「ジャームッシュ・ラブズ・ロメロゾンビ」デッド・ドント・ダイ りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
ジャームッシュ・ラブズ・ロメロゾンビ
しがないアメリカの田舎町センターヴィル。
極北でなにやら大掛かりな開発事業をやっている影響かどうかしらないが、日によってなかなか太陽が沈まなかったり、あっという間に沈んだりしている。
ま、それはこの田舎町に限ってのことではないけれど。
さて、森に暮らすホームレスが鶏を盗んで逃げたという通報を受けた警察官ふたり(ビル・マーレイとアダム・ドライヴァー)。
事件は、まあいつものちょっとしたお騒がせだったが、翌朝、町に一件しかないダイナーの女主人とウェイトレスの内臓が食い破られるという事件が発生する。
「ろくな結末にならない」とつぶやく警官ロニーのいうとおり、町に死人がよみがえり始めた・・・
といったところからはじまる物語で、ジョージ・A・ロメロのゾンビ映画へオマージュを捧げたコメディ映画。
かつてのテレビドラマ『ペイトンプレイス物語』の田舎町にゾンビが現れるようなもので(って例が古すぎるな。『ツイン・ピークス』にゾンビが現れるようなものか)、このミスマッチ的なあたりはジャームッシュ監督の狙いだろうが、そういえばロメロのゾンビも大都会に現れたわけではないので、やっぱりオマージュだろう。
ウィルスによるゾンビ発生でもなく、ゾンビたちはものすごく走ったりもしない。
また、噛まれたからといって、それだけではゾンビ化しない。
つまり、後年、ビデオゲームやなんやでいろいろ加筆されたゾンビとは違うわけで、そこいらあたりがまず面白い。
で、ロメロ映画へのオマージュとなれば、やはり、ろくな結末にはならない。
人間が勝つなんてことはありえないわけで、日本刀でゾンビたちの首をばっさばっさと斬っていた謎の女性(ティルダ・スウィントン)の正体などは、なんじゃぁそりゃ的でもある。
その上、後半は楽屋落ちも連発、さらには、「ゾンビは消費社会、欲望の権化・・・」みたいなナレーションも被り、うーむ、完全にロメロの『ゾンビ』そのままじゃん。
ってことなので、コアな映画ファン向け映画で、一般的にはお勧めできないが、コアな映画ファンなら、ははは、ぎゃはは、うふふふ、ははぁんと、ときどき声を出しながら観れるかもしれません。