あのこは貴族のレビュー・感想・評価
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環境の呪縛への気付きと、一歩外へ踏み出す勇気
貴族とは誇張した表現かと思いきや、ヒロインの華子は割と掛け値なしの現代貴族。
松濤の令嬢華子と富山から進学で上京した美紀それぞれの数年間の人生、二人の邂逅とその後が、5章に分けて描かれる。
ヒロイン二人の出会いは束の間で、一緒に行動して何かを成すわけではないが、ひと時の会話が華子の自我の目覚めを誘う。
深窓の令嬢だろうが苦学生だろうが、人生の岐路で惑い、悩むことはある。そんな時に幸せに繋がる決断をし自尊心を取り戻すには、環境の枷に惑わされず自分の心に向き合い、自身の足で前に踏み出すしかない。そんな主題が、分かりやす過ぎるほど対照的な二人の人生のコントラストと共に描かれる。
全体にヒロイン二人の心の動きがとても細やかに描かれている。都心での華子の移動手段が、そのまま彼女の心の状態を表しているのが印象的だ。
環境因子も取り除いて自分の素直な気持ちを見つめ、守って生きることの難しさと大切さ。日々ありのままの気持ちを話せる相手の得難さ、そんな誰かがいることの幸せ。
そんなメッセージを感じ取った。
華子の結婚相手探しを端緒として、冒頭から上流家庭の特殊な息苦しさについての描写が続く。結婚することも結婚にあたり仕事を辞めるのも、一族郎党が肩書きだけで中身のない見合い相手を連れてくるのも当たり前。
華子自身も一応ちょっとした試行錯誤をするが、閉じられた世界の外側には到底手が届かないし、耐性もない。かといって姉達のように上手いこと環境を受け入れて立ち回ることも出来ない。
見ていて何だかきついなと思ったところに婚約者幸一郎の雲上一族が登場し、家制度の化石の描写でお腹一杯になり苦しくなった。
美紀の章では、受験で慶応大学に入った彼女が目の当たりにする内部生との経済的格差が描かれ、息苦しい世界の外面の華やかさと、階級間の絶望的な線引きを見せられる。一方、美紀の故郷富山の、既視感あふれる田舎の情景で少しほっとする。
ラストで解放のカタルシスがあるのかな?スカッと明るく終わるかな?と期待をし過ぎたせいか、終盤は随分大人しめという印象。格差と上流社会の閉塞感のインパクトが強すぎて、ささやか(本人にとっては一大事だが)で静かな解放シークエンスだけでは拭いきれない胸苦しさが残った。
また、一部心情描写に違和感を覚えたシーンもあった。二人が初めて出会った場面だ。
とある不穏な展開をきっかけに、華子の友人逸子が二人を引き合わせる。
流れから考えて普通は険悪になりそうな局面だ。華子はお嬢様だから泰然としていたとも考えられるが、美紀もニコニコしながら即座に引き下がり、しゃんしゃんと話が進む。台詞で説明があるので頭では理解したが、感覚的には???という感じだった。
そもそも、美紀を呼び出しておきながら説教するでもなく、ふんわりしたことを言い始める友人逸子が一番よく分からない。
作品のテーマの都合で女性同士の諍いを描きたくないのは分かるが、それなら他にやりようがある気もした。
婚約者の幸一郎が、問題がある割にさほど因果応報な目に合わないのももやもやポイント。
これは勝手な妄想だが、この作品は後から登場する美紀を筆頭の主人公と思って観るのが、後味がよくなるという意味では正解なのかもしれない。
彼女の方が環境設定が身近だし、半生の起承転結がきちんとあり、気持ちの揺らぎや決心も描かれている。華子に着目していると、本人の意志が希薄な一方で環境のインパクトが強くて疲労する。
華子がタクシーから降りて自分で足跡を刻む物語は、ラスト近くでやっときざしたばかり。彼女の歩みのドラマは作品を越えた先で始まるのだろう。
フラットというよりニュートラル
この映画のどこに進んでいるのかわからない、それでいて忘れがたい瞬間を確実に重ねていくような語り口に、最初は戸惑い、やがてなんとかペースをつかめるようになり、なんとも言えない心地よさが余韻として残った。
地方出身者としては水原希子が演じた田舎からの上京組に感情移入してしまうのだが、並行して描かれる上流(という言葉自体がすでに問題をはらんでいるが)の世界もまた、あるがままに並走していて、ほんのわずかな瞬間にだけ、ふたつの世界が交錯する。かといって格差社会に物申す映画ではなくて、厳然と存在する格差の中で、それぞれに生き方を見つけようとする人たちを描いている。
フラットというと公平な視線を指している気がしてしまうが、公平とも違う。どちらかというとニュートラルという言葉が近い。岨手監督が『グッド・ストライプ』を撮った人だと後から気づいて、納得した。あれも、どこに収めていいのかよくわからないけれど、とてもニュートラルでいい空気の映画だった。
東京は時折、自転車の方が車より速い
この映画は東京に生きる2人の女性を描く作品だ。東京という街は面白いところだと思う。ロサンゼルスほど貧富の差や人種で分断されておらず、かといって金持ちと貧困層の住む世界ははっきりと異なる。それでも東京は時折、違う世界に住む住人がまじりあう時がある。本作はそんな間隙のような瞬間を描いた作品と言えるかもしれない。
もう一つ、東京が面白いなと思うのは、混雑しているが故に車よりも自転車で移動した方が早い時があるということだ。主人公の華子はいつもタクシーで移動する。誰かが行き先を告げてくれたタクシーの後部座席に乗っているだけのような人生を彼女は送っている。彼女の人生の行き先は誰かに決められてしまっていることの象徴だ。もう一人の主人公、美紀は、自分の足と手で自転車を漕いで移動する。美紀は、自らの意思で人生の向かう先を決めている。そんな彼女の乗った自転車が、華子の乗ったタクシーを追い抜いていく。その時、初めて華子は自らの意思でタクシーの後部座席を降りる。
自転車がタクシーを追い越すのは東京ではしばしば見かける「東京あるあるネタ」にすぎないが、そんなあるあるネタを最も重要なシーンに活かされている。「東京の映画」として大変秀逸だ。
キャスティングの妙 門脇麦と水原希子の役への寄り添い方に喝采
「うーん、これは素晴らしい作品」。
鑑賞後の第一声。
山内マリコの小説を原作に、全く異なる生き方をする2人の女性が自分の人生を切り開こうとする姿を描いており、門脇麦が箱入り娘の華子、水原希子が自力で都会を生き抜く美紀を演じている。
このキャスティングの妙に、今作の伝えたいことが詰まっているような気がする。
おそらくパブリックイメージから考察すると、役どころが逆でも違和感は抱かれないはず。
それを製作サイドは承知のうえで、あえて今回のキャスティングで押し通している。
ふたりとも見事に役を生き、寄り添い方がとても繊細かつ美しい。
これこそ新境地開拓といえる役どころではないだろうか。
道路の反対側から手を振り合うシーンがすごくよかった、外部とつながる...
道路の反対側から手を振り合うシーンがすごくよかった、外部とつながるってそういうことだよね~、はじめて人と関わったわけではないけど初めて人と交信した宇宙人みたいだった
、でもあんな赤の他人と挨拶するってなんかうれしいことだよな
そして門脇麦のお嬢様役がめっちゃハマってた
お金持ち=勝ち組・幸せというような単純なものではなく、 どんな環境...
お金持ち=勝ち組・幸せというような単純なものではなく、
どんな環境で生まれ育っていようと、
誰にでも悩みはあるし、苦しさを抱えなければならない日々も同じようにあるのだと思う。
今自分がいる場所で、手の届くことを一生懸命やりながら生きていくしかない。
そうやって生きている同じ人間として、
階層の違う相手の苦しみに対しても共感する姿勢を、
嫉妬だとか見下しだとか簡単に片付けるのではなく大切にしていきたい。
意図した演出かはわかりませんが、
終盤、美紀の家のベランダでアイスを食べていた時に、
華子のアイスの持ち方が途中で変わったのが印象的でした。
東京に潜む階級の壁『あのこは貴族』
今日何があったかを話せる相手がいるだけで幸せなのかもしれない。それが旦那なのか、友達なのかはわからないけれど…。
日本の社会には見えない階級が存在している。政治家の息子は政治家に、医者の息子は医者に。貧困が連鎖すると言われるように、その逆の立場の人間も連鎖的に親から脈々と受け継いでいるものがある。富、お金、名声、土地、趣味など…。『ディスタンクシオン』の著者ピエール・ブルデューはこれを文化的資本と呼び、文化的資本による階級差の存在をデータから導き出した。この映画『あのこは貴族』では、それぞれの立場における「普通」を描くことで対比的に格差を描き出している。
例えば、アフタヌーンティーを「お茶」と称して気軽に行く階層、電車など乗ったこともなくタクシー移動が当たり前の階層、居酒屋のトイレなど使ったこともない階層、東京を自転車で移動する階層。これらの描写は、社会の中での階層の違いを鮮明に浮かび上がらせる。世界は繋がっているとはいえ、人々の間には大きな分断が存在しているような気がしてならない。
東京は住む場所によってさまざまな顔を見せる。そして、場所によって似通った価値観を持った人々が集まる。似通った価値観の人間同士は群れを成し、固有の常識を共有していく。それが階層の固定観念となる。確かに、マッチングアプリは地理的に形成されたネットワークの垣根を越える秀逸なツールだが、家柄や人柄といった垣根を越えることは少ない。これは近年パワーカップルが増えていることからも言えるだろう。つまり、地理的な要因を克服できても、階級差からなる関心や価値観までを埋めるには至らないのだ。
結局、皆、井の中の蛙なのかもしれない。同じような価値観の人と付き合ってばかりなのだ。自分が優秀だと思っていた場所も、一歩外に出てみれば全く違う環境があるというのは、外の世界を知らなければ分からないことである。映画『あのこは貴族』では、本来であれば交わらない階級を持つ二人が、ひとりの男性を通じて出会い、互いの世界に触れることで新たな視点や価値観を得る様子が描かれている。
しかし、私は思う。果たして違う世界に触れる必要はあるのか?違う世界で生きていくためにはどうすれば良いのだろうか?
この映画の門脇麦の演技は、まさにその問いに対する一つの答えを提示しているように感じる。彼女が演じる華子は、都会に生まれ育ち、何不自由なく過ごしてきた。しかし、結婚を考えていた恋人に振られ、初めて人生の岐路に立たされる。彼女はあらゆる手段でお相手探しに奔走し、ハンサムで家柄も良い弁護士・幸一郎との結婚が決まるが、そこから彼女の人生は大きく変わっていく。
一方、富山から上京し東京で働く美紀は、恋人もおらず仕事にやりがいもなく、都会にしがみつく意味を見いだせずにいた。そんな彼女が華子と出会うことで、それぞれに思いも寄らない世界がひらけていく。美紀を演じる水原希子の演技もまた、異なる階層の人々が交わることで生まれる新たな視点や価値観を見事に表現している。
この映画は、単なる階層の違いを描くだけでなく、その違いが人々の生き方や価値観にどのような影響を与えるのかを深く掘り下げている。例えば、華子が自分の幸せを結婚に見出そうとする一方で、美紀は自分の力で生き抜くことに価値を見出している。この対比が、映画全体を通じて強調されている。
また、映画の中で描かれる東京の風景も非常に印象的だ。華やかな都会の一面と、その裏に隠された現実の厳しさが対照的に描かれている。特に、華子がタクシーで移動するシーンと、美紀が自転車で移動するシーンの対比は、階層の違いを視覚的に強調している。
この映画を観て感じたのは、私たちが普段見過ごしている社会の中の「見えない壁」の存在だ。私たちは日常生活の中で、無意識のうちに自分と似た価値観を持つ人々とだけ関わりを持ち、異なる価値観を持つ人々との接触を避けているのかもしれない。しかし、この映画はその壁を越えて、異なる価値観を持つ人々と関わること、自分自身で決断することの重要性を教えてくれる。
例えば、華子は結婚に固執することなく、自分自身の幸せを見つけるためにバイオリニストである逸子のマネージャーになる決断をする。また、美紀は自分の力で生き抜くために努力を惜しまず、大学の同級生である理英と起業するという選択をしたように。これらのキャラクターの行動は、異なる世界で生きるためのヒントを与えてくれる。
私たちは皆、井の中の蛙であり、自分の世界だけを見て生きている。しかし、外の世界に目を向けることで、新たな視点や価値観を得ることができる。それが、自分自身の成長や新たな可能性を見出すための第一歩なのだと思う。
●まとめ
『あのこは貴族』は、異なる階層の人々が交わることで生まれる新たな視点や価値観を描くことで、凝り固まった価値観や、自分自身を見直すきっかけになる作品だ。この映画を観ることで、私たちもまた、自分の世界を広げ、新たな可能性を見出すことができるのではないだろうか。門脇麦と水原希子の演技が光るこの作品は、ぜひ多くの人に観てほしいと思う。
●参考
・『ディスタンクシオン〈普及版〉』I 〔社会的判断力批判〕 (ブルデュー・ライブラリー)
無個性な主人公と“映画やドラマでは出てこない文化”
榛原華子(門脇麦)と時岡美紀(水原希子)と青木幸一郎(高良健吾)をフォーカスしている。
どんな立場でも、誰もがそれぞれ悩みを抱えている日本の知られざる文化(劇中のセリフでは「映画やドラマでは出てこない文化」)をリアルに再現した女性視点で描いた恋愛物語。
センスの良さを感じるカメラワークで、構図もさることながら、光の使い方が芸術的。
歩道の木漏れ日
雨に当たるタクシーのヘッドランプ
食事中の間接照明
顔への光の当たり方
日向と日陰
逆光も上手く使っている。
BGMが少なめで、セリフが聞きやすいのも嬉しいポイント。
今作は特に水原希子さんの魅力が引き出されていたと思う。
岨手由貴子監督の他の作品にも興味がわいた。
なんとなくク・リ・ス・テ・ル?
Netflixで。
読んでいないので想像ですが、非現実的にドラマチックではない、でもちゃんと色んな出来事の連鎖によって語られている原作を、うまくまとめたのかな?という印象。とにかく適温で心地いい。
キャスティングも、みんな名のある人だけどちゃんと役柄に合っていて無理がない。
とくに高良健吾。まさに適役って気がする。水原希子も「ノルウェイの森」の頃からは考えられない頼もしさ。
外側には暴力的な構図や力関係が渦巻いている中、かろうじてエアポケットのように平穏な場所で、心ある若人たちが互いに気を遣い、抑制を効かせて自分にも相手にもベストな選択をしていく…というノーブル青春ストーリー。
暴力とか性的なことは背後に感じさせつつ表には描かないため、上品。
ただ私はゲスなため上流階級のゴタゴタとかエグみとかもろもろ、もっとあってもいいし、それ以上にヒロイン2人の今後のご活躍をお祈りしたい気持ちだった。4人をメインにTVドラマとかやってくれてものいいのよ。でもそれには高良健吾の役が生々しすぎるかしら…
あと山中崇が出てくるとつい不穏な展開を想像してしまう。
ラストのオチはちょっと「花束みたいな恋をした」をきれいにしたみたいな印象。なにしろみんないい子。
素晴らしかった
門脇麦も水原希子もとても良かったのだが、
その友人たちを演じる石橋静河と山下リオが凄く良かった!!
というのも、おそらく彼女らが
階級のグラデーションでいうところの中央付近にいるからっていうのもあると思う。親近感があって、本作中では陽だまりのような存在。
その4人の関係性がどこをとってもシスターフッドに見えて、とっても良かったです。ドラマで観たい!
特に好きだったシーンを2つ挙げると、
一つ目は、パーティにてバイオリンを演奏した石橋静河が、マカロンを食べるシーン。これが非常に良くて。
トップのマカロンを取って代わりに花を挿すのだけど、
それを遠くから見ていた水原希子が笑うのよね。
一般的には"いやしい"と思える行動を、水原希子は(おそらくは)"愛おしい"と思い親近感あったのよね。
グザヴィエ・ドランの『マティアス&マキシム』にも、一方が途中で火を消した煙草を大事そうにポケットに入れて、もう一方がそれを見て微笑むっていうシーンがあって、もんのすごく大好きなシーンなんだけど、それに近しいものを感じた。
もうね、"いやしさ"のようなものまで引っくるめて、その人を好きになるのが良くて。それを遠くから見て笑っているのもいいのよね。当人は気づいていないっていう。
あと二つ目が、
水原希子を起業に誘う山下リオ。
もうここの喫茶店シーンが全て良かった!!!!
台詞が刺さる刺さる。
子供を見て、独身で子供が嫌われないように、とか。
水原希子が、誘いに対して即答したのが良かったですな。しかも、そう言って欲しかったって……!熱いぜ…!
特にイガイガする事ない二人の関係が暖かかったですな。互いが都会のオアシスですよ。
というか、この二人のシーンは全部いいんですよ…。
ニケツとかマウントレーニアとか。
とくにニケツ!!!!!
私なんてまさに「地方組」ですから、めちゃくちゃノスタルジーなシーンでもあり、希望も感じました。
きっと、誰にも奪えないというか、二人にしか経験できない瞬間ですもんね。うん、本当に良かった。
原作もそうらしいんだが、衣装もたのしめた。
年齢とともに変わっていくバッグやアクセサリー。
特に、社会人時代の水原希子のカルティエのショルダーバッグがとってもかわいかった。
あと、門脇麦が"アールグレイ"とか"ダージリン"とか、もう注文の仕方にまで、育ちが出るのね〜って感じで新鮮だった。
やっぱり、とても上手よね。
声色とか普段と違ったし、あと表情ですよ!!
表情で全てを語ってたから、この物語はこんなにも説明が少なく済んだんだと思いますよ。(時系列がいつのまにか変わってて、割と追いにくいけど、すっと入ってきた!)
ラストシーンは正直、腑に落ちなかったけど、
久しぶりにいいもの観たな〜と思いました。
邦画、全然捨てたもんじゃないです。
本当に素晴らしかったです。
多様な価値観に触れる事ができる名作。
面白かった。自分が知らない世界。
これまで知らなかった様々な価値観を知ることができた。
東京。
と一言で言っても、そこで暮らす人々の出自、価値観、身分は様々で。
実は多様で、それでいて互いに受け入れ難い価値観の相違があって。
自分と似た価値観の人たちが寄り添いあって生きているが故、自分と違う価値観の人達には無意識にフィルターをかけてしまっているのかもしれない。
上流階級の男性幸一郎と婚約しながらも、結果的に家族に縛られて抑圧されていく華子の姿を見ていると。
身分が高い事、収入が良い事=必ずしも幸福でない事が身に染みて良く分かる。
それは上流階級に生まれ、後継になる事を生まれながらにして期待され。自らの夢を抱くことすら叶わない幸一郎にとってもそうだ。
幸一郎の本音が垣間見えるシーンでは、裕福でありながらも抑圧に思い悩む様子が見て取れる。
むしろ地方出身でエリート街道からドロップアウトした美紀こそ、のびのびと自分らしく生きているくらいだ。
人並みの幸せというのは、個人の価値観が尊重されてのものだし。未来に馳せる夢さえあれば、どんな逆境だって人は前向きに生きて行ける。それが唯一の希望なのかもしれない。
東京に住んでることってそんなにすごいですか?
2023年12月14日
映画館で見損ねたああああと思ってたら、Netflix様が解禁されたのですぐ観ました。
感想は、面白いけど、物語に入り込む感覚まではない、という感じでした。
結局何が言いたいのか、自分の道を自分で切り開く的な、ありきたりなメッセージしか感じることができなかったです。
主人公の華子は箱入り娘で、自分の人生すら決められない、親の描いたレールに乗って、イエスともノーとも言わない生き方していました。
そんな中で美紀と出会い、都会で自力で力強く生き抜く姿に影響されます。
そして、幸一郎と離婚して、自分なりに生き方を模索していく、という感じでした。
たしかに、他のレビューにもあるように、
華子がいつもタクシーに乗っていて、
美紀は自転車に乗っている
描写を両者の生き様と対比させる考察は『たしかに!!』となりました。
ただ、2時間の映画で伝わってくるメッセージとして弱いかなあて思いました。
東京に住んでることがそんなにすごいんかよっ!!って思っちゃいました〜〜
金持ちってナチュラルに俺様凄い!って思ってるんでしょうな
麦ちゃんが上流貴族の政略結婚に巻き込まれる話。
庶民の居酒屋も生理的に受けつけられへんけど
さらに上流もなんだかなー
そこに愛はあるのか?
あーなさそうなんで離婚します。
すみませんでした、と土下座したら
高橋ひとみのチョップが麦ちゃんに炸裂。
この場面と麦ちゃんのウエディングドレスだけで90点です。
それにしても原作の山内まり子って麦ちゃん出演の
「ここは退屈迎えに来て」もそうだけど
上手く物語をこしらえるわ。
90点
イオンシネマ桂川 20210316
パンフ購入
高良健吾がかっこよかった… でも花子と幸一郎はただ第一印象だけ良く...
高良健吾がかっこよかった…
でも花子と幸一郎はただ第一印象だけ良くて、乗せられたレールを歩くために一緒になった。恋愛の描写が最初だけで寂しかったな。
あと花子の喜怒哀楽を表に出さないお淑やかさ、これが品がいいと言うことなのかな、つまらない女に思った。
美樹と花子、それぞれ自分の道を切り開いていくとあらすじにあった。田舎者と都会ものの対比や、2人と高良健吾との関係性にどんなメッセージがあったのだろうか。2人の友人との関係だけが本物のような気がして、美しかった。
女性監督の台頭が著しい昨今。男社会はすでに踏み台でしかない。
「はちどり」や「82年生まれキム・ジヨン」、「スワロウ」そして本作と、最近とにかく女性の解放を描いた作品が目立つ。「スワロウ」以外は新進気鋭の女性監督による作品だ。
私自身不勉強で知らなかったが、女性芸術家が男性に比べて冷遇されてきた時代があった。
政治の世界や医療の現場でのそれはまだしも芸術の世界まで男尊女卑がまかり通っていた事実にショックを受けた。そんなものに縛られないことこそが芸術の世界だと思っていたからだ。だがその実態は「燃ゆる女の肖像」でも描かれていた。
それだけに今まで抑圧されてきた女流作家のエネルギーが作品に昇華されて素晴らしい作品を次々と生み出している。いずれは女流作家、女性監督という言葉も死語になるだろう。
本作の主人公華子は裕福な家庭で何不自由なく育った典型的箱入り娘で、年頃になり当たり前のように結婚を周りから急かされるものの、なかなか相手は見つからず彼女は焦っていた。
なぜ年頃だから結婚せねばならないのか、彼女自身わかってない。強いて言うなら「そういう風に育てられた」からであろう。
「年頃」の彼女は相手を探すもなかなかお目当ての相手には巡り合えない。同級生の間で未婚なのは彼女とバイオリニストの逸子だけだ。その状況が彼女をさらに焦らせる。
しかし、ようやく相応しい相手に巡り会えた。彼女よりも階層が高い良家の御曹司だ。
念願の結婚を果たした彼女だったが、やがてその結婚生活において自分の居場所がないことに戸惑いを覚える。自分の知らないところでどんどん物事が進み、自分は蚊帳の外だと感じる。
夫となった幸一郎は自分と同じく良家の生まれで「そういう風に育てられた」人間だった。家の思うがまま生きざるを得ない、そのように生きることに疑問さえ抱かない夫をそばで見続けた華子は彼の姿を通して今までの自分自身を見たのだろうか。
そして華子はかつて夫と関係のあった美紀との出会いを通して人生が一変することとなる。
美紀は地方出身の中流家庭の生まれであり、華子にとっては異質の存在であったが、間違いなく新鮮な存在だった。
美紀との触れ合いの中で華子は自分を取り巻く環境、自分を縛り付ける境遇に違和感を覚え始める。
そして美紀のある言葉が決定打となり、華子は生まれて初めて大胆な行動を取る。それは夫、幸一郎との離婚だった。
この世に生を受けて今まで自分を縛り付けてきたものにただ身をゆだねて生きてきた彼女にとって、自己を解放させる大胆な行動だった。その行動を可能ならしめたもの、それは彼女が唯一この世で自分が自分として培ってきたものである友情であった。
美紀が言うようにお金でもなく地位でもない、人が生きる上で最も大切なものは自分の気持ちを素直に打ち明けられる人がいるかどうかだ。
一年後、逸子のマネージャーの仕事をしている華子は幸一郎と再会する。けして互いを嫌いになって別れたわけではない。解放され自立した華子は今度は一人の人間として本当に好きな人を選ぶのだろう。その対象は別れた夫も例外ではない。
本作を観ていて、夫側のエリート層がえらく紋切り型に描かれていたが、これはあえて意図した表現とも思われた。今まで女性を縛り付けてきた古い慣習を単純化することで、より女性の解放をわかりやすくする効果があったと言えるだろう。
すなわち古い男社会はもはやこれからの女性を際立たせるための舞台設定でしかないということだ。
本作はそのメッセージ性の強さもさることながら役者陣、とりわけ女優陣の自然な演技に魅了される作品だった。
以前書いたレビューが全削除されたため再度掲載させてもらった。今は無きテアトル梅田にて鑑賞。
女性におすすめ
女性監督の作品だから、想像どおり良かったです。劇中で、「独身や主婦とかで対立させないように、女性が分断されない様にしないといけない」みたいなことを言っていたので、共感しました。ラストも解放感があってgoodでした。
全195件中、1~20件目を表示