話し
87本目
友達の妹が撮る短編映画でキスシーンを演じることになったマティアスとマキシムの幼馴染2人が、そのキスをきっかけに互いの秘めた気持ちに気付いてしまうラブロマンス。
正にグザヴィエドランの撮る青春映画って感じだった。
(青春というのには大人過ぎるかもしれないけど、青春に歳は関係無いよね)
大人になっても仲の良い男友達同士で集まって子供の頃のように過ごすの、めちゃくちゃわかる〜!と思ったし、その長年の友情の中に「恋」という異質な、でもあまりにもピュアな感情が芽生えてしまったことへの戸惑いと葛藤がめちゃくちゃ伝わってきて切なかった。
そりゃあ拗らせちゃうよね。
自分だったらどうするだろうか、マティアスのように遠ざけようとするだろうか。マキシムのように自分が遠ざかろうとするだろうか。どちらにも共感できちゃうから辛い。
この作品、青年2人の恋模様もそうだけど、そこに寄り添う「友情」もテーマの一つだったように思える。
2人の友情と、それを取り巻く友人たちとの友情。
「友達は頼りになるけど、友達と一緒でも時には迷子になってしまう。仲間はお互いを頼りに出来るけど、それが出来ない時もある。決断を受け入れる時だ、受け入れなければいけないのは「変化」。でも、友達は側にいる。」
※パンフレットからの抜粋
まさにそういう事だなと強く感じたのは、友達とハメを外すシーンや喧嘩して仲直りするシーン、みんなで歌うシーン等、とにかく「みんな」一緒のシーンが多かったところ。
思えば20代後半〜30代くらいの絶妙な年代の友情を描いた映画ってあんまり観たことないかもしれないな。
10代の若者が主役ではないけど、現代の問題を扱ってるっていうのが説得力があって良かった。
自分の年代と重なるから余計に刺さるだけかもしれないけど、まだまだ友達と馬鹿やってたい気持ちと「大人」になりきれてないことへの焦りがないまぜになって、それがジェンダーの問題とも重なることで感情がぐちゃぐちゃになっちゃう感じが上手く描かれていたように思う。
分かりづらいし抽象的な描き方が多いけど、直接描いてない部分を音楽とドランらしい美しい映像で魅せてくるのは流石でした。
ドランは音楽に気持ちを乗せるのがめちゃくちゃ上手いな。
65mmフィルムの質感も良かった。
本当に、どの瞬間を切り取っても絵になるよね。
最後はきっと清々しい気持ちでオーストラリアへと送り出せたし、旅立てたんだろうなと思わせてくれる余韻の残るラストが最高でした。
まぁ唐突に終わった感も少しあったけど。。笑
そんな感じかな。
あと、これは映画とは直接関係は無いけど、同性のカップルが仲良さそうに観に来てたのがとても良かった。
こうやってジェンダーの問題に世の中がもっと順応していくと良いなと思う。