劇場公開日 2020年10月30日

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「未解決事件の奥にあるもの」罪の声 みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0未解決事件の奥にあるもの

2022年3月15日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

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知的

本作は、35年前に日本中を震撼させた実際の事件をモデルにして、二人の男性が、異なる理由と異なる方法で、未解決事件の真相に迫る重厚なヒューマンサスペンスである。通常、この手の作品は、刑事、新聞記者など、事件の外側にいた人達が事件の真相を究明していくケースが多い。しかし、本作は、事件の外側にいた新聞記者と、事件の内側にいた事件関係者の親族がコンビを組んで事件に迫っていくという異色のアプローチをしている。その結果、事件を内側と外側から暴くことになり、事件の社会的背景、関わった人達の悲哀の奥底にある、人間の業にまで踏み込んだ作品になっている。

本作の主人公は、新聞記者の阿久津英士(小栗旬)と、テーラーの曽根俊也(星野源)。阿久津は昭和最大の未解決事件を追っていたが、犯行に使われたカセットテープに子供の声が録音されていたことに疑問を持つ。一方、京都でテーラーを営む曽根は、亡父の遺品から、幼い頃の自分の声が録音されていたカセットテープを発見する。二人は、このカセットテープを手掛かりにして、事件の真相に迫っていくのだが・・・。

事件関係者の証言から事件に迫るという方法を取っているので、兎に角、証言者の数が多い。証言者を芸達者の役者が演じるので、証言内容に重み、深みがあり、事件の多様性、多面性、そして、事件の奥深さが浮き彫りになってくる。また、多くの証言を元に、まるで一本の糸を手繰り寄せるように徐々にではあるが着実に事件の真相に近づいていくプロセスは、地道で膨大な作業であり、主人公達の事件究明に対する執念が感じられる。天才肌の阿久津、生真面目な曽根を、小栗旬と星野源が、らしい演技で好演している。

どんな事件にも背景があり理由がある。事件の真実に光を当てることは、事件に関わった人達の本当の想いを知ることである。そして、彼らの運命に寄り添うことである。人間の業の深さを知ることである。

みかずき