「会わないはずのふたりが出会ったら…?今の東京を映し出す"邂逅"モノ」あのこは貴族 よしさんの映画レビュー(感想・評価)
会わないはずのふたりが出会ったら…?今の東京を映し出す"邂逅"モノ
第一章 東京
東京は棲み分けされてるから、会わないようになってる。住む世界が違う者同士、みんな同じところで生きてる。みんなの憧れが投影された幻の街、東京。搾取されまくってる私たちはそんな東京の養分みたい --- だけど……。
第二章 外部
山内マリコさん × 地方
付きまとう"何者にもなれない自分"というテーマ、そして階級差や性差 --- 夢を持って東京に出てきたはずなのに気付けば忙しなく追われる日々の中で、何故ここまでして東京にしがみついているのかも分からなくなっていく。田舎は退屈、闇が深い、そういった要素・図式は(原作未読ながら)『ここは退屈迎えに来て』でも見られたものだけど、そんな作者が今度は出た先 = 東京を描いたら?大学の外部と内部("ナイバー")という実際の括りが絶妙に生かされているのも良かった。
大事な日にはいつも雨 --- 逸子が一番好き。里英もよかった。友人役に救われる。生きてりゃ最高な日も最悪な日もあるだろうけど、それを話せる人がいるって本当に大事。あと、高良健吾の役どころは、名探偵コナン(新一、平次、キッド)くらいしか太刀打ちできないスーパーハイスペックイケメン。何気ない瞬間の気まずさまで、色々嫉妬したけど、最後まで見るとなんだかんだ「見てよかったな」って。「自分も頑張ろう」って思えた。
第三章 邂逅
山内マリコさん × 門脇麦
だれが貴族なのか?今まで、根っからの映画っ子なんだろうなというのが伺えるような作品で、数々の難役を挑んできた門脇麦がまたも見せる。本作では、名家の生まれで東京生まれ、東京育ちのお嬢様役を見事に演じている。今まで当たり前だと思っていたものに違和感、疑問を覚えていくような、僕たちの"普通"とはかけ離れた役柄。脇を固めるキャストも良かった。
東京こわい。自分とは関係ない全く別の世界の話みたいな表層だけど、他人事じゃない耳の痛い話に身につまされた。作品全体を包む上流階級的気品、上品な空気・雰囲気すらも意図的というか、一種"外部"の想像する東京か。参列する先妻や、(個人的に本作のハイライトと言っていいくらい好きな)橋での手を振るシーンなど、"何気ない"シーン = 余韻を残す展開も、しっかりとその後の主人公に影響を与えている。
橋で手を振るシーンは、本当に良かったですよね。^ ^
個人的に、幸一郎が華子に「結婚したのはお互いに打算だったでしょ、(大意)」と言うシーンも好きでした。離婚を決定付けた一言をさらっと言ってしまう幸一郎。それに衝撃を受ける華子を本当に普通にさりげなく映していて、監督のセンスに脱帽でした。
良い解説ありがとうございました。第四章についても書いて頂けたらありがたいです。(^^)