「小さなテロリスト」その手に触れるまで レントさんの映画レビュー(感想・評価)
小さなテロリスト
「ロゼッタ」同様にその置かれた環境で迷いながら生きる子供たちを温かく見守るような演出が光るダルデンヌ監督の佳作。
ムスリムの家庭に生まれ育った思春期のアメッドはゲーム好きの普通の少年だったが、父が家を出て母もイスラムの教えを捨てたことから次第にモスクで教える導師の過激思想に感化され、恩師の女性教師を襲い矯正施設へ入れられる。
施設では規則は厳しいが彼を指導しようとする教官や研修先の牧場の人々は彼に優しく接してくれる。そんな中でも彼は相変わらず女性教師の命を狙おうとする。
施設から脱走し女性教師のいる建物へ忍び込もうとした彼は足を踏み外し二階から落下、全身を強く打ち身動きが取れなくなってしまう。そこに現れた女性教師に彼は涙ぐみ謝罪の言葉を口にするのだった。それは年相応にいたずらをして謝るあどけない子供の姿そのものであった。
過激思想にのめり込み教師をつけ狙う少年の純粋でどこか滑稽なその姿を通して監督が描きたかったのは「ロゼッタ」同様に自分が置かれた環境でもがきながら、そして思春期特有の周りに感化されやすい自己確立してない未熟な子供たちを社会は優しく見守るべきであるということ。
「ロゼッタ」もやはり主人公の少女がその置かれた環境から何とか抜け出そうとひどい行いをしてしまう物語だが、作品はけしてそんな彼女を責めるのではなく温かく見守るかのようにしてエンディングを迎える。監督はインタビューで彼女を嫌いにならないでください、彼女は自分の置かれた環境で必死に生きようとしていただけなんですと観客に呼びかけていた。
子供たちを温かく見守る監督のそのまなざしが「ロゼッタ」同様に本作でも感じられた。本作は宗教を利用した危険な洗脳を描いてそれを批判をしたいのではなく、宗教に限らず周りの物事に感化されやすい未熟な子供たちを温かく見守りたいという監督のメッセージが伝わる作品に仕上がっている。
本作がムスリムが危険だなどという偏見を抱かせるような作品でないことは監督の今までの作品を見ていればわかると思う。
「ロゼッタ」同様に余韻に浸れるラスト。ダルデンヌの作品は本当に心に残る。
おはようございます。
共感、ありがとうございます。
ダルデンヌ兄弟の作品は、その独特のダルデンヌスタイルを貫いていて、私は好きなんですね。(どれだけ、好きな監督がいるんだ!とか言わないで下さい。)
そろそろ仕事が始まるので、簡略お礼です。では。