「小松菜奈の良いとこ盛り合わせ映画」さくら わたろーさんの映画レビュー(感想・評価)
小松菜奈の良いとこ盛り合わせ映画
パンチラが感動へと誘う園子温監督の『愛のむきだし』を初めて見たときのような感覚。放尿、放屁、脱糞、自慰行為が登場人物の心情と見事にリンクしているという稀有な映画。LGBTや兄弟への恋愛感情などが複雑に絡んでくる予告編からは想像できない展開でした。
とにもかくにも小松菜奈ちゃんの怪演が光る映画でした。長男に恋をするという難しい役どころだったんですが、時に色っぽく時に弱々しく思春期の内面を表情や佇まいに込める素晴らしい演技だったと思います。
ややネタバレを含みますが。
お葬式のシーン、小松菜奈演じる美貴が思わず放尿をしてしまうという衝撃的な場面があります。尿は当然ですが便所という周りから隠れたところで行うべきもの、みんなの前では出したくても我慢すべきものです。美貴は吉沢亮演じる一が好きで好きでたまらない、彼女が来たときには直接的には嫌われたくないから間接的に邪魔をして、一に届くお手紙を隠して、何とか想いを伝えようとするのですが、はっきりと言葉にすることは最後までできなかった。我慢すべきものだと、もしくは目を背けたい感情だと思っていたのかもしれません。それが放尿に込めた意図だと僕は受け取りました。その後、〘くるみ〙という周りに固い殻があって中を取り出すためには強い衝撃が必要なものを使って、自らの悲しみに浸るかのように慰めるかのように自慰に取り組む。非常に美しいシーンでした。
ラストのさくらからの脱糞を受け止めるところも、リミッターを外して(信号無視がきっかけ)自分の想いはきちんと伝えなきゃいけないと語るシーンも非常に印象的でしたし、脚本・演出の意図が十二分に伝わってきました。
どの季節でも、どの年代でも、美貴はスカートかショートパンツを履いているのも、きっと出したい感情があるからだと解釈しました。監督・演出の趣味ではないと思います(笑)
とにかくずっと変な映画です。子どもにある意味性教育を叩き込むシーンやら、いい年した男兄弟二人が家のお風呂に入るシーンやら、リアリティーラインを超えているところもあります。そこにのれるかのれないかで、この作品の評価は大きく変わってくるんだろうと思います。自分は説明し過ぎない良い意味での作品の余白もあって、好きな映画でした。