「ユルいと思って見たら、ジャームッシュ・ゾンビが噛み付く!」デッド・ドント・ダイ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ユルいと思って見たら、ジャームッシュ・ゾンビが噛み付く!
アメリカの田舎町、センターヴィル。
のどかな田舎町だったが、夜なのに昼のように明るかったり、ある日突然動物が凶暴化したり姿を消したり、通信機器に異常が起きたりが相次ぐ。
さらに、ダイナーで変死事件が発生。
程なくして、町を悪夢が襲う。即ち、
“ドーン・オブ・ザ・デッド(死者の夜明け)”!
一見、王道のゾンビ映画。
しかし本作の監督は、鬼才ジム・ジャームッシュ。
王道に彼ならではの変化球、ユーモアや風刺をプラス。
またもう一本新しいゾンビ映画が、墓の下から這い出てきた。
まずこの、ユル~い作風。
そもそもユルい作風や怖いホラーが見たい人には一切ダメだろうが、こののんびりとした田舎町舞台の作品には合っている気がする。
登場人物もゆったり、キャストも惚けた演技。(キャスト陣については後ほど)
しかしずっとユルい作風ではなく、ちゃんとサバイバル・ホラーの要素もあり。
どんどんどんどん小さな町にゾンビが溢れ返り、逃げるに逃げられなくなり、もし自分だったら…?
そう考えると、結構怖いかも…。
キャストはジャームッシュ作品出演経験のある豪華な面々が顔を揃える。
町の警察署長にビル・マーレイ。彼とゾンビ映画と言うとどうしてもあの映画を思い出しちゃう。マーレイさん、くれぐれもゾンビの真似はしないように!
町にゾンビが現れても何故か常に冷静沈着な巡査にアダム・ドライヴァー。彼の車のキーホルダーが、彼繋がりのあのスペースオペラ!
他にも個性的キャラ/クセ者キャラ登場するが、何と言っても最たるは、ティルダ・スウィントン。
町の葬儀屋の女主人。刀捌きも見事で、日本刀でゾンビたちを次々斬り倒す。さらに、ハイテク機器にも精通。何者…?
怪女優がまたしてもその期待に応えた!
アダムの車のキーホルダーは『SW』だったり、日本刀で闘うスウィントンは明らかに日本映画から。ジャームッシュ以前にも『ゴースト・ドッグ』というサムライ・スピリッツ映画があった。
勿論ゾンビ映画なので、ロメロへのオマージュは言わずもがな。
終盤は思わず、ポッカ~ン。
パトカー車内でビルとアダムがオイオイ!級の驚きの台詞を言っている所へ、まさかのアレ飛来!
ジャームッシュ、幾ら何でも変化過ぎ! 本作は何処へ行く…!?
ゾンビ映画はどんどん進化していく。
本作でのゾンビは勿論従来通り生者を襲うが、生前の物欲を求める。
コーヒー、スマホ、ファッション、お菓子…その他諸々。
現代の消費主義社会。
本来無個性である死者にそれを投影し、その姿は生前である私たちそのもの。
ユルいゾンビ・コメディと思って見ると、ジャームッシュの変化球や強烈社会風刺に噛み付かれる…!