「生まれや血筋ではなく生き方と心根の在り方が貴族と諭してくれる作品です。」あのこは貴族 松王○さんの映画レビュー(感想・評価)
生まれや血筋ではなく生き方と心根の在り方が貴族と諭してくれる作品です。
門脇麦さんが好きな事もあり、以前から気になっていた作品を鑑賞しました。
で、感想はと言うと、良いね。
落ち着いた中にも静かな葛藤やそれぞれの思いが丹念に描かれていて、女性の自立が描かれている秀作かと思います。
東京生まれの華子は何不自由ない暮らしをしてきたお嬢様。30歳を目前に恋人に振られた事で婚活でお見合いをし、ハンサムで裕福な家庭で育った弁護士の幸一郎と出会う。
地方生まれの美紀は恋人無しの32歳。猛勉強の末に慶應義塾大学に進学するも家庭の経済的理由で大学を中退し、ラウンジで働いていたがその頃に出会ったのが幸一郎。
そんな幸一郎にとって美紀は都合の良い関係となり、その腐れ縁のような関係は幸一郎が華子と婚約してからも続いていた。
華子と美紀は幸一郎を通して出会い、自由で自身の力に人生を切り開く美紀に華子は尊敬に近いシンパシーを感じ、また美紀も華子の洗練された様な振る舞いと気品さに好感を抱く。そんな交流を通して、それぞれが互いの人生を見つめなおすようになる…
ざっくりと書くとそういう事なんですがw、それぞれの立場の違う女性同士が互いを必要以上に羨むのではなく、互いの存在を認め合いながらも自身の生き方を見つめ直すと言う行程が心地良い。
華子役の門脇麦さんは個人的にはもっとアグレッシブな側面持っている感じですが、今作では戸惑いながらも流されない様に生きようとする女性を演じているが、それが凄く新鮮なんですよね。
どちらかと言うと門脇麦さんは美紀のイメージの方がハマるんですが、華子と言う今までのイメージとは違う役で新たな魅力を開拓された感じです。
美紀役の水原希子さんは自立したサバサバとした性格の美紀を演じていますが、結構ハマり役かと。「進撃の巨人」(実写版)でミカサ役を担当されていましたが、割と良い意味で印象を残さないと言うか、後味の残さない感じの女優さんかと思います。
幸一郎役の高良健吾さんはもう上流階級の絵に描いた様な感じw
高良健吾さんの端正な顔立ちも含めて、裕福な家庭に生まれ、将来を嘱望され、弁護士から政治家として大成していくのがもうピッタリかと。
でも、華子には何処か余所行きの様な表情を見せていても、美妃には自分の素をさらけ出している。
本当は美妃との結婚が一番合っているとしても、それは許されない事で何処か自身でも華子とは策略結婚の感じがあったんでしょうね。
この作品の良いところは生まれも育ちも裕福な家庭に生まれ育った者たちが多くても、ギリギリの所で嫌味を通り越して嫌悪感になっていない所かと。
お金の苦労が無く、不自由は生活をしていない感じは庶民からして見ると羨ましいと言うか、嫉妬や妬みの対象になるのは仕方がない所がありますが、それも度を通り越してない感じがするんですよね。「持っている者」と「持っていない者」にはある程度の隔たりがあっても仕方ない感じがしますが、持っていない事での自由や気楽さ、持っている事での不自由さが品良く高貴に描かれているかと思いますw
ラストの華子の自立や幸一郎との関係は上辺に映る様にも感じますが、それぞれの人生の中での邂逅と考えるととても良く映ります。
第○章にでそれぞれに分かれているのも良いんですが、ちょっと○章が多いかなw
各章が多少長くなっても良いから全部で5章ぐらいでまとめていたら良いのに、割と多いので観ている途中から「いつまで続くねん!」と思ってしまいましたw
もっとドロドロとなってもおかしくない、また顔で笑って腹の中では蔑む様な感じであったとしても、本当はおかしくないw
昔の「真珠夫人」の「たわしコロッケ」の様な仕打ちがあってもおかしくないんですがw、この作品は心根の在り方が「貴族」かどうかを描いていて、それが清々しい。
タクシーで移動している華子とチャリンコでふくらはぎ豊かに爆走する美妃w
両者の境遇や立ち位置が良く表されているシーンですが、美妃を見かけた華子がタクシーから降りて、美妃と歩くシーンは今まで移動はタクシーばかりだった華子の自立を暗に表している良いシーンかと思います。
面白い作品と言うよりかは良い作品で、見ていて色々と考えさせる。見終わった後にスッとした気持ちになれる作品で結構お勧めです♪
> 立場の違う女性同士が互いを必要以上に羨むのではなく、互いの存在を認め合いながらも自身の生き方を見つめ直すと言う行程が心地良い
うんうん。「心地よい」って表現、ジャストミートです!!