「懸賞金が掛かった逃亡犯と鵞鳥湖に住む水辺の娼婦」鵞鳥湖の夜 mittyさんの映画レビュー(感想・評価)
懸賞金が掛かった逃亡犯と鵞鳥湖に住む水辺の娼婦
ノワール・サスペンスといえども、ストーリーとしては、単純な逃亡劇でそれほど複雑ではなく、推理して考察するような映画ではありません。けれど、何故か、ぐいぐいと引っ張られて見入ってしまう魅力が映像にたっぷり充満している感じ。舞台は中国の場末の貧民層が住むスラム街のようなところなのに、ネオンがかった赤むらさき色が目に飛び込み、光と影のコントラストも印象的で、きれいな映像だなと感じさせるところが何とも・・・。ノワールなんて自分とは無縁のジャンルだと今まで思っていたのですが、最近、そうでもなくなってきたかもしれません。笑
時代は2012年とあるのですが、盆踊りのように『怪僧ラスプーチン』や『ジンギスカン』に合わせて踊る住民たちを見ていると、はるか昔の昭和の時代のような気がして。懐かしさに吸い込まれそうになってしまいそうに。今は見ることのない三輪トラックもあちこちに停めてありました。見終わったあとも、旧き時代のディスコミュージックが耳から離れませんでした。
それにしても、主演のフー・ゴー、かっこ良すぎて強すぎる!! 妻に愛想を尽かされたサイテーな男という設定みたいでしたけど。
若き日の吉田栄作に阿部寛の、あの濃い感じをプラスさせた感じ。バイク窃盗仲間が集まる集会?にしても、一人、すみっこで光っていましたね。他の人たちはチンピラ感たっぷりだったのに。
水辺の娼婦アイアイ、ボーイッシュなんだけど美しかった。始終、おどおどしていて、不安定な感じだったけれど、それもサスペンスタッチのスパイスになっていたのかも。ボートでチョウと二人きりになるシーン。最初は日がまだあったのに、体を合わせたときには夜半か。長い時間、湖上で過ごしたということでしょうか。アイアイは無表情で何を考えているかはわからなかったけれど、ボートに乗っている時はちょっとご機嫌。霧が立ちこめる夜、一時の夢の時間のようにも思えました。ひょっとしたら、一瞬でも、チョウと一緒に南の方へ逃亡できたら、と思ったのかもしれないと、勝手に想像してしまいました。
ところどころ、おかしい(funny)なところも。エルメスのばったもんの派手ぇなシャツ着た刑事とか。あと、チョウが一人で包帯を巻くシーンとかも。それと、中国では晴れて犯人が検挙されたら、記念撮影をするのか??
猫目の仕掛けで金髪の頭が吹っ飛ぶシーンは、わぁぉーと思いましたが、北野武が好きそうな感じですね。
まあまあ最近、中国ドラマ『ロングナイト 沈黙的真相』(wowow放映)を見て、まあまあ面白くて、凄腕刑事役のリャオ・ファンが出ているということで鵞鳥湖を見たのですが、ここでも刑事役。
ラストは女性のしたたかさということなのか。アイアイとチョウの妻はグルだったのか??
それにしても、電車の音でかき消された「会話」。二人が何を語ったのか知りたい。