「ラストにつながる原作で好きだった幼少期のうんち爆破シーンがなかった...」さくら こっこさんの映画レビュー(感想・評価)
ラストにつながる原作で好きだった幼少期のうんち爆破シーンがなかった...
ラストにつながる原作で好きだった幼少期のうんち爆破シーンがなかった点、原作にはない美貴の兄を想いながら一人でするシーンの描写に少し不満を感じましたが、結局すごく感動した。やはり題材としては重く考えさせられるし、キャストの演技力が素晴らしかったから。北村匠海は受けの芝居がとても上手い。あまり感情を表に出さない役ながら、心の揺れを微かに出す上手さを感じた。兄の変化を感じ取りつつも家族の中で上手く立ち回る様もとても自然だった。だから余計に数少ない感情を出すシーンがより深みを出した。そして優しく美しい聞き取りやすい声が、悲しみにそっと寄り添ってくれるようでとても心地よかった。小松菜奈はいるだけで映画の質を上げるような存在感があり、美貴は彼女しかできないと思わせる唯一無二感がある。吉沢亮は薫との自然なお兄ちゃんらしいやり取りを見せたり、美貴との距離の取り方の葛藤みたいなものを僅かに感じさせたり、彼女の前ではまた違う顔をしたり、素直に恋愛に悩む切ない顔を見せたり、思春期の男になっていく様子を上手く表現していた。でもやはり事故後に階段を這うシーンと食卓でヒーローの面影もなくかっこ悪く泣くシーンは圧巻で、見るのが辛いと感じさせる程だった。トイレ問題など小説にある惨めになるような描写が少ないながら、一の葛藤をよく表現していた。メイン三人がとにかく上手く、それぞれ賞を取ってほしいと思えるレベル。彼らがこの作品を引き上げたと思う。
見どころのシーンはやはり薫と一の入浴シーンで一が水に沈む美しさ、美貴が一を想い女に変わる美しい表情。そして、一の自死のシーン。勢いではなく決断してから行動に移す時は意外と落ち着いてるんだろうな、と妙に説得力を感じたと同時に、勢いではなかったことのある種残酷さと怖さを感じた。そして、終始愛犬さくらがかわいくて、みんなの心の拠り所になってるところはかなり救われる。
正直原作の方がいいと思ったし、描写の仕方に不満もあるが、心に残るものがあるので、一度見てほしいと思える作品。そして、ぜひ小説も読んでほしい。