劇場公開日 2019年11月15日

  • 予告編を見る

「画面が語りかけてくる映画」わたしは光をにぎっている shironさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0画面が語りかけてくる映画

2019年11月14日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:試写会

序盤の、上京する主人公を見送るシーンで、画面を4分割した右下に人物が固まっている構図を見て、失敗した!と思いました。
背が低いので、前の人の頭でスクリーンが見えないストレス回避の為、劇場では最前列の端を狙って座る癖がついているのですが(さすがに最前列の中央だと画面全体が見にくいので、端から全体を見る作戦)
この作品は、正面から見たかった〜。

食堂の椅子…いいなぁ。
あ、カーペットのこの感じ…いいなぁ。
入り口のガラス戸越しの湖もいいなぁ。
よくこんなの見つけてきたな〜。と感心しきりでしたが、この駅前の4分割シーンを見た時に、そうか!実は見せたいのはこれだったのか!!と気づきました。

監督曰く「人のいる風景」
人間が集まって“場所”を作っていると思いがちだけれど、場所によって人が生かされることもある…そんな監督の場所への思いが詰まった映画でした。

ゆっくり、じっくり見せられるワンシーンからは、いろんな声が聞こえてきます。

主人公が身を寄せる銭湯も、いちいちイマジネーションがかき立てられる!
光石研さん演じる涼介について、多く語られる事はないけれども、その部屋で彼の人となりがわかるww
そして、主人公に与えられた部屋の、ものすごく日に焼けた襖!!
家具の後も残っていない波打った畳からも、使われなくなって随分年月が経っている事がわかる。
もしかして、以前この部屋を使っていた人って…と想像が広がる一方で
カーテンの無いガランとした部屋は、私自身が一人暮らしを始めた日の、不安とドキドキが混ざり合った気持ちまでをも呼び起こし、一気に主人公に近づいた気がしました。

どこかで知っている風景に感じる、記憶のデジャブとでも言いますか…。
場所に対する懐かしさと愛おしさが随所にあって
それらは全て、映画のクライマックスに明かされる出来事に繋がっています。

いったい彼女はどんな居場所にたどり着くのか?
不器用ながらにも、一歩を踏み出す主人公を応援したくなる映画でした。

追記:後半にかけての光石研さんの演技が素晴らしい。
やさぐれた酔っぱらいは名人芸の域だし、カップラーメンを食べる姿に泣けます。

shiron