「立石と澪の思い出と旅立ちの物語。」わたしは光をにぎっている マツマルさんの映画レビュー(感想・評価)
立石と澪の思い出と旅立ちの物語。
住んでいる所の近くの立石が舞台で、その立石にある銭湯をテーマにした作品とあって興味があり、鑑賞しました。
で、感想はと言うとまぁまぁw
面白いかと言えば、…な感じですが、嫌いではないですw
澪の成長を描いた物語でもありますが、立石の風景が徐々に失われてく物語でもあります。
最初、立石の銭湯奮闘記的な作品かと思い、「こち亀」の秋本治先生が描いた漫画「いいゆだね!」を思い浮かべました♪
長野県の湖畔の美しい風景と立石と言う下町の風景のコントラストが楽しい♪
また、銭湯好きにはたまらない銭湯での描写も豊富なのに、小さな映画館の描写まである。
ここに立石の様々なディープな飲み屋や食べ物屋も加わる。自分の好きな物の描写がいっぱい♪
こう言ったのが好きな人にはたまらんですw
ですが、お話はものすご~くゆったりとした感じでまるでドキュメンタリーを見ている感じ。
起承転結がある様で無い様な感じです。
内にこもる感じの澪は圧倒的に口数が少ない。
感情を出す事も少ない。すっぽん屋で美琴にからかわれた時なんかは正直“うわ~面倒くさい女”と思いましたw
また、周囲の人々も割りとそんな感じ。
だから徳永えりさん演じる美琴なんかを見るとホッとしますw
澪は結局何をやりたかったんだろう。
自分の意思で東京に出た訳ではないとしても、やりたい事を見つけようとはしている風に見えない。
ラストでは結局銭湯が好き。人が好きと言う解釈をしましたが、それでもこの東京で抗ってる様には見えない。
ただ、澪の東京を触媒にした小さな小さな成長の物語ではあります。
雰囲気を楽しむ作品と言う感じでしょうか?
なので、何処かこの作品から引っ掛かるキーワードが無ければ、多分楽しめないのではないかと。
自分も鑑賞前は割りとハードルを上げていたので、ちょっと肩透かしな感じはしました。
主人公の松本穂香さん演じる澪が淡々とした感じでそれがそのまま作品の雰囲気になってます。
あまりにもゆったりとした感じで事件らしい事件も特に起きない。
でも、時間は流れ、身の回りにある様々な懐かしい物が取り壊され、廃業していく。
切ないです。でもそれでも人はそれらに対応しながら生きていく。
当たり前の事なんだけど、改めてそれを目にすると切ないんですよね。
松本穂香さんは「おいしい家族」でも主演されていましたが、この作品では全く違う女の子を演じられてます。
自分が気になるミニシアター系の作品に軒並み出演が決まっていて、今後も気になる女優さんです。
ゆったりでもあり、淡々とでまあり、あるがままでもあり、それを受け止める。
諸行無常と言う言葉が一番適切かも知れません。
抗うとすれば、澪が発した“しゃんと終わらせる”と言う事。
しゃんと終わったかと言うと、終わってない気もしますが、何かをしゃんとしようとしたのは確かです。
立石と言う街は葛飾区の中でも屈指のディープタウンで呑兵衛の聖地と言われてますが、何処か時間がゆっくりと流れ、時代から少し取り残された様な街。
交通の便は少し悪くてw、陸の孤島の様な感じw
でも、昭和にタイムスリップした様な感覚になり、とても面白い街でここでしか味わえない事が沢山ある。
近年では再開発が頻繁に行われているが、正直この街にそれが必要かと言えば必要とは思いません。
銭湯が大好きで銭湯が閉店していくのは正直辛い。
自分の実家では半径2km圏内の銭湯は全て閉店してしまいました。そう考えると東京はまだまだ銭湯が沢山在る方。
それでも銭湯が少しずつ無くなっていく。
だからこそ、忸怩たる思いが沸き立ち、無くなっていく風景が寂しい。
そんな思いに浸れる作品です。
ミニシアター系らしい作品で、淡々とした作品なので観る人を選ぶ感じですが、大作系の鑑賞が続くと一服の清涼みたいな感じがします。
口直しの漬物みたいなw
下町と銭湯に興味がありましたら、如何でしょうか?