「わたしも光をにぎっている」わたしは光をにぎっている エロくそチキンさんの映画レビュー(感想・評価)
わたしも光をにぎっている
内にこもり言葉を失ったかのような澪(松本穂香)。長野の湖畔の民宿。雫の両親は早くに亡くなり、雫を育てた祖母が澪にとって母だった。自らの病で民宿を閉め、澪を東京に送り出す祖母の思いが滲みる。
東京に出ても澪の言葉は足りなかった。人に思いを伝えられなかった。
思えば澪を受け入れた父の友人(光石研)も言葉が足りなかった。彼が営む銭湯での二人の無言のやりとりが愛おしい。言葉が足りなくても心が繋がっていく感覚。
再開発や区画整理の名のもとに閉めざるを得なくなった銭湯、そして周りの商店街。その店主たちをとらえたドキュメンタリーライクな映像も印象的だ。
「しゅんと終わらせる」という澪の言葉に彼女の成長を感じた。彼女は確実に成長していた。人と繋がったと思った。
ラストの二人の笑顔がどれほど愛おしかったことか。人と繋がるということは再会の喜びでもあったのですね。
束の間の時間を生きる我々にとって、この作品の無常観は真っ当だと思う。変わらぬものはない。だからこそささやかなふれあいが愛おしい。
そう、わたしも光をにぎっている。
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