「透明でいる理由」9人の翻訳家 囚われたベストセラー howabeiさんの映画レビュー(感想・評価)
透明でいる理由
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翻訳者です。ついうっかりタイトルに釣られました。
一か所に集められて閉じ込められた経験こそありませんが、大きなプロジェクトのためにいろんな背景を持つ翻訳者とともに集められたり、機密保持のためさまざまな干渉や制約を受けたり、またその機密のために仕事を人に見せられず、時々本当に透明人間ぽかったり、自分にも似たような経験がいろいろあったので、それがミステリの小道具になっているのはちょっと面白かったです。自分の専門以外の言語も使える人がいるのもあるあるで(多分言語オタクが多い)それで戦おうとする場面は楽しかったし、失敗してしまったのは悲しかったです。
ただ、ネタバラシになるとちょっとつまらなく感じてしまいました。
主人公は編集者が翻訳者を家畜のように扱うのが許せないと言いますが、自分も結局彼らを共犯者ではなく道具として扱っていますよね。正直なんやねんという気持ちです。
また、彼が覆面作家でいたかった理由もそれだけ?と思いました。
翻訳者には作家志望もいますが、いろんな理由で透明人間の方が良いという人もいるはずです。そういうタイプの翻訳者と主人公の透明でいたい理由を対比させながら掘り下げれば、彼がこういう復習を企てた理由をもっと痛切なものとして感じられたのではないかと思います。なぜなら彼が透明人間でいたことも彼が大事な理解者を失った理由のひとつだからです。
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