わたしは光をにぎっているのレビュー・感想・評価
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焦点がぼやけている
画も良いし役者も良いのに、なぜこんなにも...なんというか、「残らない」感じがするのだろうか。
田舎を出て来て東京にやってきた若い女性、という圧倒的なモチーフを使っているのに、なんだろう、それを活かしきれていないという感じがする。
松本穂香の、あの曖昧な、言葉を発さない、引っ込み思案な演技は良い。良いのだが、彼女のバックグラウンドがまるで見えない。田舎で育った、両親を喪った、だけではあの性格形成が分からない。まして実家が民宿で、あれほどの祖母が居て。全く分からない。彼女が。彼女が恐れるものが。ひと...?というのでもなさそうで。
つまり主体たる彼女が曖昧過ぎるので、後半は特に、ひたすらに失われゆくものへの郷愁映画になっている。
郷愁。
つまるところこの映画が撮りたかったのは失われゆく時代への郷愁なのか、ひとりの若い女性の姿なのか。成長譚としては弱く、群像劇にしては描き込みが足りず、結果我々は消えゆくものへの惜別をひたすら見せられる。それならいっそドキュメンタリーで撮って欲しかった。渡辺大知にその役させるのではなくて。
つまり、どちらかにフォーカスを絞ればもっと...なんというか「刺さる」映画になったと思うのだ。どことなく造形が中途半端な、作りかけのものを観ている違和感が拭えなかった。
カメラワークもカット割りもすごく良くて、映画としては美しい。でも映画は美しいとか、ノスタルジックだけではなくて、芯がないとなあという気持ちになる。
物語のあるなしではなくて、フォーカスをどこに持っていくか、は重要と感じた。
松本穂香はとてもよくて、あの苛々させる感じを出せているのは素晴らしい。現に出てくる女性陣、ほぼ皆苛々している。しかしさすがに首の傾げ方がわざとらし過ぎる気がした。渡辺大知と徳永えりは出番の割に薄いし、忍足修吾はなぜあそこで使ったんだろうという気がした。もったいない。
光石研は上手いけど、ああいう役じゃない光石研を観たいと思ってしまった。
にぎった光は希望へ
そこで、ありがとうを言わないの⁈
というほどのコミュニケーション下手な主人公が
祖母の教え「まずは目の前の出来ることから」始めて見つけた居場所が、再開発で再び去ることになる切ない現実。
昔の話ではなく、現代の今も誰かの居場所が、簡単に消え去っていっているんだ。
消えゆく銭湯、ミニシアターに想いを馳せる。
生き残る道はないのだろうか。
自分は光をにぎっている
いまもいまとてにぎっている
而(しか)もをりをりは考へる
此の掌(てのひら)をあけてみたら
からっぽではあるまいか
からっぽであったらどうしよう
けれど自分はにぎっている
いよいよしっかり握るのだ
あんな烈しい暴風(あらし)の中で
掴んだひかりだ
はなすものか
どんなことがあっても
おゝ石になれ、拳
此の生きのくるしみ
くるしければくるしいほど
自分は光をにぎりしめる
山村暮鳥「自分は光をにぎつている」
「山村暮鳥詩集」所収
カネコアヤノさん「光の中へ」を聞くラスト
形あるものが消えても
掌に握った光は消えないと信じていいのだと
最後は、観る者に希望を任されたように、静かな淡々とした世界から、明るい気持ちで劇場を後にした。
街の映画、かな?
両親のいない、祖母の旅館を手伝っていた子が、旅館の閉館を期に、父の友人を頼って東京の銭湯で働く話。
…とあらすじを書いてみたが、ほぼ不要、観りゃわかる。
松本さんを堪能できる映画かと思いきや、徹底的な引きの画像なので、堪能するには至らないかと思う。
それも、この映画の主役は、おそらく街(情景)だから。人は、その中にパーツとして埋め込まれている。
主人公が光をつかむ話といっては不十分な気がする。街が、光をつかむ彼女を見守る話だろうか。
ただ、監督の言う "街" は人のいる街ということだから、どちらが主ということはないのかも。人が生活している場所が、"街" か。
2020/3/13 追記
MV「URBAN SENTO」が、中川監督 X 松本さん で、YOU TUBE に上がるそうです。
コミュニケーションの方法は一つじゃない
ジャンルで言えば下町人情物語か、いや、落語で言うところの長屋噺に近いだろうか。それだけを聞いて、古臭いと思って本作を観ないのは些かもったいない。じっくりとスクリーンを見つめてみると、映画本来の物語表現技法がまざまざと描かれていることに気づかされる。
意図的なのだろうか?本作は平成30年を舞台にしているにもかかわらず、SNSをするシーンが一切登場しない。広報は店の前の掲示板に貼ってお知らせ、チラシも手書き。時代遅れ、リアリティがないと言われればそれまでだが、かつてはそれが普通だった。かつて普通だったことを現在行うことで見える不思議さ、異様さ、面白さ、そして温かさ。
特段、人とのコミュニケーションが上手くできない主人公が見よう見まねで銭湯での仕事を始めるシーンが実に印象深い。言葉ではなく、行動で仕事を教える店主と一緒に浴場を清掃する場面の何とも微笑ましいことか。そして、かつて映画もサイレントであったことの面白さもこの作品には垣間見えるのだ。
SNSの普及で我々のコミュニケーション方法は確実に変わり、会社の説明も「配布した書類を読んでください」で済まされ、常に文字情報が仲介する時代になっている。しかし、コミュニケーションの方法は一つじゃない。人と繋がる方法は他にもある。それは会話かもしれないし、行動なのかもしれない。自分のできる方法で人と繋がれば良い。時代が変わり、何かがなくなっても掌ににぎった光は消えないのだと感じさせる微笑ましいラストシーンになんともほっこりさせられた。
古き良き時代からこの先へ
昭和の香り漂う銭湯。
その地で長く生きてきた人々の生活。
ひとりの女性がふとそんな街にやって来てそして去ってゆく。
物事の終わりを最後まで見守る大切さ。
新しいビルがどんどんできていく現代。
その分なくなるものも多い。
20年後も50年後も大好きな小さな映画館が守られますように。
そんな気持ちになる1本でした。
映画を観る前は『どんな映画なんだろう』と思って観た。観たあと、『ど...
映画を観る前は『どんな映画なんだろう』と思って観た。観たあと、『どんな映画だったんだろう』と思っている。
おばあちゃんを見つめる表情、お風呂に手を入れた場面が良かった。
『飛べない時代の魔女の宅急便』とは、言いえて妙だ。
なんか記憶に残る作品
個人的には気になるマイナス面がないし
だからと言って
これといった優れた面があるわけではないのだけれど
たぶん、昨日見た「ひとよ」より記憶に残る作品なのかも...
やっぱ中川龍太郎監督作品は気になります。
丁寧な映画
想像力を働かせなきゃっていう台詞があったけど、観る側のリテラシーを信頼してとても丁寧に作られてて、とても心地よく観れた。ミルフィーユみたいにメタ構造になってるのも気持ち良い。松本穂香はちょっと拗ねた演技がとってもよく似合う俳優さんだなぁ。
ドキュメンタリーっぽかったけど。
東京の下町感は、東京のあの辺のこと理解してる人じゃないとなかなかわからんような。田舎からの上京なので、もっとこう、都会でキラキラしてる感じも少しはあったほうがバランスが良かったかな。田舎から出てきて一気に馴染むのも何だかね。外人さんのところはドキュメンタリーっぽくて良かった。
中川監督に期待して
前作「四月の永い夢」の美しい富山の情景に主人公朝倉あきさんの心の旅、そんな情景とやはり儚そうな表情をみせる松本穂香さんに期待して鑑賞 劇的な展開をするわけでもないストーリーであるが、地方の対極にある「東京」であっても、人をつなぐ関係が変化していて、商店街をその変化の象徴として描かれていました 再開発で失われる人々の関係なんて、どこにでもある話ではあるけれども、松本穂香演じる主人公にとっては、大変な出来事
であり、彼女を暖かく見守る人々がとても心に残ります 松本穂香さんはCMや企業ポスター、また映画「世界で一番長い写真」のエネルギッシュな高校生役など多方面で活躍されていますが、バイトをすぐやめてしまう、ちょっと頼りなくうつむき加減で常に心配な娘役もピッタリでした 光石さんは安定の父親役(本当は父親ではないですが) 「彼女の人生は間違いじゃない」でも酒に浸る父親役をしていましたが、言葉を交わさなくても主人公を暖かく見守る姿、よかったです(12月5日 京都シネマにて鑑賞)
映像が綺麗
ひたすら映像なの。そこにこだわって作ったのかな。
なのでドラマはほとんどないのね。松本穂香がうまく演じてるなあとか、徳永えりいいなとか、吉村界人かおが映らないから解んなかったとかぐらい。
松本穂香の地元の映像が綺麗でどこだろうと思ったら野尻湖なの? 観に行きたいと思ったよ。
冷たいお湯
秋晴れの日曜の昼下がり何も考えず期待もせず
ミニシアターで一人ぼんやりと映画を堪能するにはちょうどよかった。
特に印象に残るものはない。
特にドラマチックな演出があるわけでもない。
日常の速度より少しのんびり。
松本穂香
彼女の演技を初めて観た。
一度見たら忘れられない特徴のある顔。
顔の演技が多くて。いつも同じ表情。
大きく目を見開いて何かを考えてるような表情。
セリフも少なすぎて。彼女でなくてもよかったのでは、とか考えてしまった。
それにしても窓から降り注ぐ陽の光に照らされる
昼間の銭湯の冷たいタイルと澄み切ったお湯の光の反射は
銭湯独特の空間と雰囲気。他の国にはない文化。
外国人がこの作品を観たらきっと興味を持つことだろう。
一番の印象に残った俳優さんは忍成修吾
あの胡散臭い雰囲気と弱々しい笑顔と真面目な口調で下ネタ話す。
独特すぎて面白かった。彼の新境地を観れた気がした。
#104 自分探しの映画
主人公のセリフがこんなに少ない映画は珍しい。
けど言わんとしてることはわかった。
形があるものは消えても言葉や心は残るんだね。
めっちゃ立石行ってみたくなった〜。でももうすでにあの商店街たちは無いのかな?
僕たちの日常
僕は、電線の向こうにのぞく青空が好きだ
電線の向こうの青空が無限に広がってるようだ
そして、
電線と青空のコントラストが好きだ
電線があちこちに張り巡らされ、人と人を結んでるようだ
人の息遣いも運ぶようだ
でも、銭湯や街の小さな映画館のように、
電線はじゃまもの扱いされ、いつかみんな地中に埋められてしまうのだろう
形のある物が失われても、
言葉は残る
言葉は向こうからやってくる
言葉は心だ
そして、心は光だ
言葉は記憶を紡ぐ
そしたら、キラキラした思い出を取り出して、
光る記憶を紡げば良い
皆んなが光をにぎってるのだから
良かった。
澪が湯船のお湯越しに掴む日の光がキラキラしてて印象に残った。
懐かしさと、押し付けがましくなく、ほんの「ちょっと」前向きにさせる作品でした。
見る目、聞く耳、それがあれば大丈夫。
中川監督の映画は、つねに迷える若者が登場する。それは、躍起になって成功しようとする挑戦者ではなくて、今の自分の立ち位置のたわみに不安を覚えながらも、靄の張った行く先に戸惑い立ち往生している若者たちだ。この映画にも、そんな彼女が登場する。けして、晴れやかな成長を見せるわけでもない。だけど、周りにいる人には、あれ?こいつ何か変わったぞ?って気付くちょっとした変化はある。そんな小さなステップを一つずつ上って、人は人生を生きていく。そんな少しの時間の過程を、美しい映像とフレッシュな音楽で彩る上手さ。毎度見事な監督の手腕だった。
ようするに、自分の人生は自分自身のもの。
流されず、流すことなく。
目の前にあるもの、人、時間、、しっかりと見て、聞いて、それが何であるか自分の体の中に落とし込む。すると、自分にとって大事なものものかどうか自然とわかってくる。その正体がぼやけていても、なにかしら「これは大事なもの」ってことをなんとなく感じてくる。真面目に真剣に、とまで堅苦しくなく、ただよく見て、よく聞く。自分のために。
そのとき自分の握っている拳の中には、光がある。まちがいなくある。ただ、それは握っていないとこぼれてしまうもので、しっかりと握っていないとどこかに行ってしまう。もしかして、実は何もないかも知れない。こうして堅く握りしめた拳骨は、ただの石かも知れない。だけど、この中には光がある。自分でつかもうとしている未来が。今見てしまったら霧散してしまうものが。だから今は、歯を食いしばって、光をにぎっている自分を信じて、生きていこう。離すなよ、光を。
そう言われている気がして。そのことに20代で気付いていればと後悔しながら、でも今だからこそそのことを噛み締められるのだと思い直してみて。
参考までに。
山村暮鳥「自分は光をにぎっている」(詩集「梢の巣にて」)
自分は光をにぎっている
いまもいまとてにぎっている
而(しか)もをりをりは考へる
此の掌(てのひら)をあけてみたら
からっぽではあるまいか
からっぽであったらどうしよう
けれど自分はにぎっている
いよいよしっかり握るのだ
あんな烈しい暴風(あらし)の中で
掴んだひかりだ
はなすものか
どんなことがあっても
おゝ石になれ、拳
此の生きのくるしみ
くるしければくるしいほど
自分は光をにぎりしめる
その場面場面の空気を感じる映画
時の流れに、人も物も、何でも抗うことはできない。無情に時が過ぎ、人も物も形を変えていく。それは過去も未来も、たった今生きているその刹那もすべて同じである。
だけど不思議なことに人は、そこに存在する
(存在した)時間を機械的に等しく感じたりはしない。掛け替えない何か(思い)がその時間に加われば掛け替えのない長い時間(記憶)に変化する。
その掛け替えのない空間に自分を置くことこそ生きる(居きる)ていうことなんだろう。
その空気を映像を通して感じることができる、それがこの映画の良さであると思います。
成長するヒロインを東京がやさしく、美しく包む。
後悔…。途中眠ってしまった…。
肝心なところだった気がする。口コミを読んで追い付こうという自分…(笑)
というのも、目覚めてからの展開がかなりよかったから。
閉店が決まっても、不安にも寂しさにも流されず、最後までシャンと生きると決めて進むヒロインの生き方がすごいなと思ったから。
美しい東京の時間のなかで、ヒロインが過ごす特別な時間。
感情を踏みしめて、踏みしめて、踏みしめて。
そんなに先のことは考えない。
出来ること、やりたいことを一心にやり続ける。
そんなヒロインを美しい東京が包む。
言葉にしたら感情に流される、そんな感じのヒロインが松本穂香にぴったりだった。
でも、そんな生き方はとても難しいこと。
でも、こうありたい。
素晴らしい作品だと思いました。
はぁー。もったいないことしたな…。
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